「自分なりに書いたつもりなんですが、これで大丈夫でしょうか」
創業融資のご相談で、最も多くいただく言葉です。
事業計画書は、書き方の正解が示されているわけではありません。公庫のサイトに記入例はありますが、あれを埋めれば通るというものでもない。だから多くの方が、書き上げたあとで不安になります。
これまで多くの計画書を見てきて、落ちてしまうものには共通点があると感じています。今日はその5つを書きます。
■ その前に、審査が何を見ているか
前提として、ひとつだけ押さえておきたいことがあります。
審査は、事業の良し悪しよりも先に「この方は返済できるか」を見ています。
これは冷たい話ではなく、貸す側の立場としては当然のことです。どれだけ素晴らしい事業でも、返ってこなければ次の誰かに貸せません。
計画書を書くときに、この視点が抜けていると、「やりたいこと」ばかりが濃くなって、「返せる根拠」が薄い書類になります。落ちる計画書の多くは、ここでつまずいています。
■ 1. 売上の根拠が「頑張ります」になっている
一番多いのがこれです。
「月商150万円を目指します」と書いてある。でも、なぜ150万円なのかが書かれていない。
審査する側から見ると、この数字は根拠のない願望に見えます。そして、根拠のない売上から算出された返済計画も、同じように見えます。
必要なのは、150万円を分解することです。
客単価はいくらか。1日に何人来る想定か。営業日は月に何日か。その客数は、どこから来ると考えているのか。
「客単価3,000円 × 1日20人 × 月25日 = 150万円」と書いてあるだけで、読む側の受け取り方はまったく変わります。数字が合っているかより、考えた形跡があるかどうかが見られています。
■ 2. 自己資金の出どころが説明されていない
自己資金が300万円ある、と書いてある。これは良いことなのですが、その300万円がどこから来たのかが書かれていない。
ここは必ず確認されます。コツコツ貯めたお金なのか、退職金なのか、家族からの援助なのか。
貯めたお金であれば、それ自体が評価につながります。毎月一定額を積み立てられる人は、返済も計画的にできると見られるからです。
逆に、直前に一括で入金されたお金は、確認の対象になります。どこかから借りて用意した自己資金は、自己資金として扱われません。
出どころを先に書いておけば、疑問を持たれずに済みます。
■ 3. 創業の動機と、これまでの経歴がつながっていない
飲食店を開きたい、という計画書に、飲食の経験が一行も書かれていない。これは珍しくありません。
未経験でも融資が出ないわけではありません。ただ、「なぜあなたがこの事業をやるのか」に答えられていないと、計画全体が机上の話に見えてしまいます。
前職での経験が直接つながらない場合でも、書けることはあります。
数字を扱っていた、人を育てていた、仕入れの交渉をしていた。その事業に必要な要素のどれかに、必ず触れているはずです。経歴と動機を、一本の線でつなげてみてください。
■ 4. 返済の原資が、利益ではなく売上で書かれている
「月商150万円あるので、月5万円の返済は問題ありません」
この書き方をされる方が、かなりの割合でいらっしゃいます。
返済に使えるのは、売上ではなく、そこから経費を引いた残りです。家賃、人件費、仕入れ、光熱費、そして生活費。それらを引いたあとに、返済分が残っているかどうかが見られています。
計画書に生活費が入っていないケースも多いのですが、これも「この人は返済まで考えていないのでは」と読まれる原因になります。
■ 5. 事業計画と資金繰り表で、数字が合っていない
最後はこれです。
文章のほうには「初年度は月商100万円」と書いてあるのに、資金繰り表を見ると120万円で計算されている。
本人にとってはただの書き直し漏れですが、読む側から見ると、どちらが本当なのか分からなくなります。
そして一度「数字が合っていない書類」だと思われると、ほかの数字も疑って読まれることになります。
提出前に、文章と数字を突き合わせる。これだけで防げるので、必ずやってください。
■ 今日できること
長く書きましたが、今日できることは2つです。
ひとつは、売上の数字を分解して書き直すこと。単価と客数と日数に割ってみてください。
もうひとつは、文章の数字と、表の数字を突き合わせること。1時間もかかりません。
この2つだけで、書類の印象はかなり変わると考えています。
審査は技術の部分が大きい世界です。知っていれば埋められるところで落ちてしまうのは、もったいないと思っています。
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