秘境の温泉宿で働くということ

秘境の温泉宿で働くということ

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法律・税務・士業全般

【FP1級の現場から】秘境の温泉宿で働くということ
こんにちは、FP1級の星です。

ファイナンシャル・プランナーとして日々様々なご相談をお受けしていると、ふと「自分の原点はどこにあるのだろう」と振り返ることがあります。

私の源流——それは20代前半の頃、山奥の秘境にある温泉宿で住み込みで働いていた時期にあります。
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まだ私が何物でもなかった頃の、忘れられないお話です。

第1章:短期間でお金を貯めるはずが……
当時の私がなぜそんなところで働こうと思ったのかというと、理由は実に単純でした。

「住み込みで食事も出るので、短期間でお金が貯まると思ったから」

私はただバイク代を貯めたくて、軽い気持ちで働き始めました。
そして勝手に、そこで働いている人たちも自分と同じように「短期間でお金を稼ぎたいと思っている人たちなのだろう」と思い込んでいたのです。

しかし、全く違いました。

そこで働く人たちの多くは「逃げてきた人たち」でした。
借金から、夫から、世間から……ほとんどの属性が「逃げてきた人たち」だったのです。

そこに私が入ります。
「なんで来たのか?」と、これからの同僚に話しかけられました。私は答えます。
私「住み込みで食事も出ると聞いたので、お金を貯められると思いました」

すると、同僚のおひとりからこう言われました。

同僚「なるほどね、いい感じで答えるね。まあいいよ。。」

後から思い浮かべると、「どのような事情できたのか?」と問われていたのでしょう。とはいえ当時の私は20代前半でしたので、もし事情があったとしても軽い事情であろうとの予測もあったようですが……実際はただバイク代を貯めたくて来ていただけでした。

第2章:電話の向こうの「タナカさん」
宿にはよく電話がかかってきます。もちろんお客さんの予約の電話もありますが、住み込みの従業員あての電話も多くかかってきました。

ある日、私が取った電話で「そちらに勤務しているタナカさんはいますか?」という問い合わせがありました。
私は休憩室に行って声をかけました。

私「すいませんここにはタナカさんはいないと思うんですけど、タナカさんあてに電話が来ています。前働いていた人とかですか?」

休憩室の1人「しー、静かに。タナカさんって人は前はいたけど、もう働いてないって伝えて。」
そう聞いて、私は電話口に「いない」旨を伝えて電話を切りました。

その夜、トイレでその休憩室にいた方と会い、少しお話ししました。

同僚「今日の電話。あれ、たぶん借金やで。」

私「借金?でもタナカさんは今はいないんですよね?」

同僚「そらぁ、、おらんといえばおらんけどなぁ、、あの休憩室にヤマモトさんいたやろ?」

私「はい、いましたね」

同僚「そ。ヤマモトさんがタナカさんやねん。」

私「はい?」

同僚「そや。ある日な、タナカさん『今日からヤマモトでお願いします』言うてな。みんな、『そうかぁ、今日からヤマモトさんかぁ』言うてな。そうするようにしてんねや。」

私「えっと、偽名ということですか?」

同僚「そんなひどいことやなくて、仕事場のニックネームや、本人が呼んでほしい名前があるって言うて、周りが応じただけやなぁ。まあ、兄ちゃんには事情はなさそうやけど、あんまり興味持って皆を見たりせんといてな。」

第3章:「嘘」で隠さなければならなかった事情
私「はじめは私も疑われていた気がしましたが、なぜ今は事情がないと思われるのですか?」

同僚「こんないろんなモンのおる山奥の温泉宿の支配人や。その支配人が、兄ちゃんをお金を扱う仕事をさせてるやろ?フロントや最寄りの信用金庫への入金、、、その仕事は『お客様の前に出せる』『お金も持ち逃げしない』『車を持ち逃げしない』程度に兄ちゃんを信用しとるということや。つまり、兄ちゃんに後ろ暗い感じの事情はないんや。たぶんな。」

私「みんな、なにかがあるのですか?」

同僚「まあ、逃げて来とる。私は『夫』やから、まあ、支配人からお金を扱わせてもらう機会は少しはある方や。そっちの信用がないわけやないからな。ただ、私はここで働いていることが広まらない程度の仕事がええんや。やからフロントや、信金への入金みたいな顔が売れる仕事はちょっとしとうないわ。」

私「他は何から逃げる必要があるのですか?」

同僚「うーん、多いのは借金やな」

私「借金?自己破産すればよいのでは?」

同僚「さてなぁ、いいとこだけから借りてるだけではなかったり、知り合いに会いたくなかったり、親戚からも借りとって、自己破産がやりにくくて逃げとるとか、すでに自己破産した後にも遊んで、2回目は借金がチャラにならんとか、何とか、いろいろ聞こえては来るなぁ」

同僚「家から逃げる。というのもあったなぁ。」
私「『家』というと家族ですか?」
同僚「そうやな、親戚も含むんかもな。いびられ続けた嫁やった人が以前おったわ。」

私「それで全部ですか?」
同僚「ま、ここからはあんまりなぁ、、あんまり考えんようにしてるところやな。みんな、少しずつ、嘘はついてんねん。過去がきつくて、今も楽やないと、少しくらい嘘をつきたくなるや。」

私「うーん。見栄を張るとか?」
同僚「そうそう、そんな感じや。嘘で隠すわけやな。見せたくないところを。」

私「うーん、そのくらいは人間だったら、ありうるのでは?」
同僚「せやな、『人間だったらありうる』はいい感じや。その通りや。ただなぁ、お勉強ってことで兄ちゃんに教えといたるわ。。。少し長ごう努めとると、何か、つじつまが合わん時があるんや、『あれっ』てな?」

私「嘘を嘘だったと、はたから見てわかるときがあるということですか?」
同僚「そうやな。兄ちゃん頭がええな。はっきりとはわからん部分もあるのでつつきたくもないんやけどな。あれっこの人前言ったことと違うこと言うとるわとか、ここでこんなはなしするんやったら、前聞いた事情は大げさやったな、、とかな。。(ここからは小声で)タダな、兄ちゃん。例えば『借金から逃げてきました』が嘘やったら?」
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私「それ以外の事情なのではないですか?」

同僚「そうやな。単純に考えたらその通りや。。。ただな『借金から逃げてきました』という嘘で隠さないといけない、隠したい方の事情はなんなんやろか?ってな。ただ、これ以上は兄ちゃんの負担になるやろうから、誰に『あれっ』思ったかは言わんといたるわ。まあ、しょうもないアホみたいな事情やったらええんやけどな」

第4章:この強烈な記憶から学んだ「FPとしての教訓」
なぜか、このやり取りは今でも強く心に残っています。
残っていたからこそ、お金に詳しくなっている現状もあるのかもしれません。私にとって強烈な経験で、教訓で、学習でした。

この原体験から、私がFPとして学んだ大切な教訓があります。

1. 「お金の問題」の背景にある、人間の心理と複雑な事情
お金に困っている人の背景には、単なる計算の違いや知識不足だけでなく、人間関係の破綻、見栄、家族の問題などが複雑に絡み合っています。「借金」という目に見える問題の裏側に、さらに深い「言えない事情」が隠されていることも少なくありません。

2. 「見栄や嘘」は問題を複雑にし、自分を追い詰める
人は過去が苦しく、今が楽でないと、自分を守るために嘘をついたり見栄を張ったりしたくなります。しかし、嘘で隠そうとすればするほど辻褄が合わなくなり、結果として自分自身の逃げ場をなくしてしまうのです。

3. 正しい知識と手続きこそが、本当の再出発になる
あの宿で出会った人たちのように、知識がないために「逃げるしかない」と思い込んでいる方が世の中にはたくさんいます。しかし、正しく制度を活用し、現状を直視して手放す勇気を持てば、隠れて生きる必要のない再出発の道は必ず用意されています。

結び:
<影を知るからこそ>
あの山奥の温泉宿で聞いた同僚の言葉——「人間だったら、ありうる」。

お金の相談をお受けする中で、お客様が言いにくい過去や、見栄からついた小さな嘘を口にされることがあります。私はどんなご相談であっても、客観的な数字だけで冷たくお話することはいたしません。人間は誰しも弱さがあり、追い詰められれば取り繕いたくなる生きものです。
あの日、山奥の温泉宿で見た人間の哀愁と、お金の現実。事情の様に。
その「影」の部分を知っているからこそ、相談者の方の痛みに寄り添い、解決できるように一緒に考えたいと思います。
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ここでブログはおしまいです。このような現実が実際にあります。このように物理的に逃げる前に、ご相談をお願いいたします。

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