マンションを購入する際、親や祖父母から資金援助を受けることを考えている方もいるのではないでしょうか。
住宅価格が高騰するなか、頭金などの購入資金を援助してもらえることは、住宅ローンの借入額を抑えるうえで大きな助けになります。
しかし、親からまとまったお金を受け取る場合、注意しなければならないのが「贈与税」です。
一般的に、個人から財産の贈与を受けると、一定の金額を超える部分に贈与税が課されます。
そこで知っておきたいのが、**「住宅取得等資金の贈与税の非課税特例」**です。
この制度を利用すれば、一定の要件を満たす場合、最大1,000万円までの住宅購入資金の贈与が非課税となります。
しかも暦年贈与の年間の基礎控除(110万円)と併用することも可能です。
年間110万円の基礎控除を併用する場合、省エネ等住宅は最大1,110万円、一般住宅は最大610万円まで非課税にできます。
今回は、ファイナンシャル・プランナーの視点から、制度の概要とマンション購入時に注意したいポイントを解説します。
1.住宅取得等資金の贈与税の非課税特例とは?
この制度は、父母や祖父母などの直系尊属から、自分が住む住宅の新築・取得・増改築等に充てる資金の贈与を受けた場合、一定の金額まで贈与税が非課税となる制度です。
2026年10月時点では、2024年1月1日から2026年12月31日までの贈与が対象となっています。
非課税限度額は、取得する住宅の性能によって異なります。
住宅の種類 非課税限度額
一定の省エネ・耐震・バリアフリー性能を満たす住宅: 1,000万円
上記以外の住宅: 500万円
例えば、親からマンションの購入資金として800万円の贈与を受けた場合、一定の省エネ等住宅に該当し、その他の要件も満たせば、800万円全額について贈与税が非課税となります。
一方、省エネ等住宅に該当しない場合、この特例による非課税限度額は500万円です。
なお、省エネ等住宅に該当するかどうかは、住宅性能証明書など所定の書類によって確認する必要があります。
販売広告に「省エネマンション」と書かれているだけで、1,000万円の非課税枠が適用されるとは限りません。
2.新築マンションだけでなく、中古マンションも対象になる
この制度は、新築マンションだけを対象とするものではありません。
一定の要件を満たす中古マンションの購入にも利用できます。
ただし、中古マンションでは、建築時期や耐震性能などの確認が必要です。
例えば、1982年1月1日以後に建築された住宅は、制度上の中古住宅に関する要件の一つを満たします。
それ以前に建築された住宅でも、一定の耐震基準への適合が証明される場合などには対象となる可能性があります。
ここで注意したいのは、中古マンションだから一律に対象外になるわけでも、築年数だけで必ず適用できるわけでもないということです。
購入前に、建築時期や必要な証明書類を確認しておきたいところです。
3.制度を利用するための主な要件
非課税特例には、贈与を受ける人や取得する住宅について、さまざまな要件があります。
代表的なものは次のとおりです。
・贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上であること。
・贈与者が自分の父母または祖父母などの直系尊属であること。
・贈与を受けた年の合計所得金額が原則2,000万円以下であること。
・住宅の登記簿上の床面積が40㎡以上240㎡以下であること。
・贈与を受けた翌年3月15日までに、贈与資金の全額を住宅の取得等に充てること。
・所定の期限までに居住すること、または居住することが確実と見込まれること。
なお、床面積が40㎡以上50㎡未満の住宅では、受贈者の合計所得金額の要件が1,000万円以下となります。
マンションの場合、床面積は登記簿上の専有部分の面積で判断します。
不動産広告に記載されている壁芯面積とは異なる場合があるため、特にコンパクトなマンションでは適用を受けるにあたり注意が必要です。
また、配偶者の父母から贈与を受ける場合、原則として自分の直系尊属には該当しないため、この特例の対象にはなりません。
4.特に注意したいのは「贈与の時期」と「資金の使い道」
この制度で見落としやすいのが、資金を受け取るタイミングです。
例えば、マンション購入後に親から資金援助を受け、そのお金を住宅ローンの繰上返済に充てたとしても、住宅取得等資金の非課税特例の対象にはなりません。
制度の対象は、あくまでも住宅の取得等の対価に充てるための金銭の贈与です。
そのため、売買契約、決済、贈与、入居の時期を事前に整理しておく必要があります。
また、親から受け取った資金を、制度の対象とならない用途に使用してしまうことにも注意が必要です。
資金援助を受けることが決まっているのであれば、マンション購入後ではなく、購入前の段階で制度の適用要件を確認しておくことをおすすめします。
5.非課税でも贈与税の申告が必要
この制度を利用する際に、ぜひ覚えておきたいことがあります。
それは、贈与税が0円になる場合でも、原則として贈与税の申告が必要になるということです。
例えば、親から500万円の贈与を受け、特例によって全額非課税となる場合でも、申告手続きを省略してもよいわけではありません。
贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの申告期間に、贈与税の申告書と必要書類を税務署へ提出する必要があります。
必要書類には、戸籍関係書類や住宅取得に関する契約書のコピーなどがあります。
制度の要件を満たしていても、申告手続きを忘れてしまうと、特例の適用を受けられないおそれがあります。
6.住宅ローン控除との併用にも注意
住宅取得等資金の贈与税非課税特例と住宅ローン控除は、一定の要件のもとで併用できます。
ただし、両方の制度を利用する場合には注意点があります。
住宅ローン控除の計算では、住宅の取得対価から、住宅取得等資金の贈与税非課税特例を適用した金額を差し引く必要があります。
つまり、贈与税の非課税特例を利用したからといって、住宅ローン控除も常に借入残高の全額を基準に受けられるとは限りません。
実際の控除額は、住宅の取得対価、借入額、住宅の性能、所得税等の負担額などによって変わります。
贈与税の非課税特例と住宅ローン控除は、個別に考えるのではなく、購入資金全体の計画の中で検討することが重要です。
7.親からの資金援助があっても、マンション購入予算を引き上げすぎない
ここからは、私自身の考えです。
住宅取得等資金の非課税特例は、条件に該当する方にとって非常に有用な制度だと思います。
例えば、親から500万円の資金援助を受け、その分だけ住宅ローンの借入額を減らすことができれば、毎月の返済額や総支払利息を抑えることにつながります。
しかし、資金援助を受けられるからといって、当初の住宅購入予算を大幅に引き上げてしまうことには慎重であるべきです。
特にマンションの場合、購入時の費用だけでなく、購入後も管理費、修繕積立金、固定資産税などの負担が続きます。
また、修繕積立金については、将来的に値上げが必要となるマンションもあります。
親からの資金援助によって購入時の負担が軽減されたとしても、購入後の維持費まで軽減されるわけではありません。
「資金援助があるから、もう少し高いマンションを買おう」ではなく、「資金援助を活用して、将来の家計に余裕を持たせよう」と考える方が、堅実な住宅購入につながるのではないでしょうか。
8.まとめ――使える制度は活用しつつ、無理のない購入計画を
住宅取得等資金の贈与税非課税特例は、親や祖父母からマンション購入資金の援助を受ける場合に、ぜひ確認しておきたい制度です。
一定の要件を満たせば、最大1,000万円までの贈与について贈与税が非課税となります。
一方で、住宅の性能や床面積、所得、贈与の時期、居住時期などの要件があり、申告手続きも必要です。
また、住宅ローン控除との関係も含めて、購入資金全体の計画を考える必要があります。
私は、利用できる税制優遇は積極的に確認すべきだと考えています。
ただし、税制優遇を受けられることと、購入するマンションが家計にとって適切な選択であることは別問題だと思います。
マンション購入では、住宅ローンの返済負担だけでなく、管理費・修繕積立金の水準、長期修繕計画、建物の維持管理状況なども確認する必要があります。
制度を上手に活用することは大切ですが、それ以上に重要なのは、購入後も無理なく住み続けられるマンションを選ぶことだと考えています。
参考資料
国税庁「No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」
国税庁「住宅取得等資金の贈与の特例に関する質疑応答」
※本記事は、ファイナンシャル・プランナーの立場から、住宅取得等資金の贈与税非課税特例について、一般的な制度の概要や注意点を解説したものです。
個別具体的な税務相談や税額計算、特例の適用可否に関する税務判断を行うものではありません。
実際の適用要件や税務上の取扱いは、個々の事情によって異なるため、具体的な判断や申告にあたっては、税務署または税理士にご確認ください。
なお、本記事は2026年10月時点の法令・制度に基づいて作成しています。