「何が弾きたいか分からない」だって、立派なスタートです

「何が弾きたいか分からない」だって、立派なスタートです

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「どんな曲が弾きたいですか?」

僕のギター教室では、初回レッスンの前に、生徒さんにちょっとした「カルテ」のようなものを書いてもらっています。
ギターを始めようと思ったきっかけや、これまでの楽器経験、好きなアーティスト、弾いてみたい曲など、あらかじめ生徒さんのことを少し知っておきたいからです。
これから友達とバンドを組もうとしている人や、すでに独学でギターを始めている人は、かなり具体的に書いてくれます。
「このバンドの、この曲が弾きたい!」
「このギタリストみたいに弾けるようになりたい!」
目標がはっきりしていると、僕もレッスンの内容を考えやすいので、とても助かります。
ところが、意外と多いのが、
「好きなアーティスト:特になし」
「弾きたい曲:まだ決まっていません」
という方なんです。

遠慮しなくていいんです

最初は、ちょっと不思議に思っていました。「ギターを習いに来るんだから、何か弾いてみたい曲があるんじゃないのかな?」と。
でも、よくよく話を聞いてみると、そこにはいろいろな事情があることに気づきました。
「好きな曲はあるけど、いきなり弾けるとは思えなくて……」
「こんなアーティストが好きって書いたら、ちょっと恥ずかしいかなと思って……」
なるほど、そういうことだったんですね。
そんなときは「何でも遠慮せずに書いてください!」とお伝えしています。だって、あくまでも目標なんですから。
今すぐ弾ける曲である必要なんてありません。ものすごく難しい曲でもいいし、ギターが中心ではない曲だって構いません。
「いつかこんな曲が弾けたらいいな」
その気持ちがあれば、十分です。

「何となく始めたい」じゃダメですか?

一方で、本当に弾きたい曲が決まっていない方もいます。
「何となくギターが弾けたらカッコいいなと思って」
「友達がやっているから、自分もちょっと興味があって」
「何か新しい趣味を始めたくて」
そんな感じです。
そして、少し遠慮がちに、「こんな理由でも大丈夫ですか?」と聞かれることがあります。
もちろん、大丈夫です!むしろ、そんなふうに思ってギター教室へ足を運んでくれたことが、僕は嬉しいんです。
そもそも、何かを始める前から、自分の好きなものや目指す方向がはっきり分かっている人って、そんなに多くないんじゃないでしょうか。

「好きなこと」って最初から分かっているもの?

僕たちはよく、
「好きなことを見つけよう」
「やりたいことを仕事にしよう」
なんて言葉を耳にします。
でも、「好きなこと」って、頭の中で一生懸命考えれば見つかるものなんでしょうか?
僕は、必ずしもそうではないと思っています。
何となく興味を持って始めてみたことが、いつの間にか生活の一部になっている。最初はそれほど面白いと思わなかったのに、続けているうちに夢中になっていた。
反対に、ずっと憧れていたことを実際に仕事にしてみたら、「あれ?何だか思っていたのと違うな」と感じることだってあります。
でも、それでいいんです。
好きなことは、始める前に見つけるものとは限りません。実際に行動する中で、少しずつ見つかっていくこともあるんです。だから、最初から明確な目標を持っている必要はありません。
まずは興味を持ったことに、ちょっと触れてみる。それだけでも、十分なスタートだと思います。

とにかく、ギターを鳴らしてみよう

まずは弦を一本、慣れたら今後はコードをかき鳴らしてみる。
その響きを聴いているうちに、
「あ、そういえば昔、こんな曲をよく聴いていたな」
「この音、あのアーティストみたいだな」
なんて、忘れていた記憶がよみがえってくることがあります。
音楽って不思議なもので、何年も聴いていなかった曲なのに、イントロを耳にしただけで、当時の景色や気持ちまで思い出したりします。そんな小さな発見が、「この曲、ちょっと弾いてみたいな」という気持ちにつながることもあるんです。
だから僕は、最初から弾きたい曲が決まっていない生徒さんのために、世代や経験に合わせたさまざまな課題曲を用意しています。
まずはいろいろな曲に触れてみる。その中で、「これ、結構好きかも」と思えるものが見つかったら、そこから少しずつ広げていけばいいんです。

ギターじゃなくてもいいんです

そして、もう一つ大切にしていることがあります。
それは、必ずしもギターが一番好きなものにならなくてもいいということです。
例えば、ギターを弾きながら歌っているうちに、歌うことの方が楽しくなってくるかもしれません。好きな曲を練習しているうちに、歌詞の面白さに気づいて、自分でも言葉を書いてみたくなるかもしれません。もしかすると、ギターをきっかけに、今まで興味のなかったジャンルの趣味に夢中になることだってあるかもしれません。
それって、とても素敵なことだと思うんです。
もちろん、僕はギター講師ですから、生徒さんにギターを上達してもらいたいという気持ちはあります。
でも、ギターを始めたことがきっかけで、自分が本当に夢中になれるものを見つけられたとしたら、たとえそれがギターではなかったとしても、僕は嬉しいんです。
だって、音楽の楽しみ方は一つじゃありませんからね。

生徒さんが教えてくれたこと

長くレッスンをしていると、生徒さんは必ずしも明確な目標を持って教室へやって来るわけではないのだと気づかされます。そして、レッスンを重ねるうちに、少しずつ自分の好きな音楽や、やってみたいことを見つけていく姿を目にします。
最初は「何となく」で始めたことが、いつの間にか夢中になれる趣味になっている。そんな変化に立ち会えるのも、講師という仕事の大きな喜びです。だから、初めてのレッスンで、
「何が弾きたいのか、まだよく分からないんです」と言われても、僕はまったく気にしません。
今は分からなくたっていいんです。まずはギターを鳴らしてみましょう。
いろいろな曲を聴いて、弾いてみる。そうしているうちに、思いがけないところで自分の「好き」に出会えるかもしれません。
好きなことが見つかったから始めるのではなく、始めてみたから好きなことが見つかる。そんな順番だって、あっていいと思うんです。
あなたが夢中になれるものを、一緒に探していきましょう。
それがギターでも、歌でも、まったく別の何かでも、そのきっかけをつくるお手伝いができたなら、ギター講師として、こんなに嬉しいことはありません。

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