以前、力を入れて業務マニュアルを作ったことがあります。
40ページ。目次つき。例外パターンまで網羅して、体裁も整えて、印刷して配りました。作るのに3週間かかりました。
半年後、そのファイルを開いた形跡のある人は、ほぼいませんでした。
分からないことがあると、みんな隣の人に聞くんです。マニュアルは机の端に置かれたまま、ページの角がきれいなまま残っていました。
通信業界のコールセンターで25年、現場のマネジメントをしてきました。今日は、この失敗から学んだことを書きます。
力作ほど読まれない
不思議なもので、手をかけたマニュアルほど読まれません。
理由は単純でした。手をかけるほど厚くなるからです。
現場の人がマニュアルを開くのは、困っている最中です。目の前にお客様がいたり、電話がつながっていたりする。その状態で40ページのファイルを開いて、目次から該当箇所を探す人はいません。
隣の人に聞いたほうが3秒で済む。それだけの話でした。
読まれない3つの理由
あらためて整理すると、原因はこの3つでした。
1つ目は、探すのに時間がかかること。
網羅性を上げると、必ず量が増えます。量が増えると、目的の場所にたどり着くまでの時間が伸びる。網羅性と即答性は、そもそも両立しません。
2つ目は、作った人の順番で書かれていること。
私は業務の流れに沿って書きました。受付から始まって、確認、入力、完了まで。でも読む人は流れの途中で困っています。「ここだけ知りたい」に対して、頭から読ませる構成になっていました。
3つ目は、文字だけだったこと。
画面の操作を文章で説明していました。「メニューから設定を選び、下部のタブを開いて」。読んで理解してから画面を見る、という二度手間を強いていたわけです。
1枚に減らして、写真を入れた
次に作ったときは、逆をやりました。
1つの作業につき、1枚。画面のスクリーンショットを貼って、矢印と番号を入れる。文章は各手順1行だけ。網羅はあきらめて、よく使う操作だけに絞りました。
ページ数は40から、8枚のバラの紙になりました。
結果、使われるようになりました。厚いファイルを探すのではなく、必要な1枚だけを手元に置いておける。新しく入った人にも、その1枚を渡せば済むようになりました。
一番効いたのは「やらないこと」の欄
もう一つ、効果があったのは各ページの下に付けた欄です。
「ここは触らないでください」
どこを操作していいかを書くマニュアルは多いですが、触ってはいけない場所を書いたものは少ない。でも現場が一番不安なのは、「間違えて何か壊すかもしれない」という気持ちのほうです。
触ってはいけない場所が明示されていると、それ以外は安心して触れるようになります。結果として、書いていない操作まで自分で試すようになりました。
網羅していないマニュアルのほうが、結果的に人を自立させたわけです。
同じことで困っている方へ
作った資料が読まれない、結局いつも口頭で説明している。そんな状態でしたら、原因は資料の出来ではなく、量と順番かもしれません。
私は業務ツールを作るとき、本体と一緒に操作の1枚を必ず添えます。作った時点では完成ではなく、次の人が再現できて完成だと考えているからです。
Excelの集計や会議準備に時間を取られている、引き継ぎのたびに同じ説明を繰り返している。そんな状態でしたら、お力になれることがあるかもしれません。
詳しくは下記のサービスをご覧ください。
現場特化のAIツール工房