マンションに住んでいると、さまざまな修繕工事が必要になります。
外壁の補修、屋上防水、給排水設備の修理、照明器具の交換、駐車場の補修など。
そんなとき、管理会社からこんな話が出ることがあります。
「この工事について、次回の理事会で決めていただければと思います」
見積書も出ている。工事の必要性も分かる。
でも、ちょっと待ってください。
その工事、本当に理事会だけで決めていいのでしょうか?
「工事だから総会」でも「理事会なら何でも決められる」でもない
マンション管理では、総会と理事会でそれぞれ役割が違います。
総会は、区分所有者全体でマンションの重要事項について意思決定する場です。
一方の理事会は、総会で決まった方針や予算に基づいて、日常的な管理業務を進めていく役割を担います。
そのため、
「修繕工事=全部総会で決めなければならない」
というわけではありません。
逆に、
「予算の範囲内なら理事会で何でも決められる」
とも限りません。
ここがマンション管理の少し面倒なところです。
まず確認したいのは「いくらの工事か」だけではない
「100万円だから理事会でいい」
「1,000万円だから総会が必要」
そんなふうに、工事金額だけで判断できれば簡単なのですが、実際はそう単純ではありません。
確認したいのは、主に次のような点です。
・その工事は総会で承認された事業計画や予算に含まれているか
・管理規約では、総会と理事会の権限がどう定められているか
・単なる維持・修繕なのか、それとも共用部分の変更を伴う工事なのか
・過去の総会で、すでに工事実施について決議されていないか
同じ「工事」でも、その内容によって判断は変わります。
たとえば、壊れたものを直す場合
共用部分の設備が故障してしまった。
総会で承認された予算があり、その範囲内で通常の修繕を行う。
こうしたケースなら、管理規約や総会決議の内容にもよりますが、理事会で具体的な発注先や工事内容を決めて進められることがあります。
総会で、
「今年度はこの修繕を行います。そのための予算は○○万円です」
と承認しているのに、その修繕に関する内容等を決めるたびに毎回臨時総会を開かなければならないとなれば、マンション管理そのものが回らなくなってしまいます。
では、工事内容そのものを大きく変える場合は?
話は変わってきます。
たとえば、単に傷んだ部分を元に戻すのではなく、
設備を新しく追加する。
建物の使い方を変える。
共用部分の形状や機能を大きく変える。
こうした工事になれば、単なる日常的な修繕として理事会だけで処理してよいのか、慎重に考える必要があります。
内容によっては総会決議が必要になり、さらに工事の性質によっては、普通決議ではなく特別決議が問題になる場合もあります。
つまり、
「修繕工事」という名前だけでは判断できない
ということです。
管理会社から「理事会で決めてください」と言われても
ここで大切なのは、管理会社の説明を疑えということではありません。
管理会社は日常的に多くのマンションを管理していますから、実務上の判断について頼りになる存在です。
ただし、最終的に管理組合として意思決定するのは管理会社ではありません。
「理事会で決めてください」
と言われたときに少し疑問を感じたなら、
「これはどの総会決議や予算に基づいて、理事会で決められるものですか?」
と確認してみるだけでも、話はかなり整理できます。
マンションごとに答えが違うこともある
もう一つ注意したいのが、すべてのマンションで同じ答えになるとは限らないことです。
マンションにはそれぞれ管理規約があり、過去の総会決議も違います。
さらに工事の内容、予算の組み方、緊急性などによっても判断が変わることがあります。
ネットで、
「この工事は理事会決議でOK」
という情報を見つけたとしても、それだけで自分のマンションにも当てはまるとは限りません。
迷ったら、この順番で整理してみる
修繕工事の話が出て、
「これ、理事会だけで決めて大丈夫?」
と思ったら、
① 管理規約を確認する
② 今年度の総会議案書・事業計画・予算を確認する
③ 過去の総会決議を確認する
④ 工事が単なる修繕なのか、変更を伴うものなのか確認する
まずはこのあたりから整理してみてください。
マンション管理では、「管理会社がそう言ったから」「前からこうしているから」だけで判断する必要はありません。
規約、総会決議、予算、そして実際の工事内容。
これらを一つずつ整理すると、意外と答えが見えてくることがあります。
※この記事はマンション管理に関する一般的な考え方を紹介するもので、個別のマンションにおける法的判断を示すものではありません。実際の判断については、それぞれの管理規約、総会決議、工事内容等をご確認ください。