「自分だけの、オリジナルな歌詞が書きたい」
「でも、書こうとすると、誰かの真似みたいになってしまう……」
作詞に取り組むなかで、誰もが一度は突き当たる壁ではないでしょうか。
「オリジナリティを出さなければ」と焦るあまり、ペンが止まってしまう経験は、私にもたくさんあります。
その呪いを解く鍵は、意外にも正反対の「真似すること」にあるのかもしれません。今回は、一見すると矛盾するように思える「真似る」ことと「オリジナル」の関係について考えてみます。
「学ぶ」は「真似る」から
日本語の「学ぶ(まなぶ)」という言葉は、古くは「真似る(まねぶ)」と同じ語源だったと言われています。これは、芸術や表現の世界において、昔から変わらない本質です。
ピカソのような画家も、初期は過去の巨匠たちの絵を徹底的に模写することから始めています。音楽の世界でも、多くのミュージシャンが最初は憧れのアーティストのコピーからスタートしているはずです。最初から、完全に「ゼロ」の状態でオリジナルを生み出せる人はどこにもいません。
オリジナリティとは、何もない荒野に突然花を咲かせることではなく、たくさんの素晴らしい「型(かた)」を学び、真似て、自分の体に取り込んだ先に、初めて滲み出てくる「その人らしさ」なのだと感じます。
何を「真似る」べきか(NGな真似、OKな真似)
ただし、「真似る」と言っても、何でもそのまま取り入れていいわけではありません。そこには明確なルールがあります。
NGな真似:「表面(言葉)」を、そのまま盗む
これはリスペクトではなく、単なる「盗作」になってしまいます。例えば、既存の楽曲にある、そのアーティスト固有の印象的なフレーズをそのまま自分の歌詞に使ってしまうようなケースです。固有の「言葉」そのものを流用するのは避けるべきでしょう。
OKな真似:「型(かた)」を、盗む
私たちが学ぶべきなのは、そのアーティストが使っている「技術」や「思考法」、つまり「型(かた)」のほうです。
◆技法を分析する
→「なぜ、このアーティストは平凡な名詞を組み合わせて、新しい言葉を作るのだろう?」
◆視点を分析する
→「なぜ、こんなに日常の行動を描写するのが上手いのだろう?」
◆構成を分析する
→ 「この曲のBメロは、なぜこんなにサビを盛り上げるのだろう?」
このように構造を捉えようとすることが、建設的な「真似る」という行為になります。
「型」をツールにする3つのステップ
では具体的に、どのように「型」を学んでいけばいいのか、3つのステップに分けてみましょう。
1.好きな曲を1曲選ぶ
「こんな歌詞が書きたい」と、心から惹かれる曲を1曲だけ選びます。
◆その曲を徹底的に「分解」する
その歌詞がどのように成り立っているか、構造を分解してみます。
・テーマは何か(何を歌っているか)
・構成はどうなっているか(Aメロ、Bメロ、サビの役割)
・視点はどこにあるか(主人公は誰で、誰に語りかけているか)
・どんな技法が使われているか(五感、比喩、描写など)
その「型」だけを使って、全く別のテーマで書く
ここが一番大切なトレーニングです。
例えば、分解した結果、その曲の構成が「Aメロは情景描写、Bメロは過去の回想、サビは現在の決意」だと分かったとします。そして、その「構成の枠組み」だけを借りて、自分の全く別のテーマ(例えば、就職活動や、何気ない休日の風景など)で、新しい歌詞を書いてみるのです。
まとめ
作詞中に筆が止まってしまったときは、一度そのプレッシャーを手放して、憧れの楽曲の「型」をなぞることから始めてみてはどうでしょうか。
しっかりとした「型」という土台があるからこそ、そこに新しく載せる自分の言葉や個性が、より引き立つようになるのだと思います。
▽ あなたの歌詞をプロの視点で磨き上げる、個別添削セッションはこちらからお申し込みいただけます。