感情を「映像」にして伝える:言葉で説明せず「体験」させる歌詞の書き方

感情を「映像」にして伝える:言葉で説明せず「体験」させる歌詞の書き方

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音声・音楽
作詞をしていると、このような壁にぶつかることはないでしょうか。

「自分の歌詞が、なんだかありきたりな気がする」
「『悲しい』や『嬉しい』ばかりで、深みが出ない」

伝えたい気持ちが強ければ強いほど、つい「愛してる」「切ない」といったストレートな言葉を使いたくなってしまうものです。もちろんそれは素直な表現ですが、使いすぎると、聴き手には少しありきたりな印象を与えてしまうこともあります。

今回は、言葉で直接説明するのではなく、「映像」として聴き手の頭に浮かび上がらせる方法について、3つのアプローチをシェアします。

1. 感情を「体の動き」に変換する

一つ目は、心の動きを「動作」に置き換えてみる方法です。

私たちは、強い感情を抱いたとき、無意識に体が反応します。そのため、「悲しい」と書く代わりに、「そのとき、主人公の体はどうなっているか」を想像してみます。

悔しい」場合: 「悔しい」と書く代わりに、「唇を強く噛んだ」や「握りしめた掌に爪が食い込んだ」とする。
「寂しい」場合: 「寂しい」と書く代わりに、「膝を抱えて小さくなった」や「意味もなくスマホの画面を点けたり消したりした」とする。

動作は嘘をつけないからこそ、その小さな仕草を描写するだけで、感情の言葉を使うよりもリアルに主人公の気持ちが伝わりやすくなります。

2. 感情を「景色の見え方」に変換する

二つ目は、今の気持ちを「まわりの景色」に託してみることです。感情というのは、世界を見るためのフィルターのような役割を果たします。

同じ夕焼けでも、幸せなときは温かく見えるし、悲しいときは目が痛くなるほど赤く見えるかもしれません。直接「つらい」と言わずに、「今、主人公の目には世界がどう見えているか」を描いてみましょう。

「孤独」な場合: 「一人が寂しい」と書く代わりに、「冷蔵庫の低い音だけが、部屋の隅に響いている」とする。
「絶望」している場合: 「もうダメだ」と書く代わりに、「信号の点滅が、急かしているように見えた」とする。

主人公から見える景色を描写することで、聴き手は同じ場所に立ち、同じ空気を吸っているような感覚を持ちやすくなります。

3. 感情を「五感」に変換する

三つ目は、「五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)」のスイッチを入れることです。頭の中だけで言葉を探すのを一度止めて、そのシーンのなかに飛び込んでみるイメージです。

その空間で、何が見えて、どんな音が聞こえて、どんな匂いや感触があるかをすくい上げていきます。

匂い(嗅覚): 「雨の匂いがした」「金木犀の香りがした」
温度(触覚): 「風が冷たかった」「缶コーヒーの温かさが手にしみた」
音(聴覚): 「遠くで踏切の音がした」「人混みのざわめきが耳に痛い」

例えば、「別れが悲しい」と書くよりも、「雨の匂いが混じった風が、冷たく頬を撫でた」と書くほうが、その場の切なさが肌感覚として伝わってきます。五感を使った言葉は、聴く人の記憶の引き出しをひらく鍵になります。

言葉は「説明」ではなく「体験」

今回は、歌詞の中の主人公の感情を、以下の3つで表現する方法についてお話ししました。

・体の動き(動作)
・景色の見え方(フィルター)
・五感(肌感覚)

これらを意識することで、歌詞は「感情の説明」から、聴き手が一緒に味わえる「体験」に変わっていきます。

もちろん、描写を丁寧に積み重ねた上で、最後にたった一言「会いたい」とストレートに伝えるのも効果的です。その一言には、前半の描写があるからこその強い説得力が宿るはずです。

「この気持ちをどう書けば伝わるだろう」と迷ったときは、ぜひこの3つの視点から世界を覗いてみてください。

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