「この人から買いたい」はどう作られる? ― ラポールとトナリティ

「この人から買いたい」はどう作られる? ― ラポールとトナリティ

記事
ビジネス・マーケティング

前回の記事では、ジョーダン・ベルフォートの「Three 10s(3つの10)」について紹介しました。

お客様が購入を決断するためには、

商品・サービスへの確信
営業担当者への確信
会社への確信

この3つが重要だという考え方です。

では今回は、その中でも営業自身が比較的コントロールしやすい、
「営業担当者への確信」について考えてみます。

商品が良くても、会社がしっかりしていても、

「この営業マンからは買いたくない」

と思われたら、商談は止まります。

逆に、「この人の話なら、もう少し聞いてみよう」

と思ってもらえれば、同じ商品説明でも受け取られ方は変わります。

では、お客様は何を見て営業マンを信用しているのでしょうか。

1.営業への確信は、言葉だけでは作れない

例えば営業マンが、「私は誠実です」と言ったとします。

だからといって、「なるほど、この人は誠実なんだ」とはなりません。

「弊社の商品には自信があります」と言っても、

本当に自信があるように聞こえる人と、

台本を読んでいるように聞こえる人がいます。

つまり営業への確信は、何を言ったかだけで作られるものではありません。

むしろお客様は、言葉以外の部分からかなり多くの情報を受け取っています。

声。

話す速さ。

間。

表情。

姿勢。

目線。

質問の仕方。

相手の話を聞いているときの反応。

営業マン本人は意識していなくても、お客様はこうした情報から、

「この人、詳しそうだな」

「なんか余裕がないな」

「売りたいだけっぽいな」

「ちゃんとこっちの話を聞いてるな」

と判断しています。

つまり、営業への確信形成は、商品説明に入る前から始まっているということです。


2.ラポールは「仲良くなること」ではない


営業研修でよく出てくる言葉に、ラポールがあります。
一般的には「信頼関係」や「心理的なつながり」と説明されます。

ここでよくあるのが、

「共通点を探しましょう」

「趣味の話をしましょう」

「相手に共感しましょう」

という話です。

もちろん、それらもラポールを作る方法の一つです。

ただ、営業におけるラポールを「仲良くなること」だと考えると、少しズレることがあります。

営業で必要なのは、友達になることではありません。

お客様に、「この人なら話しても大丈夫そうだ」と思ってもらうことです。

例えば、

「この人は自分の話を理解しようとしている」

「こちらの事情を無視して押してこなさそうだ」

「変なことを言っても否定されなさそうだ」

そんな安心感が生まれると、お客様は少しずつ本音を話し始めます。

そして、本音が出れば出るほど、営業側もその人に合った提案ができるようになります。

だからラポールとは、営業マンが好かれるための技術ではなく、お客様が安心して情報を出せる状態を作る技術

と考えた方が分かりやすいかもしれません。

3.「分かります」を言えばラポールが作れるわけではない


ラポールを意識すると、とにかく相手に合わせようとする人がいます。

「分かります」

「そうですよね」

「私も同じです」

と、何でも同意する。

しかし、やりすぎると逆効果です。

例えばお客様が、「この商品、正直あんまり必要ないと思ってるんですよ」と言ったとします。

そこで営業マンが、「分かります、そうですよね!」と返したら、
「じゃあ、なんで売りに来たんだよ」となります(笑)

ラポールは、相手に迎合することではありません。

大事なのは、相手の考えていることを正確に理解しようとすることです。

例えば、「必要性をまだ感じていない、ということですか?」と確認する。

「どのあたりが一番引っかかっていますか?」と聞く。

その方が、「この人はちゃんと話を聞いている」という確信につながります。

4.同じ言葉でも、トナリティで意味は変わる


ここで重要になるのが、トナリティです。

トナリティとは、簡単に言えば、声の調子や話し方によって、言葉に意味を乗せることです。

例えば、「これはかなり良いと思いますよ」という一言。

これを自信なさそうに言えば、「本当に良いと思ってる?」と感じます。

勢いよく言いすぎれば、「売りたいだけじゃない?」と思われるかもしれません。

逆に、少し間を置いて、落ち着いた声で、「これは、かなり良いと思います」と言えば、「この人、本当にそう思ってるんだな」と受け取られることもあります。

文章にすると全部同じ言葉です。

でも会話では、全然違います。

お客様は、営業マンが言っている内容だけでなく、営業マン自身がその言葉をどれくらい信じているか

まで感じ取っています。

5.確信は、トナリティから漏れる


ここは営業をしていると、かなり分かりやすい部分です。

自分自身が商品に確信を持っているとき。

逆に、「これ、正直ちょっと弱いんだよな」と思っているとき。

同じスクリプトを読んでも、声が変わります。

本人は隠しているつもりでも、間が変わる。

語尾が弱くなる。

説明が長くなる。

余計な言い訳が増える。

逆に本当に確信していると、必要以上に説明しなくても言葉が強くなります。

だからトナリティは、単なる「声のテクニック」ではありません。

むしろ、自分の中にある確信が、相手にどう伝わっているかという話でもあります。

6.ラポールとトナリティはセットで考える


ここまで見ると、ラポールとトナリティは別のテクニックのようで、実はかなりつながっています。

ラポールが強いと、「この人は自分を理解してくれている」という安心感が生まれます。

トナリティが強いと、「この人は自分の言っていることに確信を持っている」という印象が生まれます。

この2つが合わさると、「この人は自分のことを分かっている」

そして、「しかも、この人は分かっていそうだ」

という状態になります。

これが、営業担当者への確信を作る大きな要素になります。

逆にどちらかだけだと、弱くなることがあります。

ラポールだけ強い。

すると、「話しやすい人」で終わることがあります。

トナリティだけ強い。

すると、「自信満々だけど、こっちの話を聞かない人」

になってしまうことがあります。

だから、安心感と確信感の両方が必要なのです。

7.「好かれること」と「信用されること」は違う


ここも重要です。

営業への確信を上げようとして、とにかく愛想よくする。

相手に合わせる。

何でも肯定する。

お客様の機嫌を取る。

これをやっていると、確かに好かれることはあります。

でも、好かれることと信用されることは同じではありません。

例えばお客様が、「これ、自分にも向いてますよね?」と聞いてきたとします。

本当は向いていないのに、「もちろんです!」と答える。

その場では喜ばれるかもしれません。

でも、その瞬間に営業としての確信を落とすこともあります。

場合によっては、「その条件なら、私はおすすめしません」と言える方が、
「ちゃんと見てくれている人だ」と信用されます。

つまり営業への確信は、相手に気に入られることで作るものではないのです。

相手を理解しようとすること。

必要なときには正直に言うこと。

自分の言葉に確信を持つこと。

そうしたものが積み重なって、「この人なら信用できそうだ」という判断になります。

8.ラポールを作るより、「壊している瞬間」を探してみる


ここで少し実践的な話をします。

「ラポールを作ろう」

と考えると、何か新しいテクニックを足したくなります。

でも実際には、自分が無意識にラポールを壊している瞬間を減らす方が早いことがあります。

例えば、お客様が話している途中で遮る。

質問をしたのに、答えを最後まで聞かない。

お客様の発言を受けずに、すぐ商品説明へ戻る。

何でも「分かります」と返す。

早く契約したくて、声のテンポがどんどん速くなる。

お客様が不安そうなのに、営業マンだけテンションが高い。

こうした小さなズレが積み重なると、「なんとなく信用できない」
になります。

そして厄介なのは、お客様自身も「なぜこの営業マンを信用できないのか」
を言葉にできないことが多いことです。

だから営業側も、「商品は刺さってたのに、なぜ決まらなかったんだろう?」となります。

9.AIで「自分が信用を落としている瞬間」を探す


ここでもAIは使えます。

商談の録音を書き起こしたものや、自分で思い出した会話を入れて、こんな分析をさせてみてください。
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あなたは営業商談の分析コーチです。

以下の商談会話について、「営業担当者への確信」という観点から分析してください。

【商談内容】
ここに記入

次の項目に分けて分析してください。

・ラポールを作れている発言や対応
・ラポールを壊している可能性がある発言や対応
・営業担当者への信頼を高めている要素
・営業担当者への信頼を下げている可能性がある要素
・同じ言葉でも、トナリティによって受け取られ方が変わる箇所
・その場面では、どのような声の速度・間・強弱が適切か

顧客心理は断定せず、複数の可能性を提示してください。

また、営業担当者が「好かれようとしすぎている」「押しすぎている」「説明しすぎている」箇所があれば指摘してください。
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AIは声そのものを直接聞いていない場合、実際のトナリティまでは分かりません。

ただ、

「ここは強く言うより、少し間を置いた方が伝わりそう」

「ここで即答すると押し売りに聞こえる可能性がある」

といった仮説を出すことはできます。

それだけでも、今まで感覚でやっていた営業を言葉にする練習になります。

まとめ

営業担当者への確信は、「私は信用できます」と言えば作れるものではありません。

お客様は、自分を理解してくれているか。

話していて安心できるか。

この営業マン自身が、自分の言葉を信じているか。

そうしたものを、会話の中から判断しています。

ラポールは、相手が安心して話せる状態を作る技術。

トナリティは、自分の確信を、言葉以外の部分でも伝える技術。

この2つが揃うことで、

「この人なら話を聞いてもいい」

「この人からなら買ってもいい」

という確信が作られていきます。

営業では、正しい言葉を選ぶだけでは足りません。

その言葉が、相手にどう届いているかまでが営業です。


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