多職種連携を考える②】「看護職は分かってくれない」と感じるのはなぜ?

多職種連携を考える②】「看護職は分かってくれない」と感じるのはなぜ?

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航空と企業のチームから考える、職種の壁を越えるヒント
「介護の現場を分かってくれない」
「こちらの話を、真剣に聞いてもらえない」
同じ入居者を支えているのに、職種が違うだけで話が通じない。そんな経験はないでしょうか。
たとえば、介護職が「いつもより食事量が少ない」と看護職に伝えたとします。看護職から「しばらく様子を見ましょう」と返ってくる。必要な判断だと分かっていても、介護職には「日々の変化を分かってもらえなかった」と感じられるかもしれません。
すれ違いが何度も続くと、やがて「また聞いてもらえない」「あの職種は分かってくれない」という不信感に変わっていきます。
このようなことは、介護業界だけで起こるのでしょうか。今回は航空と企業のチームを例に、職種の壁を越えるヒントを考えます。

同じ出来事でも、職種によって見えているものが違う

介護職は、入居者の普段の様子や生活の変化をよく見ています。看護職は、体調や医療的なリスクを考えます。ケアマネジャーや相談員は、本人・家族の希望やサービス全体を調整します。
どの視点も、支援には欠かせません。
一方で、自分が重視していることを相手が大切にしていないように見えると、「こちらの仕事を分かっていない」と感じやすくなります。相手の意図を確かめる前に、「また聞いてもらえない」と受け取ってしまうこともあります。
医療職を対象にした研究では、職種や立場の違いが集団の境界を強め、葛藤や相手への否定的な見方につながる過程が報告されています。ただし、これはスイスの医療機関で行われた聞き取り調査で、介護職全般を対象にした研究ではありません。介護現場でも同じことが起きると証明するものではなく、職種間のすれ違いを考える手がかりとして紹介します。研究の概要(PubMed)

航空では、気づいたことを伝え、確認する力を訓練する

航空機の運航は、機長一人の判断だけで成り立っているわけではありません。操縦士をはじめ、客室乗務員や整備士、管制官など、さまざまな人が情報をつないで安全を支えています。
そのため航空分野では、操縦技術だけでなく、コミュニケーションや状況判断、チームワークも重要な力として扱われています。CRM(クルー・リソース・マネジメント)では、チームが持つ情報や人員などを生かし、安全で効率的な運航を目指します。国土交通省の資料にも、乗務員が協力して情報や人的資源を活用すること、チームで訓練を行うことが示されています。国土交通省「エアラインの航空機の運航におけるCRM」
介護現場で参考になるのは、「気づいたら報告してください」と呼びかけるだけで終わらせないことです。
誰に伝えるのか。伝えた後、誰が確認するのか。判断した理由をどう共有するのか。こうした流れが決まっていれば、伝える側も受ける側も動きやすくなります。
報告を受けた側が「確認します」「今回はこの理由でこう判断します」と返すことも大切です。伝えても反応がない経験が続くと、「言っても無駄だ」と感じ、次の報告をためらうようになるからです。

企業でも、部門が違えば判断が食い違う

企業の商品づくりや業務改善でも、職種間のすれ違いは起こります。
たとえば、製造の仕事を見直すチームでは、現場担当者は作業のしやすさを、品質担当者は基準や安全性を、技術担当者は設備や方法を、管理者は費用や日程を考えます。それぞれが自分の役割を果たそうとしていても、重視するものが違えば、相手の意見が「現場を分かっていない」「融通が利かない」と映ることがあります。
製造業の業務改善チーム149組を調べた研究では、特定の部門の発言力が強くなりすぎることとチームの成果との関係に、職場の心理的安全性が関わっていました。チームリーダーが公平に意見を扱い、各部門の発言を促すことも重要とされています。研究の概要(Wiley)
これも介護施設を対象にした研究ではありません。ただ、会議に全職種が集まっていても、発言する人がいつも同じだったり、介護職の意見が検討されないまま終わったりすれば、「参加しているだけ」と感じるのは自然です。
大切なのは、全員の意見を採用することではありません。意見を聞いたうえで、採用しない場合も理由を伝えることです。

介護現場でできる、小さな見直し

航空や企業の方法を、そのまま介護施設に持ち込めばよいわけではありません。介護には、本人の生活や希望、安全を一緒に考える難しさがあります。
それでも、次のような工夫は現場で取り入れられます。
- 報告を受けた人と、その後の確認担当を決めておく
- 会議では、発言が少ない職種にも意見を尋ねる
- 判断した理由と、次に確認することを共有する
- 意見が採用されなかったときも、理由を伝える
- 「あの職種は分かっていない」と決めつける前に、相手が何を重視しているのかを確かめる
「今回は安全面を優先します。入居者の生活への影響は、介護職と一緒に確認しましょう」
そんな一言があれば、介護職の意見が置き去りにされたという感覚を減らせるかもしれません。

不信感が生まれたとき、仕組みも見直してみる

職種間の不信感を、個人の性格だけで説明してしまうと、解決策も「相手に変わってもらうこと」だけになりがちです。
けれど、情報の伝え方や返答の仕方、会議での発言機会を見直すことで、関係が変わることもあります。
多職種連携は、全員が同じ意見になるためのものではありません。違う専門性や立場を持ち寄り、入居者にとって何がよいのかを考えるためのものです。
「あの職種は分かってくれない」と感じたときは、相手の考えだけでなく、意見が届く仕組みになっているかも振り返ってみてください。職員同士が話しやすい場をつくることは、入居者への支援を考えることにもつながります。
多職種連携や職員間の話し合いに悩む管理者・リーダーの方は、「ケアのよりどころ」のプロフィール・サービスもご覧ください。
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