なぜ図書館ではデータ分析が広がらないのか

なぜ図書館ではデータ分析が広がらないのか

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 図書館では利用者アンケートが広く実施されていますが、その分析は単純集計やグラフ作成にとどまる場合がほとんどです。

 一方、多変量解析を用いたより高度なデータ分析は、その有効性が認識されつつあるものの、実際の現場ではほとんど実施されていません。

 データ分析というと、統計学を一から学び、専門ソフトを使い、高度な解析を行わなければならないという印象があります。

 しかし、そのように考える必要はありません。

 まず、図書館では、なぜデータ分析は普及していないのかを考えてみましょう。

1. 人材不足

 第一に挙げられるのが、データ分析を行うスキルを持った人材がいないというものです。
 図書館では文系出身の職員が比較的多く、スキル習得のハードルが高いと感じており、統計分析の講習を受けても、実務で活用できるレベルに到達するまでには相応の時間が必要です。

2. 時間がない

 次によく挙げられるのが、データ分析をやってみたいという意思はあっても、時間的な余裕がないというものです。

 図書館職員は日常業務や定例業務だけで手一杯という職場も少なくありません。加えて、多くの業務をこなせる職員ほど、さらに新たな任務が割り振られがちです。

3. 予算制約

 スキルを持った人材を確保するにも、分析のためのツールを揃えるのにも予算措置が必要です。

 データ分析だけを目的とした投資と考えると費用対効果が見えにくく、コスト削減が優先される状況では予算が通りません。

4. 経験知が重視される

 図書館には長年培われてきた専門性があり、その経験や知識への自負から、「あえてデータ分析をしなくても状況は把握できる」という意識が生まれることがあります。

 また、前例踏襲が好まれ、経験や勘が重視される組織文化が根付いている場合もあります。

5. 分析を行う目的が分からない

 実例がないと、データ分析を行うことの有用性がなかなか理解されないということがあります。

 図書館活動の成果指標との結びつきを考えると、アンケートの設問設計も重要であり、成功事例が無い中では有用性を説明することは容易ではありません。

6. セキュリティの確保

 公共施設では、情報漏洩・流出やウィルス感染に対して多くの対策をとっています。

 クラウドサービスの利用やソフトウエアのダウンロードが制限されている場合も少なくありません。

 ソフトウエアの利用でも情報システム部門の許可が必要であり、その許可がおりることはほとんどないのが実情です。

 そのため、分析ツールを利用するということは現実的には困難です。


 さて、これからデータ分析を広げていくためにはどうしたらよいか。いくつか方策を挙げてみます。

方策1.統計ユーザーとしての立場

 データ分析には、既に多くのツールが用意されています。図書館職員は、「統計ユーザー」の立場としてこの分析ツールの使い方を知り、分析の結果を解釈してその後の図書館の運営に活かしていくことができれば十分とする考え方が大事だと思っています。

 「統計学そのものを深く学ぶ」のではなく、「分析ツールを使い、その結果を適切に読み解く方法を学ぶ」ことが先であり大事だということです。
 例えば、カウンターで資料の貸出・返却処理を行う際に、図書館システムのプログラミング的な仕組みやハードウェア的な動作原理を知らなくても、操作の仕方と画面に出力される情報を正しく解釈して処理できれば十分ということと同じです。
 分析の仕方を知ることが重要で、学術的な統計理論を深く学ぶことよりも、まずは分析結果を業務に活用できることを優先すべきです。この考え方に立てば、データ分析のスキル習得のハードルはかなり下がるのではないかと思います。

方策2.セキュリティ確保

 図書館でデータ分析が普及しない最も大きな要因は、実はセキュリティ問題だと考えています。情報漏洩・流出やウィルス感染防止のために、外部から分析ツールを持ち込むことができません。
 そうすると現状ではExcelを使った分析が重要になってきます。Excelには標準で「データ分析」機能を備えていますので、その中の多変量解析ツールを利用することになります。少なくとも相関分析と重回帰分析が利用できれば、かなり大きな進歩であり、データ分析普及への第1歩になります。
 ではなぜこれまで相関分析や重回帰分析が利用されてこなかったのか。それは統計学の教育では、有意水準を重視する考え方が強調されるためです。

 図書館のアンケートでは、データの性質から統計的有意差が得られないケースが少なくありません。そのため図書館はデータ分析の対象としてはあまり適切ではないと思われているふしがあるのです。

 しかし、この件は、社会現象における有意水準というものを考えることによって解決できるのです。

方策3.分析結果は内部参考資料

 例えば利用者アンケートのデータ分析結果の解釈は、利用者の評価や行動との関係が具体的に示されることがあります。そのため市民に向けた報告書として公開することは不適切です。公開用の報告書は単純集計やグラフによる報告とするのが妥当です。
 分析するとその結果を公開しなければならないと考えるかも知れませんが、データ分析は、あくまでも今後の図書館運営のための内部的な参考資料であるとするのが良いのです。
 データ分析が進むとExcelの標準分析機能だけでは不十分になってきます。総合的な分析ツールになってくると数十万円から数百万円の予算が必要になりますが、世の中には単機能で安価なツールや無料のツールさえも存在します。

 しかし、行政では、安価過ぎるツールや無料のツールは使いたがりません。理由は、保守・サポート体制を十分に確認できないためです。ツールに不具合が生じたときや提供メーカーに連絡が取れないことは、きわめてまずい状態となるからです。

 ここで、内部資料の作成を目的とした補助ツールとして位置付ければ、導入のハードルは下げられる可能性があります。

最後に

 データ分析は、図書館職員が統計学者になるためのものではありません。利用者の声や利用実態を客観的に把握し、より良い図書館サービスにつなげるための手段です。

 高度な知識や高価なツールがなくても、既存の環境でできることから始めることで、図書館におけるデータ活用は着実に広げていくことができるでしょう。


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