「ハラスメント相談窓口は、うちにもあります」——そう言う会社でも、よく聞いてみると「作ったけれど、誰も使っていない」ことが少なくありません。窓口は“設置すること”がゴールではなく、“安心して相談できて、きちんと対応されること”が本当のゴールです。今日は、機能する相談窓口の作り方を、専門的な視点で整理します。
■相談窓口は、いまや「義務」です
パワーハラスメント防止のための措置は、法律(労働施策総合推進法、いわゆるパワハラ防止法)で事業主に義務づけられています。大企業は2020年6月から、そして中小企業も2022年4月から義務化されました。「相談体制の整備(相談窓口を定めて周知すること)」は、その柱のひとつです。つまり、窓口を持つことは“任意の取り組み”ではなく、会社の責任になっています。
■【保存版】そもそも「パワハラ」とは(3つの要素)
窓口の担当者がまず共有しておきたいのが、この定義です。次の3つを“すべて”満たすものが、職場のパワハラとされています。
・優越的な関係を背景とした言動(上司↔部下に限らず、先輩後輩や集団による場合も含む)
・業務上必要かつ相当な範囲を超えている
・労働者の就業環境が害される
「厳しい指導」と「パワハラ」の線引きは、この3要素で考えると整理しやすくなります。
■窓口を“機能させる”ための作り方
設置しただけで使われない窓口には、共通の抜けがあります。次を押さえます。
・担当者を決めて周知する……「誰に言えばいいか」が分からなければ、窓口は無いのと同じ。社内担当だけでなく、外部窓口を併用すると相談のハードルが下がります。
・「微妙なケース」「おそれの段階」でも受ける……ハラスメントに該当するか分からない段階の相談も広く受ける、と明示しておく。
・プライバシーの保護と、不利益な取扱いの禁止を明記する……「相談したことで不利になる」と思われた瞬間、窓口は使われなくなります。ここは規程に必ず入れます。
■相談を受けた“後”の流れを、先に決めておく
窓口の信頼は、受けた後の対応で決まります。あらかじめ次の順番を決めておきます。
1. 事実関係を迅速・正確に確認する(相談者・行為者、必要なら第三者から)
2. 被害を受けた人への配慮の措置(環境の調整など)
3. 行為者への措置(確認できた事実にもとづいて対応する)
4. 再発防止に向けた措置(研修・周知など)
この流れが無いと、「相談したのに何も変わらない」となり、二度と使われません。
■つまずきやすいポイント、3つ
1. 「作っただけ」で終わっている……窓口の存在と使い方が、社員に周知されていない。
2. 相談担当が中立でない……行為者に近い立場の人が受けると、相談者は本音を言えません。
3. 秘密が守られると“見える”形になっていない……守秘と不利益取扱いの禁止が、言葉としてはっきり示されていないと、人は動きません。
私は管理部門で30年、規程やルールを整える側と、社員側の面談(のべ1,000人ほど)の両方に携わってきました。だからこそ、「窓口の規程をどう作るか」だけでなく、「その窓口を、社員に本当に使ってもらえるか」まで見て、お手伝いできます。
「窓口はあるが、機能している自信がない」「規程に何を書けばいい?」——現状の点検や、たたき台づくりからで大丈夫です。まずは一緒に、現状を整理するところから始めましょう。