商品が良ければ売れる、はなぜ間違いなのか ― 「3つの確信」

商品が良ければ売れる、はなぜ間違いなのか ― 「3つの確信」

記事
ビジネス・マーケティング
前回の記事では、ジョーダン・ベルフォートの「ストレートライン・システム」について紹介しました。

商談にはスタート地点とゴールがあり、お客様の反応を見ながら、横道に逸れた商談をゴールへ向かう線上に戻していく。

では営業は、何を見ながら商談を進めればいいのでしょうか。

その一つの考え方が、

Three 10s(3つの10)

です。

これは、お客様が購入を決断するために必要な「確信」を3つに分けて考える方法です。

1.「良い商品なら売れる」は本当でしょうか?

営業をしていると、

「商品には自信があります」
「競合より絶対うちの方がいいです」
「ちゃんと説明すれば良さを分かってもらえるはずです」

という言葉をよく聞きます。

でも、実際には売れません。

逆に、「なんであの商品がこんなに売れているんだろう?」

と思うこともあります。

なぜでしょうか。

理由の一つは、お客様が商品だけを見て購入を決めているわけではないからです。

どれだけ良い商品でも、「この営業マン、なんか信用できないな」と思えば買いません。

商品にも営業マンにも好感を持っていても、「でも、この会社大丈夫なの?」
と思えば契約をためらいます。

つまり、お客様は複数の対象に対して「確信」を持てるかどうかで判断しているわけです。

2.お客様が持っている3つの確信

Three 10sでは、大きく3つの確信を見ます。

① 商品・サービスへの確信
「これは自分に必要だ」
「この商品なら問題を解決してくれそうだ」

② 営業担当者への確信
「この人は信用できそうだ」
「この人の話なら聞いてもいい」

③ 会社への確信
「この会社なら任せても大丈夫そうだ」
「契約後もちゃんとしてくれそうだ」

これらを1〜10の尺度で考えます。

もちろん、本当にお客様の頭の中に数字が浮かんでいるわけではありません。

でも、「何に対してどれくらい納得しているか」を整理するには、とても分かりやすい考え方です。


3.商品への確信だけ高くても売れない

例えば、商品への確信が9まで上がったとします。
お客様も、「これ、結構いいですね」と言っています。
営業マンとしては、「これは決まったな」と思うかもしれません。
ところが最後に、「ちょっと考えます」と言われる。

商品:9
営業担当者:4
会社:5

だったのかもしれません。

商品の良さには納得した。

でも、

「この人から契約して大丈夫かな」
「この会社、本当に信用できるのかな」

という不安が残っている。

ここで商品の説明をさらに重ねても、あまり意味がありません。

9点のものを10点にするより、4点のものを見る必要があるからです。


4.お客様の質問やリアクションはシグナルである

では、その確信度をどうやって知るのでしょうか。

もちろん、「ちなみに今、弊社への確信度は何点ですか?」

なんて聞くわけにはいきません(笑)

そこで重要になるのが、お客様の質問やリアクションです。

「他社と何が違うんですか?」
→ 商品への確信がまだ弱いのかもしれない。

「御社って何年くらいやってる会社なんですか?」
→ 会社への確信を確認している可能性がある。

「なるほど……」

と言いながら、表情が少し曇った。
→ 何かが腹落ちしていないのかもしれない。

ここで大事なのは、断定しないことです。

ただ、「なぜ今、その質問をしたんだろう?」

と仮説を立てる。

経験のある営業マンは、こうした小さなシグナルをかなり無意識に拾っていますし、仮説の精度も非常に高いものがあります。

これがいわゆる「営業センス」と呼ばれるものだと思います。

5.ただし、低い確信を全部上げられるわけではない

ここは実際の営業ではかなり重要です。

Three 10sを知ると、「低いところを見つけて10まで上げればいい」
と思いがちです。

でも現場はそんなに簡単ではありません。

むしろ、どうにもならないことの方が多い。

商品への確信が低い理由が、「まだメリットを理解していない」
なら説明で上げられるかもしれません。

でも、

「そもそもこのジャンル自体に興味がない」
「本人の価値観と合っていない」

なら、営業で動かせる余地は少ないでしょう。

会社への確信も同じです。

実績を知らないだけなら伝えれば変わる。

でも業界そのものに強い不信感を持っているなら、短い商談で覆すのは難しい。

だから実際の営業では、「どこが低いか?」だけでは足りません。

もう一つ見る必要があります。「その低さは、営業で動かせるものなのか?」
です。

6.成約に必要な確信の高さは、人によって違う

そしてもう一つ。

Three 10sという名前を見ると、「全部10になれば買う」ように見えます。

でも実際には、人によって成約ラインは全然違います。

商品:7
営業:8
会社:7

でも、「よし、やってみよう」と決断する人はいます。

逆に、

商品:9
営業:9
会社:9

くらいまで納得していても、「もう少し考えたい」という人もいます。

なぜなら、意思決定に必要な確信の閾値が、人によって違うからです。

金額でも変わります。

リスクの大きさでも変わります。

その人の性格でも、過去の経験でも変わります。

つまり営業が見るべきなのは、「今何点なのか」だけではありません。

「この人は、何点まで上がれば動く人なのか?」

まで読む必要があります。

ここは、かなり営業センスが出るところだと思います。


7.営業センスとは「確信の位置」と「閾値」を読む力である

営業中、経験のある人はかなり複雑なことをしています。

お客様の発言を見る。
質問を見る。
表情を見る。
声色を見る。
間を見る。

そこから、

「商品への確信は高そう」
「会社への不安が残っている」
「営業への信用は取れてきた」

と仮説を立てる。

さらに、

「この人は比較的早く決断するタイプだな」
「この人はかなり確信しないと動かなそうだ」

と、意思決定の閾値まで推測する。

そして、

どこが低いのか。
そこは動かせるのか。
どこまで上げれば決断するのか。

を見ながら会話を変えていく。

こういう処理を、ベテラン営業は無意識にやっていることがあります。

「営業センスがある」というのは、こういった一連の処理精度が高い状態の事ですね。

8.この営業センスをAIで言語化してみる

ここでAIの出番です。

AIにお客様の心を読ませることはできません。

ただし、「この発言なら、こういう心理の可能性がある」という仮説を複数出すことは得意です。

例えば商談後、こんなプロンプトを使えます。

あなたは営業商談の分析コーチです。
以下の商談内容から、顧客の確信度を分析してください。
--------------------------------------------------------------------------------------------------

【商品・サービス】
ここに記入

【顧客について分かっていること】
ここに記入

【商談内容・顧客の発言・質問・リアクション】
ここに記入

次の3つについて分析してください。

・商品・サービスへの確信度
・営業担当者への確信度
・会社への確信度

点数は断定せず、「6〜8程度」のように幅を持たせて推測してください。

また、それぞれについて、

・判断の根拠となる発言や反応
・確信が不足している可能性
・その不足は営業によって動かせるものか
・確認するために次に聞くべき質問

を提示してください。

さらに、この顧客が意思決定するために必要な確信の水準が高いタイプか低いタイプかについても、根拠とともに仮説を提示してください。

顧客心理を断定せず、複数の可能性がある場合は併記してください。
--------------------------------------------------------------------------------------------------

これを使えば、

「あの質問、なんだったんだろう?」
「結構刺さってたと思ったのに、なぜ決まらなかったんだろう?」

という商談を、別の角度から振り返れます。

AIの答えが正解とは限りません。

でも、自分が無意識に処理していたものを言葉にする材料にはなります。

まとめ

Three 10sは、商品・営業担当者・会社に対する、お客様の確信を見るための考え方です。

ただし実際の営業では、「低いところを10にすればいい」だけではありません。

どの確信が低いのか。

その確信は営業によって動かせるのか。

この人はどこまで確信すれば決断するのか。

そこまで見て初めて、現場で使える考え方になります。

売れない理由を、「商品の説明が足りなかった」だけで終わらせない。

お客様は、何をまだ信じ切れていなかったのか。

そう考えると、商談の見え方はかなり変わってきます。

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