Kindleで「紙の本」を出すとき、知らないと損する計算

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Kindle出版というと電子書籍だけと思われがちですが、同じ管理画面から紙の本も出せます。ペーパーバックと呼ばれる仕組みです。

在庫は持ちません。注文が入ってからAmazonが1冊ずつ印刷して発送します。初期費用もゼロです。「自分の本が紙で届く」という体験は、電子書籍とはまったく別の重みがあります。

ただし、収益の構造が電子書籍と根本的に違います。ここを知らずに出すと、売れても手元に何も残りません。

印刷コストが、売れるたびに引かれる


紙の本のロイヤリティは、公式ヘルプにこう定義されています。

「(ロイヤリティ レート x 希望小売価格) - 印刷コスト = ロイヤリティ」(Amazon KDP 公式ヘルプ「ペーパーバックのロイヤリティ」より)

ロイヤリティ率はAmazon流通チャネルで50%または60%です(外部流通は40%)。

つまり電子書籍と違い、印刷コストという実費が丸ごと引かれます。そしてこの印刷コストが、思ったより大きいのです。

日本の印刷コスト(公式の実額)


Amazon.co.jpのモノクロ印刷の場合です。

・24〜110ページ:1冊あたり 422円(標準判)/530円(大判)
・110〜828ページ:1冊あたり 206円 + 1ページあたり2円(標準判)

カラー印刷はさらに上がります。

・プレミアムカラー 24〜40ページ:1冊あたり 475円
・標準カラー 72〜600ページ:1冊あたり 206円 + 1ページあたり3.50円(標準判)

(いずれもAmazon KDP 公式ヘルプ「ペーパーバックの印刷コスト」より)

実際にいくら残るのか


標準判・モノクロ・100ページの本を、1,000円で売った場合。ロイヤリティ率60%とすると、

・(0.6 × 1,000) − 422 = 178円

1,000円の本が売れて、手元に残るのは178円です。

比較のために電子書籍を計算します。500円(税抜453円)・70%・ファイル5MBなら、

・(453 − 5) × 0.7 = 313円

半額の電子書籍のほうが、手取りは倍近いという逆転が起きます。

「110ページ」という見落とされがちな境目


もう一度、印刷コストの表を見てください。

・24〜110ページ → 422円(固定)
・110ページ超 → 206円 + 2円×ページ数

110ページまでは、何ページでも422円です。30ページでも422円、100ページでも422円。

つまり、薄く作っても印刷コストは1円も下がりません。40ページの本と105ページの本は、原価がまったく同じです。

紙で出すと決めたなら、110ページに近いところまで中身を入れたほうが、同じ原価で読者の満足度が上がります。逆に、20〜30ページの薄い本を紙で出すのは、原価の面で最も損な選び方になります。

では、なぜ紙で出すのか


ここまでの数字を見ると、紙の本は割に合わないように思えます。実際、利益だけを見れば電子書籍のほうが有利です。

それでも紙で出す理由は、収益ではなく別のところにあります。

・信頼の担保になる。名刺代わりに渡せる。打ち合わせの場に持っていける
・Amazonの商品ページに「ペーパーバック」が並ぶと、本としての格が上がる
・献本ができる。紙で渡された人は、電子書籍のリンクより確実に読む
・電子書籍を読まない層に届く

つまり紙の本は、売って稼ぐためではなく、信用を作るために出すものです。そう割り切ると、設計の判断が変わります。価格を無理に下げる必要はありませんし、ページ数も削らないほうがいい。

出す前に決めておくこと


1. 判型(標準判か大判か)— 印刷コストが100円以上変わります
2. モノクロかカラーか — 図解を入れるなら、白黒で成立する図にするか、カラー代を許容するか
3. ページ数 — 110ページ以下に収めるなら、なるべく110に寄せる
4. 価格 — 印刷コストを引いても残るように逆算する

特に3と4は、原稿を書き始める前に決めておくほうが後戻りがありません。

紙の本は、電子書籍のデータをそのまま流用しても作れません。判型・余白・ノド(綴じ側)の設計が別物だからです。「電子書籍は出せたけれど、紙で詰まった」という方のために、電子書籍と紙の本を同時にお引き受けしています。

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