注文をデジタル化しても、受注が楽にならない理由

注文をデジタル化しても、受注が楽にならない理由

記事
ビジネス・マーケティング
食材卸の受注は、今もいろいろな形で届きます。

LINE。

FAX。

電話。

手書きのメモ。

だから、

「まずはデジタル化しよう」

という話になります。

それ自体は、間違っていないと思います。

FAXを画像から読み取る。

手書きの注文をOCRで文字にする。

LINEの文章をデータとして取り込む。

電話注文も、入力しやすい形に変える。

ここまでできれば、

受注の仕事はかなり減りそうに見えます。

私たちも、最初はそう考えていました。

でも実際に業務を整理していくと、

もう一つ、その先に大きな仕事が残っていることに気づきます。

【読み取れることと、分かることは違う】

例えば、

「生1」

という注文が届いたとします。

文字として

「生1」

と読み取ること自体は、それほど難しくありません。

問題はその先です。

「生」が、どの商品なのか。

「1」は、1個なのか、1箱なのか、1kgなのか。

そこまで分からなければ、

注文データとしては完成していません。

別の店からは、

「赤2」

と届くかもしれません。

また別の店からは、

「いつもの3」

と来るかもしれません。

人が見れば、

「ああ、あの商品ね」

と分かります。

でも、システムから見ると、

「いつもの」が商品マスタのどれなのかは分かりません。

【なぜ今まで、それでも仕事が回っていたのか】

理由は単純です。

担当者が覚えているからです。

「あの店の“生”は、この商品」

「この店で1と言えば1ケース」

「この商品だけは箱単位」

「このお客様の“赤”は、このワイン」

こうしたルールが、

毎日の仕事の中で少しずつ増えていきます。

マニュアルに書かれているわけでもない。

商品マスタに登録されているわけでもない。

でも担当者の頭の中には入っている。

だから、

多少あいまいな注文でも仕事が成立します。

言い換えると、

システムではなく、

人の記憶がマスタになっている状態です。

【デジタル化しても、人が最後に判断している】

FAXをOCRで読み取れるようにした。

LINEの注文を自動で取り込めるようにした。

そこまでやっても、

最後に人が画面を見ながら、

「これはあの商品だな」

と選んでいる。

これでは、

入力する仕事は減っても、

照合する仕事は残ります。

しかもこの照合は、

経験のある担当者にしかできません。

すると、

デジタル化したはずなのに、

結局その人がいないと仕事が止まる。

ということが起きます。

【人を増やしても、覚えることが増える】

取引先が少ないうちは、

このやり方でも回ります。

10社なら10社分。

20社なら20社分。

しかし取引先が増えると、

店ごとの呼び方や単位、

注文の癖も増えていきます。

新しい担当者が入れば、

それを一つずつ教える必要があります。

「あの店はこう」

「この商品はこう」

「この言い方が来たらこれ」

教える側も大変ですし、

覚える側も大変です。

そして、

「あの人しか分からない」

という仕事が少しずつ増えていきます。

これは、

担当者の能力の問題ではありません。

覚えなければ仕事が回らない構造になっていることが問題です。

【先にデータにするべきものは何か】

業務改善というと、

紙をデータにする。

FAXをデジタル化する。

AIで読み取る。

という話になりやすいです。

もちろん、それも必要です。

ただ、その前に整理した方がいいものがあります。

それは、

人が頭の中で判断しているルールです。

例えば、

「生」=商品コードA123

「赤」=商品コードB456

「いつもの」=この店では商品C789

という対応関係です。

こうした情報が残っていれば、

次に同じ注文が来た時、

人が毎回思い出さなくても済みます。

【紙をデータにする前に、記憶をデータにする】

デジタル化というと、

紙をなくすことを想像しがちです。

でも実際には、

紙より先に整理した方がいいものがあることもあります。

それが、

人の頭の中にしかない情報です。

どの呼び方が、どの商品なのか。

どの店では、どの単位なのか。

どういう注文が来たら、どう解釈するのか。

これを少しずつ残していく。

すると、

今まで人が毎回やっていた判断を、

仕組みに渡せるようになります。

【本当に減らしたいのは、入力ではなく判断かもしれない】

受注業務を見ていると、

つい

「入力が大変」

という部分に目が行きます。

でも、

実際に時間を使っているのは、

入力ではなく、

確認や判断だったりします。

この商品で合っているか。

この数量で合っているか。

この店の場合は、どの単位なのか。

そこを毎回人が考えている限り、

受注はなかなか軽くなりません。

だから、

受注を楽にしたい時は、

「どうやって注文をデジタル化するか」

だけではなく、

「人がどんな判断をしているのか」

を見ることも大切だと思います。

紙をデータにする。

その前に、

記憶をデータにする。

遠回りに見えて、

実はその方が、

業務を仕組みに変える近道なのかもしれません。
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