創業融資を検討するとき、「自己資金はいくらあればよいのか」「通帳のどこを見られるのか」と不安になる方は少なくありません。
ただし、自己資金は残高の多さだけで判断できるものではありません。日本政策金融公庫の創業計画書では、設備資金・運転資金などの必要額と、自己資金・借入などの調達方法を同じ表で整理します。公庫の創業計画Q&Aでも、必要な自己資金額は一概には言えず、借入とのバランスを考えることが大切だと案内されています。
大切なのは、「いつ時点で、いくらあり、どのように準備し、計画上どこへ使うのか」を通帳と創業計画書でつなげることです。今回は、申込前に整理したい4つの項目を解説します。
1.残高の基準日をそろえる
最初に、自己資金を確認する基準日を決めます。複数の口座に資金がある場合は、口座ごとに基準日時点の残高を記録し、合計額を出します。
ここで注意したいのは、通帳残高のすべてを事業へ使えるとは限らないことです。近く納付する税金、生活費、カード引落し、すでに支払うことが決まっている費用などは分けて考えます。
「通帳残高300万円、うち事業に充てる自己資金200万円」のように、残高と投入予定額を分けておくと説明が明確になります。ネット銀行の場合は、金融機関名、支店、口座名義、残高、入出金履歴を確認できる画面を保存しておくと整理しやすくなります。
2.入金の経緯を説明できるようにする
次に、自己資金がどのように形成されたかを確認します。給与から毎月積み立てた資金、事業準備のための貯蓄、資産売却代金、退職金、家族からの贈与など、入金の性質を分けて整理します。
直前にまとまった入金がある場合は、その日付、金額、入金元、理由を一覧にします。売却代金なら契約書や明細、退職金なら支給内容が分かる資料など、説明を補える資料も準備します。
一方、家族や知人から返済を前提に受け取った資金は、自己資金と混ぜず、借入として返済方法まで整理する必要があります。贈与に該当するかなど個別の税務判断は、税理士等へ確認してください。
自己資金は、残高だけでなく入金経緯と創業計画書との一致まで確認します。
3.大口の入出金を一覧にする
通帳の履歴を見て、自分で説明しにくい大口の入金や出金を先に拾います。判断基準を一律に決めるのではなく、普段の入出金と比べて金額が大きいもの、事業準備に関係するものを対象にします。
一覧には、日付、金額、入出金の別、相手先、内容、関連資料を記載します。店舗の保証金、機械の手付金、会社設立費用などをすでに支払っている場合は、自己資金が減った理由として、見積書、契約書、領収書などと結び付けます。
説明できない入出金を隠すのではなく、事実と資料をそろえて短く説明できる状態にすることが重要です。融資申込時に必要な書類や、面談で追加確認される資料は申込内容によって異なるため、提出先の最新案内も確認します。
4.創業計画書の数字と一致させる
最後に、通帳から整理した自己資金額を、創業計画書の「必要な資金と調達方法」へつなげます。必要な資金の合計と、自己資金・親族等からの借入・金融機関借入などの調達合計は一致させます。
例として、設備資金500万円、運転資金200万円で合計700万円が必要な計画を考えます。自己資金200万円、親族からの借入50万円、金融機関借入450万円なら、調達合計も700万円です。
ただし、自己資金200万円のうち40万円を保証金としてすでに支払っている場合、通帳に見える残高だけでは計画書と合いません。「事前支払40万円+口座に残る160万円」と分け、契約書や領収書と合わせて説明します。
申込前の確認項目
申込前には、次の4点を確認します。
・基準日時点の口座残高を確認した
・自己資金の入金経緯を説明できる
・大口入出金と証拠資料を対応させた
・通帳と創業計画書の自己資金額が一致している
自己資金は、多く見せることより、必要資金との関係を一貫して説明できることが大切です。通帳、見積書、契約書、創業計画書を同じ数字でつなぐと、面談でも説明がぶれにくくなります。
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本記事は一般的な情報提供であり、融資の実行や審査結果を保証するものではありません。必要な自己資金や提出資料は、融資制度、金融機関、申込内容によって異なります。必ず申込先の最新情報をご確認ください。個別の税務・法務判断は、税理士・弁護士などの専門家へご確認ください。