# その人を知ることから始まる
前回、「目の前の出来事、その向こう側」という記事を書きました。
私たちが見ているのは、その人の人生のほんの一部分。
では、その人を理解するために、私たちは何をしているのでしょう。
今回は、その続きを少し。
## その人のこと、どれだけ知っていますか?
相談援助の仕事では、まずインテーク(受理面接)で要望を確認します。
そして、本人や家族から情報収集をします。
現在の生活状況、家族構成や関係性、生活歴、職業、疾病、身体状況、生活環境、人間関係などなど。
まぁ、聞くことはたくさんあります(笑)。
聞きにくいことも、たくさんあります(笑)。
でも、ただ項目を埋めればいいという話ではありません。
話しているときの表情、言葉、声色、会話の間。
そこに表れる感情や、ふと感じる違和感。
言葉にならない思いが、隠れていることもあります。
五感を働かせながら、その人を知ろうとする。
これも大切な情報収集だと思っています。
たとえ、その人が今、言葉で思いを伝えることができなくても。
言葉以外にも、その人が伝えていることはあるのです。
## 「サービスを使いたくない」にも理由がある
例えば、介護サービスを利用したくないという人。
周囲から見れば、支援が必要に思える。
家族も困っている。
でも、本人は「まだ必要ない」と言う。
その理由は人それぞれ。
大勢の人がいるところは苦手。
サービスを利用すると、何もできない人だと思われそう。
お金がかかる。
まだ、人の世話になるほどダメになっていない。
同じ「利用したくない」という言葉でも、その背景は違います。
そこを知らずに「サービスを拒否する人」と決めてしまうには、まだ早い。
## 根拠のある想像
集めた情報をもとに、アセスメントを行います。
アセスメントとは、情報を整理し、分析して、課題を明らかにしていくこと。
でも、私がその過程で大切にしてきたのは、
**「根拠のある想像」をすること。**
その人は、何を大切にしてきたのだろう。
今、どんな思いでいるのだろう。どうしたいのだろう。
自分の価値観ではなく、できる限り、その人の内側から物事を観てみる。
そして、見えてきた課題にどうアプローチするのかを考える。
本人の意向、家族の意向。
困りごとがある人も、まだ困れていない人も、サポートしていく。
何をどうすることで、目指す暮らしに近づけるのか。
もちろん、人の気持ちは揺れるもの。
今日の思いが、明日も同じとは限りません。
そんな変化も想定しながら考えていく。
## AIにできること、人にしかできないこと
今はAIが情報を整理してくれる時代。
本当に便利になりました。
でも、目の前の人の表情や声色、会話の間から、ふと感じる違和感。
それに気づくのは、実際に向き合っている支援者です。
持ち帰った情報をAIに整理してもらうことはできても、その場で何を感じたのかは、支援者自身の中にあるもの。
もちろん、違和感が必ず正しいとは限りません。
だからこそ、知識や経験をもとに考え、情報を重ねていく。
AIは便利な道具。でも、その人の人生に向き合うのは、やはり人間なのだと思います。
## 誰のための支援なのか
私たちの顧客は、あくまでも本人。
サービスを利用してもらうことが目的ではありません。
本人の望む暮らしを考えるとき、家族の思いや暮らしも切り離すことはできません。
本人も家族も、それぞれの暮らしがあります。
だからこそ、どちらかの思いだけで支援の方向を決めるのではなく、その人を取り巻く環境も含めて考えていく。
その視点は、人と関わる限り大切にしていきたい。