2026年9月8日、JR東日本が「Suica」の新しいイメージキャラクター候補を発表しました。
候補は3案。
リスをモチーフにしたキャラクター、未来へ飛び進む紫色のうさぎ、そしてオレンジ色のキャラクターです。
そして、今回面白いのが、JR東日本が「このキャラクターにします」と決めるのではなく、一般投票によって新キャラクターを決めるということ。
投票期間は9月8日から9月23日まで。
最も投票数の多かったキャラクターが新しいSuicaのイメージキャラクターとなり、11月18日に正式発表される予定です。
一方で、現在の「Suicaのペンギン」は2027年3月31日をもって卒業することが決まっています。
2001年のSuica登場から約25年間。
これだけ長く親しまれてきたキャラクターを変更するのは、企業にとってもかなり大きな決断でしょう。
なぜ、今キャラクターを変えるのか
単純に「新しいキャラクターを作りたい」という話ではありません。
JR東日本は現在、Suicaをこれまでの「移動や少額決済のためのサービス」から、より幅広い生活とつながる「生活のデバイス」へ進化させる「Suica Renaissance」を進めています。
つまり、キャラクターの変更もサービスそのものの変化とセットになっています。
ここがマーケティングとして非常に興味深いところです。
企業が大きく方向転換するとき、サービスの機能だけを変えても、ユーザーには「何が変わったのか」が伝わりにくいことがあります。
そこで、分かりやすい象徴を作る。
今回のSuicaにとって、それが新しいキャラクターなのかもしれません。
25年使ったキャラクターを変える難しさ
マーケティングでは、「認知されているものを変えない」という考え方もあります。
長年使われているロゴやキャラクターには、それ自体に価値があるからです。
「Suica」と聞いてペンギンを思い浮かべる人も多いでしょう。
だからこそ、キャラクターを変えることで「今までのSuicaではなくなるのでは?」という印象を持つ人が出てくる可能性もあります。
それでも変更する。
その背景には、Suicaそのものを次のステージへ進めたいという意図があります。
つまり今回のキャラクター変更は、単なるデザイン変更ではなく、
「Suicaはこれから変わります」
というメッセージにもなっています。
そして、もう一つ面白いのが「投票」
今回、JR東日本は3つの候補を用意し、利用者自身に選んでもらう方法を採用しました。
これはマーケティングの視点から見ると、非常に面白い方法です。
もし企業が新キャラクターを一つだけ発表すれば、ユーザーは基本的に「受け取る側」です。
しかし、
「あなたはどれがいいですか?」
と聞いた瞬間に、ユーザーは「参加する側」になります。
この違いは大きいと思います。
単に新キャラクターを発表するだけではなく、
「自分もSuicaの新しいキャラクター選びに参加した」
という体験を作ることができるからです。
「選ばせる」ことで、当事者になる
マーケティングでは、商品やサービスを一方的に伝えるだけではなく、ユーザーに参加してもらう仕組みが重要になることがあります。
例えば、
「新商品を発売します」
よりも、
「AとB、どちらがいいと思いますか?」
と聞かれたほうが、つい考えてしまいます。
さらに、自分が選んだものが採用されれば、その商品やキャラクターに対して少し特別な感情を持つかもしれません。
今回のSuicaの新キャラクター選びにも、そうした「参加型」のマーケティングが取り入れられているように感じます。
「変える」のではなく「一緒に変わる」
25年間親しまれてきたキャラクターを突然なくして、新しいキャラクターだけを発表する。
それでは、「ペンギンがいなくなって寂しい」という感情だけが残ってしまうかもしれません。
そこで、これまでの「Suicaのペンギン」を振り返る「Penguin Years」のキャンペーンを展開しながら、新しいキャラクターをユーザーと一緒に選ぶ。
過去への感謝を伝えながら、未来へ進む。
この流れは、単純なキャラクター交代よりも、ずっとストーリー性があります。JR東日本は2026年度を「Penguin Years」と位置づけ、25年間の歴史を振り返る企画も展開しています。
マーケティングで大切なのは、商品やサービスを「変えること」だけではありません。
「なぜ変えるのか」を伝え、その変化をユーザーにも楽しんでもらうこと。
Suicaのペンギン卒業と新キャラクター選びは、25年続いたブランドが次のステージへ進むとき、企業がどのようにユーザーを巻き込んでいくのかを見る、興味深い事例なのではないでしょうか。
さて、3つの候補のうち、次のSuicaを代表するキャラクターになるのはどれなのか。
結果が発表される11月18日も、注目してみたいところです。