マンションの大規模修繕工事では、下地補修、シーリング、外壁塗装、防水など、さまざまな工事が行われます。
それぞれの工事には専門の材料メーカーがあり、施工会社は建物の状況や設計仕様、施工条件などを踏まえて使用材料を選定しています。
しかし、管理組合の役員や区分所有者の方にとっては、見積書や施工計画書に記載されたメーカー名を見ても、どのような会社なのか、なぜその製品が採用されているのか、分かりにくいのではないでしょうか。
私は以前、マンション管理会社に勤務し、現在は建設会社でマンション大規模修繕工事の施工管理に携わっています。
今回は、これまでの実務経験を踏まえ、**マンション大規模修繕工事でよく見かける材料メーカーと、それぞれの工事で重要となる施工上のポイント**をご紹介します。
なお、今回紹介するメーカーの順番は、全国的な市場シェアや品質の優劣を示すものではありません。あくまで私が携わってきた現場での採用状況や印象を中心にまとめています。
1.下地補修工事―コニシ
下地補修工事は、コンクリートのひび割れや、モルタル・タイルの浮き、欠損などを補修する工事です。
使用する材料には、エポキシ樹脂注入材、樹脂モルタル、ポリマーセメント系補修材などがあります。
このうち、エポキシ樹脂系の補修材で、私が現場で特によく目にするメーカーが**コニシ株式会社**です。
コニシといえば、一般には木工用「ボンド」などのブランドで知られていますが、建築分野でもエポキシ樹脂注入材や接着剤など、幅広い製品を取り扱っています。
私自身、これまで携わってきた下地補修工事では、エポキシ樹脂注入材についてはほぼコニシ製品を見かけてきました。
そのほか、接着剤で有名なセメダインなども建築用の接着剤や補修材料を取り扱っています。
ただし、下地補修工事では、メーカー名以上に補修方法の選定が重要です。
例えば、ひび割れの状況や浮きの程度によって、樹脂注入、アンカーピンニング、欠損部の充填など、適切な補修方法は異なります。
材料が優れていても、劣化状況の判断や補修方法を誤れば、十分な補修効果は期待できません。
2.シーリング工事―コニシ、サンスター技研、ハマタイト
シーリング工事は、外壁の目地やサッシ周囲などに充填されているシーリング材を打ち替えたり、必要に応じて増し打ちしたりする工事です。
マンションの大規模修繕工事で、私がよく目にするメーカーは次の3つです。
**① コニシ**
私の経験では、最もよく採用されているメーカーです。
下地補修材と同様に、建築用シーリング材でも存在感が大きく、施工業者にとってもなじみのあるメーカーという印象があります。
**② サンスター技研**
サンスターといえば、歯みがき粉やオーラルケア用品で有名なメーカーを思い浮かべる方が多いと思います。
実は、同じサンスターグループのサンスター技研では、建築用シーリング材や接着剤なども取り扱っています。
**③ ハマタイト(シーカ・ジャパン)**
ハマタイトは、もともと横浜ゴムが展開していた建築用シーリング材のブランドで、現在はシーカ・ジャパンが引き継いでいます。
私の印象では、マンションの大規模修繕工事よりも新築工事で見かける機会が多いメーカーですが、改修工事でも使用されてはいます。
シーリング材はプライマーとの組み合わせが重要
シーリング工事では、シーリング材そのものだけでなく、プライマーの選定も非常に重要です。
プライマーとは、シーリング材を充填する前に接着面へ塗布し、下地との接着性を確保するための材料です。
シーリング材の種類や下地の材質によって、適合するプライマーは異なります。
コニシの場合、製品と下地の組み合わせによっては共通のプライマーを使用できるため、現場での材料管理がしやすいというメリットがあります。
ただし、コニシであっても何でも共通のプライマーを使用できるわけではありません。どのメーカーであっても、指定された適合プライマーを確認する必要があります。
適合しないプライマーを使用したり、プライマーの塗布が不十分だったりすると、早期の剥離などにつながるおそれがあります。
また、既存シーリング材の撤去、接着面の清掃、プライマーの乾燥時間、シーリング材の充填、へら押さえなど、各工程を適切に行うことも欠かせません。
**施工後の見た目だけでは、プライマーが適切に施工されているか判断しにくいことも、シーリング工事の難しいところです。**
3.外壁塗装工事―エスケー化研、日本ペイント、関西ペイント、菊水化学工業
外壁塗装工事で、私が最もよく目にするメーカーは**エスケー化研**です。
そのほか、日本ペイント、関西ペイントなども建築用塗料を取り扱う主要メーカーとして知られています。
また、菊水化学工業の製品もあります。私の経験では、一般的な外壁塗装というよりも、特徴的な仕上げや特殊な塗材を採用する現場で見かける印象があります。
こうした材料は施工方法や仕上がりに独自の特徴があるため、施工業者がその材料の扱いに慣れているかどうかも重要です。
### シリコン系とフッ素系の違い
外壁塗装では、シリコン系やフッ素系など、さまざまな種類の塗料が採用されています。
私が携わってきたマンション大規模修繕工事では、費用と性能のバランスから、シリコン系の塗料が採用されるケースをよく見かけます。
一方、フッ素系の塗料は高い耐候性が期待できる反面、一般的に材料費も高くなる傾向があります。
そのため、予算や次回修繕までの期間、建物の立地条件などを考慮して選定する必要があります。
また、アクリル系やウレタン系の塗料もあり、要求される性能や施工箇所、予算などに応じて使い分けられています。
ただし、樹脂の名称だけで塗料の性能や価格を一律に判断できるわけではありません。同じシリコン系でも、製品ごとに耐候性や仕様は異なります。
### 塗装工事は職人の技量によって仕上がりが変わる
塗装工事では、メーカーが指定する標準塗付量、希釈率、塗装回数、乾燥時間などを守り、必要な塗膜性能を確保することが重要です。
必要以上に塗料を薄めたり、規定の塗付量を確保しなかったりすれば、本来期待される耐候性や保護性能を十分に発揮できないおそれがあります。
そして、もう一つ重要なのが、**刷毛やローラーを扱う職人の技量**です。
同じメーカーの塗料を使用しても、職人によって塗りむら、刷毛目、ローラー目、塗り継ぎ、だれなどの発生状況は変わってきます。
特に、共用廊下やバルコニーの壁面・天井などは居住者の目に触れる機会も多く、仕上がりの美しさが求められます。
見た目がきれいでも必要な塗付量が不足している場合があり、反対に塗付量を守っていても美観が十分とは限りません。
**塗装工事では、塗膜性能を確保するための施工管理と、美しく仕上げるための職人の技量の両方が重要**なのです。
4.鉄部塗装・亜鉛めっき補修―ローバル
マンションの大規模修繕工事では、玄関扉の枠、手すり、配管、鉄骨階段などの鉄部塗装も行われます。
一般的な鉄部塗装では、エスケー化研、日本ペイント、関西ペイントなどの塗料が選択肢となります。
一方、亜鉛めっき部分の補修材として、私が特によく目にするのが**ローバル**です。
ローバルは、高濃度亜鉛末塗料で知られるメーカーです。
ローバルにはさまざまな製品がありますが、個人的に印象に残っているのが「ローバルシルバー」です。
グレーが費用対効果のバランスで選択されることが多いのですが、シルバー色の仕上がりが非常にきれいで、亜鉛めっき部分の補修に適した外観を得られる製品だと感じています。
グレーよりもシルバーの方がきれいな仕上がりになることが多いため、シルバーをおすすめしたいところです。
そのほか、日新インダストリーなども亜鉛めっき補修用の塗料を取り扱っています。
### 鉄部塗装ではケレンが重要
鉄部塗装では、塗料を塗る前のケレン作業が非常に重要です。
ケレンとは、さびや浮いた旧塗膜などを除去し、塗装に適した下地を整える作業です。
十分な下地処理を行わずに塗装すれば、どれだけ優れた塗料を使用しても、早期の塗膜剥離やさびの再発につながる可能性があります。
また、亜鉛めっき面は通常の鉄面とは下地の性質が異なるため、塗料との適合性やメーカー指定の下地処理方法にも注意が必要です。
5.塩ビシート防水工事―田島ルーフィングなど
屋上の防水改修で採用される工法の一つが、塩化ビニル樹脂系シート防水です。
私が現場で特によく目にするメーカーは**田島ルーフィング**です。
代表的な製品には「ビュートップ」があります。
田島ルーフィングは塩ビシート防水だけでなく、ウレタン塗膜防水やアスファルト防水など、さまざまな防水工法に対応した製品を展開しています。
そのほか、塩ビシート防水ではアーキヤマデの「リベットルーフ」も知られています。
アーキヤマデは、屋上防水だけでなく、プール防水などの分野にも製品を展開しているメーカーです。
さらに、ロンシール工業や住ベシート防水なども塩ビシート防水を取り扱っています。
### シート防水は接合部と端部の施工が重要
塩ビシート防水では、シート自体の性能に加えて、シート同士の接合部や端部の施工が重要になります。
特に、機械的固定工法では、固定ディスクやアンカーなどを使用して防水シートを下地に固定するため、所定の固定方法や配置を守る必要があります。
また、シートの接合部の溶着が不十分であれば、漏水につながるおそれがあります。
防水工事では、平場だけでなく、立上り、ドレン周囲、設備基礎周囲などの細かな納まりも重要です。
材料メーカーの選定とともに、**その工法に習熟した防水業者が施工するかどうか**が品質を左右します。
6.改質アスファルトシート防水工事―田島ルーフィング、日新工業
防水工事では、塩ビシート防水やウレタン塗膜防水のほかに、改質アスファルトシート防水も採用されています。
代表的なメーカーとしては、田島ルーフィングや日新工業などが挙げられます。
田島ルーフィングには「ガムクール」などの製品があり、日新工業も改質アスファルトシート防水の各種工法を展開しています。
改質アスファルトシート防水には、トーチ工法や常温粘着工法などがあり、建物の状況や施工条件に応じて選定されます。
特に、火気を使用する工法では、火災防止対策や周辺環境への配慮が欠かせません。
一方、常温粘着工法では、火気の使用を抑えられるメリットがありますが、下地の状態や施工条件などを十分に確認する必要があります。
材料価格や施工費用も工法・仕様によって異なります。
そのため、単純にメーカー名だけで比較するのではなく、防水層の構成や施工方法、耐久性、保証条件などを含めて判断することが重要です。
7.ウレタン塗膜防水工事――田島ルーフィング、AGCポリマー建材、シーカ・ジャパン
ウレタン塗膜防水は、液状の防水材を塗り重ねて防水層を形成する工法です。
マンションの屋上やバルコニーなどで広く採用されています。
私が携わってきた大規模修繕工事では、次の3社の製品をよく目にします。
**① 田島ルーフィング**
代表的な製品に「オルタック」シリーズがあります。
私の経験では、ウレタン塗膜防水でも田島ルーフィングの製品を最も多く見かけます。
また、「GO-JIN(ゴウジン)」のような高靱性タイプの防水材も展開しています。
**② AGCポリマー建材**
代表的な製品に「サラセーヌ」シリーズがあります。
田島ルーフィングに次いで、現場でよく目にするメーカーです。
**③ シーカ・ジャパン(旧ダイフレックス系)**
「DSカラー」「エバーコートZero-1」などのウレタン塗膜防水材を取り扱っています。
シーカ・ジャパンは、シーリング材や補修材なども含め、幅広い建築材料を扱うメーカーです。
### 従来型の防水材と、高強度・高伸長型の防水材
ウレタン塗膜防水では、従来から補強用のメッシュを組み込む仕様が採用されてきました。
一方、近年では、材料自体の強度や伸長性能を高め、所定の仕様で補強メッシュを省略できる防水システムも展開されています。
例えば、田島ルーフィングの「GO-JIN」は、高強度と高伸長を両立させた高靱性タイプのウレタン塗膜防水材です。
従来のオルタック系のメッシュ補強仕様とは異なる選択肢として紹介できます。
ただし、補強メッシュを省略できるかどうかは、採用する製品・工法・施工箇所などによって異なります。
### 1成分形ウレタン防水材という選択肢
シーカ・ジャパンの「エバーコートZero-1」は、1成分形のウレタン塗膜防水材です。
一般的な2成分形の材料とは異なり、主剤と硬化剤を現場で混合する工程が不要になるという特徴があります。
ただし、1成分形だからといって、必ずしも施工が簡単になるとは限りません。
材料ごとに施工性や硬化特性が異なり、施工する職人がその材料の特徴を理解していることが重要です。
私自身、材料の選定に当たっては、田島ルーフィングを無難な選択肢の一つと考えています。
もっとも、これは他社製品の性能が劣るという意味ではありません。
職人にも使い慣れた材料や得意とする工法があり、施工会社がどのような専門工事業者を選定するかによっても、適切な材料は変わってきます。
### 防水層を保護するトップコートにも種類がある
ウレタン塗膜防水では、防水層を紫外線などから保護するためにトップコートを施工する仕様があります。
トップコートにも、アクリルウレタン系やフッ素系など、さまざまな種類があります。
フッ素系の保護塗料は、一般的に高い耐候性が期待できる一方、材料費が高くなる傾向があります。
そのため、費用と性能のバランスを考慮して、標準的な保護塗料が採用されるケースも少なくありません。
ただし、トップコートの耐候性と、その下にある防水層自体の耐久性は区別して考える必要があります。
高価なトップコートを採用したからといって、防水層の寿命が無条件に延びるわけではありません。
適切な防水仕様の選定と施工品質、さらに施工後の維持管理が重要になります。
8.長尺シート工事―タキロンシーアイ、東リ、サンゲツ
マンションの共用廊下や階段、バルコニーなどでは、防滑性ビニル床シート、いわゆる長尺シートが採用されることがあります。
この分野で、私が圧倒的によく目にするメーカーが**タキロンシーアイ**です。
代表的な製品として「タキストロン」シリーズがあります。
そのほか、東リやサンゲツなども床材を取り扱っています。
また、ロンシール工業なども比較対象となるメーカーです。
### 長尺シートは施工精度によって仕上がりが変わる
長尺シートは、製品の防滑性や耐候性だけでなく、施工精度も重要です。
例えば、下地の不陸が十分に調整されていなければ、施工後の表面に凹凸が現れることがあります。
また、接着剤の選定や塗布方法、継目処理、端部の納まりが不適切であれば、シートの浮きや剥がれなどにつながるおそれがあります。
特に共用廊下や階段は、居住者が日常的に利用する場所です。
そのため、見た目の美しさだけでなく、安全性や維持管理のしやすさも考慮する必要があります。
9.1液型と2液型の違いとは?―塗装・シーリング・防水に共通する基礎知識
マンションの大規模修繕工事で使用する塗料やシーリング材、ウレタン塗膜防水材には、「1液型(1成分形)」と「2液型(2成分形)」という種類があります。
一般の方には馴染みのない言葉だと思いますので、簡単にご説明します。
### 1液型(1成分形)
基本的に、主剤と硬化剤を現場で混ぜ合わせる必要がなく、そのまま使用できる材料です。
製品によっては、空気中の湿気と反応して硬化するものや、水分・溶剤の蒸発によって塗膜を形成するものなどがあります。
現場での配合・混合作業を省けるため、配合間違いや混合不足のリスクを減らせるメリットがあります。
ただし、使用前の攪拌が必要な製品もあり、1液型だから施工が簡単というわけではありません。
### 2液型(2成分形)
主剤と硬化剤の2つの材料を、メーカーが定める割合で混ぜ合わせて使用する材料です。
塗装工事やウレタン塗膜防水工事では、一般的に電動攪拌機などを使用して十分に混合します。
主剤と硬化剤を混ぜ合わせることで化学反応が進み、時間の経過とともに硬化していきます。
シーリング工事でも2成分形の製品があり、専用の混合機などを使用して主剤と硬化剤を混ぜ合わせてから、目地などに充填します。
2液型で特に重要なのが、**配合比率・攪拌状況・可使時間の管理**です。
主剤と硬化剤の割合を間違えたり、混合が不十分だったりすると、硬化不良などの施工不良につながるおそれがあります。
また、混合後には使用できる時間に限りがあり、これを「可使時間(ポットライフ)」といいます。
可使時間を過ぎた材料を無理に使用することも、品質上の問題につながる可能性があります。
### どちらが優れているのか?
1液型と2液型のどちらが優れているかは、一概には言えません。
それぞれ硬化の仕組みや施工方法が異なり、製品によって求められる性能も違います。
大切なのは、施工箇所に適した材料を選定し、職人がその材料の特性を理解したうえで、メーカーの施工仕様に従って施工することです。
特に2液型は、完成後の見た目だけでは配合比率や攪拌状況が適切だったか判断しにくいため、施工中の材料管理や品質管理が重要になります。
10.有名メーカーの材料を採用すれば、良い工事になるのか?
ここまで、マンション大規模修繕工事でよく採用される材料メーカーをご紹介してきました。
しかし、現場で施工管理に携わる立場として、最もお伝えしたいことがあります。
それは、**有名メーカーの材料を採用することと、質の高い工事が行われることは、必ずしも同じではない**ということです。
例えば、シーリング工事でコニシの材料を使用していても、プライマーの選定や施工が不適切であれば、早期の剥離につながるおそれがあります。
外壁塗装工事でエスケー化研の塗料を使用していても、規定の塗付量や乾燥時間を守らなければ、本来期待される性能を確保できません。
防水工事で田島ルーフィングの材料を使用していても、塗膜厚の不足やシート接合部の施工不良があれば、漏水につながる可能性があります。
つまり、**材料の品質が良いことと、施工品質が良いことは別の問題**なのです。
11.職人にも使い慣れた材料がある―メーカーによる施工性の違い
大規模修繕工事では、同じ工種の職人であっても、普段から使用している材料メーカーが異なることがあります。
例えば、ウレタン塗膜防水工事では、田島ルーフィングの材料を中心に使用している職人もいれば、シーカ・ジャパンの材料を使い慣れている職人もいます。
同じウレタン塗膜防水材であっても、メーカーや製品によって粘度、塗り広げやすさ、硬化特性、施工可能な時間などに違いがあります。現場では、こうした材料ごとの特徴を「材料の癖」と表現することもあります。
普段から使い慣れている材料であれば、職人はその材料の特徴を経験的に把握しており、作業の進め方や仕上がりの調整にも慣れています。
一方、普段あまり使用しない材料の場合、施工要領書を確認し、メーカー担当者に問い合わせながら施工することも珍しくありません。こうした確認は、実際の現場では日常的に行われています。
しかし、**メーカーに施工方法を確認しているからといって、使い慣れた材料と全く同じ精度で施工できるとは限りません。**
材料の粘度や硬化の進み方、塗り広げる際の感覚などは、実際に繰り返し使用することで身に付く部分もあります。
そのため、**普段使い慣れている材料とそうでない材料とでは、同じ職人が施工しても、作業効率や仕上がりの精度に差が生じることが実務上あります。**
もちろん、これは特定のメーカーの材料が優れている、あるいは劣っているという意味ではありません。また、使い慣れていない材料では適切な施工ができないということでもありません。
重要なのは、材料ごとの特性を理解し、必要に応じてメーカーの技術指導なども活用しながら、適切な施工方法を確保することです。
だからこそ、施工会社には、材料の性能や価格だけでなく、**実際に施工する専門工事業者や職人が、その材料をどの程度使い慣れているかという点まで考慮した業者選定と品質管理**が求められます。
12.材料メーカーの指定と同じくらい、施工会社の選定が重要
マンションの大規模修繕工事では、下地補修、シーリング、塗装、防水など、工種ごとに専門の協力業者が施工を担当することが一般的です。
そのため、元請となる施工会社が、どのような専門工事業者や職人を選定するかは、工事品質に大きく関わります。
施工会社に求められるのは、単に協力業者を手配することではありません。
施工実績や技術力、使用材料への習熟度などを考慮して適切な業者を選定し、施工中も仕様どおりの工事が行われているか確認することが重要です。
また、元請会社の施工実績が豊富であっても、実際に現場へ入る協力業者や職人は工事ごとに異なることがあります。
したがって、管理組合が施工会社を選定する際には、会社の規模や過去の施工件数だけでなく、次のような点も確認しておくことをおすすめします。
* 各工種の専門工事業者をどのような基準で選定しているか
* 採用する材料や工法について、十分な施工実績があるか
* 現場監督による品質管理体制が整っているか
* 材料の使用量や施工工程をどのように確認するか
* 施工写真や検査記録をどのように残すか
* 不具合が発生した場合に、どのような対応体制があるか
**材料メーカーを指定することは重要です。しかし、それと同じくらい、場合によってはそれ以上に、適切な専門工事業者や職人を選定し、施工品質を管理できる施工会社であるかどうかを見極める必要があります。**
まとめ―大規模修繕工事の品質は、材料・職人・施工管理で決まる
今回は、マンション大規模修繕工事でよく採用される材料メーカーについて、現場での経験を踏まえてご紹介しました。
下地補修やシーリングではコニシ、外壁塗装ではエスケー化研、防水では田島ルーフィング、長尺シートではタキロンシーアイなど、私が携わってきた現場でよく目にするメーカーがあります。
もちろん、今回紹介したメーカー以外にも優れた製品を取り扱う会社は多数あります。
大切なのは、知名度や採用実績だけでメーカーを選ぶのではなく、建物の状態や施工条件に適した材料を選定することです。
そして、選定した材料の性能を十分に発揮させるためには、職人の技量と施工会社による適切な品質管理が欠かせません。
**良い材料を選ぶこと。**
**その材料を適切に施工できる職人・専門工事業者を選ぶこと。**
**そして、工事全体の品質を管理できる施工会社を選ぶこと。**
この3つがそろってこそ、質の高い大規模修繕工事につながると考えています。
管理組合の皆さまには、工事費用や材料メーカーの名前だけでなく、実際にどのような体制で工事が行われるのかにも、ぜひ関心を持っていただきたいと思います。