介護職の面接では、履歴書や資格、勤務条件に目が向きがちです。
もちろん、それらは大切な確認項目です。でも、採用する側が知りたいのは「経験があるか」だけではありません。応募者もまた、仕事内容や職場の雰囲気を見て、「ここで働けそうか」を考えています。
介護現場で25年、管理者・施設長として15年働いてきた経験から、面接で採用側・応募側が見ていることをまとめました。紹介会社を通じた応募と直接応募の違いについても、面接で気をつけたい点を紹介します。
採用担当者が確認したい3つのこと
履歴書が丁寧に書かれている。写真や服装が整っている。時間を守って来ている。こうした準備から、応募に向けた姿勢が伝わることがあります。
それに加えて、面接では次のような点を確認します。
1. 介護の仕事への向き合い方
「人の役に立ちたい」という気持ちに加えて、「なぜ介護の仕事を選んだのか」「なぜこの施設に応募したのか」を、自分の言葉で話せると伝わりやすくなります。
応募先のサービスや特徴を調べ、自分の経験やこれからやってみたいことと結びつけて考えておくとよいでしょう。
2. 分からないことを確認し、相談できるか
経験の多さだけでなく、質問を聞いてから答えているか、分からないことを確認できるかも大切です。
経験が少ない場合は、無理に何でもできるように見せる必要はありません。「ここは経験があります」「ここはこれから学びたいです」と伝えることが、入職後の行き違いを防ぐことにもつながります。
3. チームの中で協力して働けそうか
介護の現場では、職員同士の連携が欠かせません。前職を辞めた理由について聞かれたときは、誰かへの不満だけで終わらせず、「その経験から何を感じたか」「次の職場ではどう働きたいか」まで話せると、自分の考えが伝わります。
採用面接の研究では、質問や評価の観点を整理し、応募者を共通の基準で確認する「構造化面接」が検討されています。「いい人だった」という印象だけに頼らず、仕事に必要な経験や行動を確かめるための参考になります。構造化面接に関する研究レビュー
応募者は、職場のどこを見ている?
応募者は、求人票の条件だけでなく、職員の挨拶や利用者への接し方、施設の雰囲気から、入職後の自分を想像しています。
職員が集まって話していても、それだけで私語が多いとは限りません。申し送りや相談をしていることもあります。会話の様子や、必要な情報を共有できていそうかを見てみましょう。
整理整頓や清潔さも、働く環境を知る手掛かりです。共有スペースや物品が使いやすく整っているか、安全に動けそうか、利用者が落ち着いて過ごしているか。短い見学でも、気づくことがあります。
仕事や組織との「適合感」は、応募者が組織に魅力を感じることなどと関連するというメタ分析があります。職場の雰囲気が自分に合うかを考えるのは、応募者にとって自然なことです。ただし、雰囲気だけでなく、仕事内容や勤務条件も合わせて確認しましょう。職場との適合感に関するメタ分析
紹介会社経由と直接応募、面接での違いは?
紹介会社を通じた応募では、応募者が事前に仕事内容や給与の説明を受けたり、希望条件を担当者に伝えたりしている場合があります。直接応募の人は、ホームページや求人情報をもとに自分で調べていることがあります。
ただし、応募経路だけで志望度を決めることはできません。違いがあるとすれば、面接前に得ている情報や、希望条件が施設に伝わっている経路です。厚生労働省の採用事例でも、人材紹介会社を通じて応募者の希望条件を把握しやすくなる場合があると紹介されています。厚生労働省「人材サービス事業者(人材紹介)を活用した採用」
紹介会社経由の人には、こんなふうに尋ねてみましょう。
- 「施設のことは、紹介担当者からどのように聞いていますか?」
- 「説明を聞いて、気になっていることはありますか?」
直接応募の人には、応募のきっかけや、調べる中で気になったことを尋ねると、施設のどこに関心を持ったのかが分かります。
- 「応募しようと思ったきっかけを教えてください」
- 「施設を調べる中で、気になったことはありましたか?」
どちらの応募経路でも、採用基準は同じです。事前情報の違いに合わせて説明や質問を工夫し、応募者本人の経験や希望を確かめましょう。
応募者が聞きにくい質問にも、具体的に答える
給与や職員同士の関係は、応募者が気になっていても質問しにくいことです。たとえば、昇給について聞かれたら「あります」と答えるだけでなく、どんな経験や評価が反映されるのかまで説明できると、働くイメージを持ちやすくなります。
意見を出せる職場かどうかを尋ねられたときも、会議の有無だけでなく、出た意見をどう扱っているかを伝えることが大切です。
組織心理学では、職場で疑問や意見を口にしても、対人関係上の不利益を過度に恐れずにすむ状態を「心理的安全性」と呼びます。製造業のチームを対象にした研究では、心理的安全性とチームの学習行動との関連が報告されています。介護施設を対象とした研究ではありませんが、職員が相談や意見を出せる環境について考える手掛かりになります。Edmondson「心理的安全性とチームの学習行動」
面接は、自施設を見直す機会にもなる
応募者は施設の説明や職員の様子を見て、採用担当者は応募者の経験や受け答えを見ています。見ているポイントは違いますが、お互いに入職後の姿を想像しています。
選考を公正で納得できるものと感じた応募者ほど、組織に良い印象を持ち、内定を受ける意向も高い傾向が、応募者の反応に関するメタ分析で報告されています。応募者の選考に対する反応のメタ分析
応募者からの質問に答えることは、自施設の仕組みを振り返る機会にもなります。
「昇給の仕組みを職員に説明できているか」
「現場の意見を、改善に生かせているか」
面接で聞かれたことをきっかけに、普段の職場環境を見直せることもあります。
採用側は「一緒に働ける人か」を、応募側は「自分が働き続けられる職場か」を確かめています。お互いに率直に話し、気になることを確認できる面接が、納得できる採用につながるのではないでしょうか。