「受注が増えてきたので、そろそろ人を採用したい」。
成長のために採用は重要ですが、売上目標だけで人数を決めると、入社後に資金繰りが苦しくなることがあります。採用には給与だけでなく、会社負担の社会保険料等、採用費、PCやソフトウェア、教育にかかる費用も伴うからです。
さらに、売上への貢献が始まる前から支払いは発生します。この記事では、採用計画を今後12か月の資金繰りへ落とし込む手順を3段階で整理します。
採用人数は売上目標だけで決めない
「売上を伸ばすために3人必要」という考え方だけでは、採用可能かどうかを判断できません。確認したいのは、採用後も事業を続けるための現金を確保できるかです。
損益計算書では年間の人件費を見ますが、資金繰りでは、いつから、いくらの支払いが始まるかを月ごとに見ます。採用前に支払う紹介料や求人広告費、入社月から増える給与や周辺費用、売上に貢献するまでの期間を同じ時間軸に並べることが大切です。
人件費を資金繰りへ落とす3ステップ
1.給与以外を含む総コストを出す
最初に、採用1人あたりの費用を「一時費用」と「毎月費用」に分けます。
一時費用には、求人広告や紹介料、PC・備品、初期研修などがあります。毎月費用には、給与、会社負担の社会保険料等、通勤費、利用するソフトウェアや座席などを含めます。
正確な金額は雇用条件や会社によって異なります。まずは給与だけで判断せず、会社から実際に出ていくお金を項目ごとに洗い出します。
2.支払いが始まる月を置く
次に、それぞれの費用が発生する月を確認します。採用費は入社前、PC購入は入社直前、給与や周辺費用は入社後というように、支払時期は同じではありません。
また、入社直後から計画どおりの売上が増えるとは限りません。教育期間、商談期間、受注から入金までの期間を踏まえ、売上と入金が始まる月を分けて置きます。
3.採用後12か月の最低残高を確認する
最後に、採用費と毎月の負担を資金繰り表へ反映し、採用後12か月の月末残高を計算します。
例えば、採用時の一時費用を80万円、毎月の追加負担を40万円と仮定します。売上からの入金が4か月後に始まる場合、それまでに少なくとも240万円の支出が先行します。これは説明のための計算例ですが、採用日だけでなく、入金が始まるまでの資金負担を確認する考え方が重要です。
図:採用計画を、総コスト・支払開始月・採用後の最低残高の順に確認する考え方です。
採用時期を判断する3つの数字
資金繰り表へ反映したら、次の3点を確認します。
・採用後の最低残高:最も現金が少なくなる月に、事業継続に必要な余裕が残るか
・売上と入金の開始月:採用した人が売上へ貢献し、その代金が入金されるのはいつか
・予備資金:受注の遅れや追加費用が発生しても対応できるか
採用できるかどうかは、残高が一度でもプラスならよい、という判断ではありません。税金、賞与、借入返済、設備代金など、採用以外の大きな支払いが重なる月も含めて確認します。
よくある3つの見落とし
1つ目は、給与だけを人件費として計算することです。採用費や会社負担の社会保険料等、PC、ソフトウェアなどを外すと、実際の支出より計画が小さくなります。
2つ目は、入社した月から売上が増える前提にすることです。教育や営業活動、納品、回収までに時間がかかる事業では、支払いが先行する期間を見込む必要があります。
3つ目は、年間合計だけで判断することです。年間では資金が足りていても、採用費、納税、賞与などが同じ月に重なれば、一時的に残高が大きく下がります。
売上未達の場合も先に確認する
採用計画は、計画どおりに売上が伸びる場合だけでなく、受注が1〜2か月遅れた場合も確認します。売上の開始月を後ろへずらし、最低残高がどこまで下がるかを見ると、採用時期を遅らせる、人数を分けて採用する、外注を組み合わせるなどの選択肢を比較できます。
これは採用を止めるための確認ではありません。成長に必要な人材を確保しながら、資金不足で計画を中断しないための準備です。
まとめ
・採用コストは、給与だけでなく一時費用と毎月費用に分ける
・採用日ではなく、支払いと入金が始まる月で見る
・採用後12か月の最低残高と予備資金を確認する
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