「毎月の請求書づくりを自動化したい」「複数のサイトから商品情報を集めて一覧にしたい」。そう思って外注先を探し始めたものの、見積もりが想像より高かったり、やり取りが長引いて途中で止まってしまったりすることがあります。
原因の多くは、依頼する側の準備不足です。技術的な知識は要りません。発注前に3つのことを決めておくだけで、見積もりは下がり、納品までの往復も減ります。
■ 1. 今の手順を「人がやっている通り」に書き出す
自動化の見積もりは、作業の複雑さではなく、手順の曖昧さで膨らみます。「毎週の売上をまとめる作業をお願いしたい」とだけ伝えられた場合、受ける側は何十通りもの可能性を想定して見積もらざるを得ません。
書き出すときは、画面名とボタン名まで落とし込んでください。
悪い例:「楽天とAmazonの売上を集計してスプレッドシートに入れる」
良い例:
1. 楽天RMSにログインし、左メニューの「受注・決済管理」から「受注一覧」を開く
2. 期間を「先週の月曜から日曜」に設定し、「CSVダウンロード」を押す
3. AmazonセラーセントラルはA列とD列だけ使う。B列は無視してよい
4. ダウンロードした2つのCSVを、スプレッドシート「週次売上」の「raw」シートに上から貼る
5. 「集計」シートの数式が自動で動くので、その結果を見て終わり
ここまで具体的だと、受ける側は「楽天のCSVは文字コードがShift_JISだから変換が要る」「Amazonの列名は月によって変わるかもしれない」といった、実際に工数がかかる箇所を最初から見積もれます。曖昧なまま着手して途中で判明すると、追加費用か納期延長のどちらかになりがちです。
手順書を作る自信がない場合は、実際に作業している画面を録画するだけでも構いません。音声で「ここは毎回目視で確認しています」のような補足があると、さらに伝わります。
■ 2. 自動化できない部分をあらかじめ切り分ける
すべてを自動化しようとすると、費用も納期も大きく上がります。多くの業務には、自動化に向かない部分が混ざっているためです。代表的なのは次の3つです。
・判断が要る作業。「このクレームは返金対応にするか、交換にするか」のような判断は、ルールに落とせない限り人が残ります
・例外処理。「月に1、2回、取引先が手書きのFAXで注文してくる」といったケースは、それ専用の仕組みを作るより、手作業で入力し続けた方が安く済むことが多いです
・表記ゆれの修正。「株式会社○○」と「(株)○○」を同じ取引先だと判定する処理は、一見単純ですが、新しいパターンが出るたびに直しが要ります
たとえば「問い合わせメールを分類して担当者に振り分ける」という依頼なら、「件名に注文番号が入っているものだけ自動で振り分ける。それ以外は今まで通り自分で見る」と切り分けると、対象がはっきりして安く早く終わります。
「全体の8割を自動化して、残り2割は人がやる」という線引きを、依頼する側が決めておくことが大切です。線引きを受注側に任せると、安全側に倒して高く見積もるか、逆に手を広げすぎて納期が延びるか、どちらかになりやすいです。
■ 3. 誰のアカウントで動かすかを先に決める
意外と後回しにされて、着手直前に止まるのがこの点です。自動化スクリプトは、何らかのサービスにログインして動きます。そのログインを誰の権限で行うかを決めておく必要があります。
避けたいのは、IDとパスワードをそのまま外注先に渡す形です。渡した側はいつでも変更できるとはいえ、二段階認証で毎回コードを聞かれたり、後から「あの操作は誰がやったのか」を追えなくなったりします。サービスによっては、第三者へのアカウント共有そのものが規約で禁止されています。
安全で、しかも進行が速いのは次のどちらかです。
・スクリプトを受け取って、あなた自身の環境で設定する形。受注側は「どこにAPIキーを入れるか」「どのファイルを開いて実行するか」を手順書にして渡し、認証情報は最後まであなたの手元に残ります
・編集権限だけを渡す形。スプレッドシートやドライブなら、特定のファイルにだけ編集権限を付与できます。作業が終わったら権限を外せば、それ以降はアクセスできません
どの形にするかを最初に伝えておくと、受ける側は「この構成ならこう組む」と設計を決めやすくなり、着手後の手戻りが減ります。
■ まとめ
外注前に決めておくのは、手順の書き出し、自動化しない部分の線引き、アカウントの扱いの3つです。どれも技術知識は不要で、依頼者にしか決められないことばかりです。
この3つが揃った依頼は、見積もりの精度が上がり、着手から納品までの往復が減ります。逆に揃っていない依頼は、どれだけ腕のよい外注先でも手探りから始めるしかありません。
業務自動化の相談も受けていますので、手順の書き出しの段階から一緒に整理することも可能です。