「練習しなさい!」で、音楽は好きになる?

「練習しなさい!」で、音楽は好きになる?

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音声・音楽

「うちの子、家で全然練習しなくて……」

「先生、うちの子、家で全然練習しなくて……」
ギター講師をしていると、親御さんからこんな相談をいただくことがあります。「そうですよねえ」と答えながら、僕はちょっと苦笑いしてしまいます。だって、うちの子どもたちだって同じなんですから。
僕には2人の子どもがいて、どちらもピアノを習っています。でも、家でどれくらい練習しているかというと、課題曲を毎日せいぜい2回も弾けばいい方です(笑)。講師としては練習の大切さをよく知っています。でも親としては、思うように練習してくれないもどかしさもよく分かるんです。

「練習しなさい!」は逆効果?

でも、そこでちょっと考えてみたいんです。「練習しなさい!」ときつく言われて、本当に音楽を好きになれるんでしょうか?
もちろん、上達するためには練習が必要です。でも、音楽は本来、訓練でも義務でもありません。心のどこかに「やらされている」「うるさく言われるから仕方なくやっている」という気持ちがあったら、なかなか楽しさを感じられないと思うんです。
これは大人だって同じですよね。
僕自身、仕事で「明日までにこの曲を覚えなきゃ!」なんてプレッシャーがかかっているときは、正直なところ、楽しさは二の次になっている気がします。
だから理想を言えば、子どもたちが自分から、
「ちょっと楽器を弾いてみようかな」
と思える環境をつくってあげたい。でも、それが一番難しいんですよね。

長男が突然、練習を始めた理由

そんなことを考えていたある日、長男が突然こんなことを言い出しました。「寝る前にピアノ練習しておくよ」
えっ、どうした?いつもはなかなか練習しないのに、自分からピアノに向かうなんて(笑)。話を聞いてみると、どうやら学校の合唱発表会で伴奏者に選ばれたらしいんです。
なるほど、そういうことか。目の前に具体的な目標ができたことで、自分から練習しようという気持ちが生まれたんですね。
考えてみれば、僕自身も同じです。ライブやレコーディングのスケジュールが埋まっている時期は、やっぱり練習量が違います。
「せっかく演奏するならカッコよく弾きたい」
「できれば恥ずかしい思いはしたくない」
そんな気持ちは、大人も子どもも変わらないんでしょうね。

「100時間の練習より、1回のライブ」

昔、あるアメリカ人ギタリストと一緒にツアーを回っていたことがあります。彼はワールドツアー規模で活躍してきた、経験豊富なミュージシャンでした。
そんな彼が、あるときこんなことを言ったんです。
「部屋で100時間練習するより、ライブを1回やる方が学びが多いよね」
もちろん、100時間の練習が無駄だという意味ではありません。でも、誰かに聴いてもらうことを意識して演奏するのと、一人で練習するのとでは、得られる経験が違います。
本番までに曲を仕上げようとする気持ち。
人に聴いてもらう緊張感。
そして、最後まで演奏できたときの達成感。そんな経験が、次の練習への意欲にもつながるんですよね。数えきれないほどのステージを経験してきた彼の言葉には、とても説得力がありました。
そして今、長男の姿を見て、その言葉を改めて思い出したんです。

ちょっとした「発表の場」をつくってみませんか?

そこで、皆さんに一つ提案があります。
ぜひ、お子さんに「発表」の機会をつくってあげてください。
ギター教室の中には、年に数回、発表会を開催しているところもあります。僕が教えている教室にも、そうした機会があります。
それが大きなステージである必要はありません。
おじいちゃんやおばあちゃんの誕生日に、一曲プレゼントしてみる。
クリスマスに、家族の前で好きな曲を演奏してみる。
そんな小さなイベントでも十分です。
「この日までに、この曲を弾けるようにしよう」という具体的な目標があるだけで、普段の練習にも意味が生まれます。
ただし、ここで大切なのは、発表することまで義務にしないこと。人前で弾くのが苦手な子もいますし、一人で音楽を楽しみたい子もいます。
「発表しなさい!」では、結局「練習しなさい!」と同じになってしまいますからね。
本人が「ちょっとやってみたいな」と思えるような、小さなきっかけを用意してあげる。それくらいが、ちょうどいいと思うんです。

ギターをケースにしまわないで!

そして、もう一つおすすめしたいことがあります。
それは、ギターをなるべくケースにしまわないことです。
ギターを始めたばかりの頃って、楽器を取り出すだけでも意外と面倒なんですよね。ギターが置いてある場所まで行って、ケースを開けて、楽器を取り出して……。「ちょっと弾いてみようかな」と思っても、そのひと手間が億劫になってしまうことがあります。
だったら、最初から手の届くところに置いておけばいいんです。
部屋の片隅でも、リビングでも、思い立ったときにすぐ手に取れる場所。もちろん、倒れたりしないように、安全なギタースタンドなどを使ってくださいね。
多少ほこりが被ったっていいじゃないですか。むしろ、「ああ、最近ギター弾いてないなあ」と気づくきっかけになるかもしれません(笑)。
目の前にギターに何となく手を伸ばして、コードを一つ鳴らしてみることもあります。そのまま好きな曲を弾き始めて、気がつけば30分経っていた。そんなことが起これば、しめたものです。
大切なのは、「弾こう」と思ってから実際に弾き始めるまでのハードルを、できるだけ低くしてあげることなんだと思います。

「やらされる練習」から「やりたくなる練習」へ

僕がおすすめしたいのは、たった二つのことです。
一つは、楽しみにできる目標をつくること。
もう一つは、いつでも楽器に触れられる環境をつくること。
難しい練習メニューを用意する前に、まずはそこから始めてみてはいかがでしょうか。練習時間を細かく管理したり、毎日何回弾いたかをチェックしたりするよりも、子どもが自分から楽器に向かいたくなるきっかけを増やしていく。
その方が、結果として長く音楽を楽しめるようになる気がするんです。

生徒さんが教えてくれたこと

ギター講師として、僕は生徒さんに上達してほしいと思っています。でも、上達するために音楽が嫌いになってしまったら、それは本末転倒です。
レッスンでは、どうしても「何を練習するか」「どこを直すか」に目が向きがちです。でも、本当に大切なのは、その前にある「弾きたい」という気持ちなのかもしれません。
そして、その気持ちは、誰かに強制されて生まれるものではありません。
ちょっとした目標や、目の前に置かれたギター。そんな何気ないきっかけで、自然と芽生えるものなんでしょうね。長男が自分からピアノに向かった姿を見て、改めてそう感じました。
講師として、そして親として、僕自身もまだまだ試行錯誤の毎日です。でも、だからこそ生徒さんや子どもたちの姿から、学ばせてもらうことがたくさんあります。
「練習しなさい!」と言わなくても、思わず楽器を手に取りたくなる。
そんな環境を、一緒につくっていけたらいいですよね。そして、気がついたら夢中になって弾いている。それが、僕の考える理想の音楽との付き合い方です。

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