会議の録音を文字起こししたものの、その後の整理に困った経験はありませんか?
最近は、AIを使って音声を文字に変換することも身近になりました。
以前に比べると、文字起こしそのものにかかる手間は少なくなってきたように感じます。
ただ、実際に文字起こしされた文章を見てみると、そのまま議事録として使うには難しいことがあります。
話し言葉が続いていたり、同じ内容が何度も登場したり、何が決まったのか分かりにくかったり。
文字にはなっているのに、会議の内容を把握するためには、最初から最後まで読み直さなければならない。
そんな状態になることもあります。
今回は、文字起こしした文章を議事録として整理するときに、考えておきたいことについて書いてみます。
文字起こしが終わっても、議事録は完成していない
文字起こしと議事録は、似ているようで役割が異なります。
文字起こしは、基本的に音声で話された内容を文字として記録する作業です。
一方、議事録には、会議で何が話し合われ、何が決まり、今後どのような対応が必要なのかを確認する役割があります。
例えば、会議中に次のようなやり取りがあったとします。
「この資料、来週までに修正できますか?」
「来週ですか。少し確認が必要ですが、金曜日までなら対応できると思います」
「では、金曜日までにお願いします」
文字起こしでは、こうしたやり取りを発言順に残します。
しかし、議事録では「資料の修正を金曜日までに行うことになった」という内容を、確認しやすい形に整理することが考えられます。
ただし、この例でも注意したい点があります。
誰が修正を担当するのか、どの金曜日なのかが会議で明確になっていなければ、勝手に補ってはいけません。
議事録として読みやすくすることと、会議で確認されていない情報を追加することは別です。
発言を全部残すことが、必ずしも親切とは限らない
会議では、同じ内容について何度も話し合うことがあります。
ある人が意見を述べ、それに対して別の人が質問し、最初の人が説明を加える。
さらに別の人が確認する。
こうしたやり取りは、会議を進めるうえで必要なものです。
ただし、議事録でもすべての発言を同じように並べてしまうと、重要な内容が埋もれてしまうことがあります。
例えば、30分かけて検討した内容について、最終的に「今回は実施せず、次回の会議で再検討する」と決まった場合を考えてみます。
会議の経過を把握することも大切ですが、後から議事録を確認する人にとっては、まずその結論が分かることが重要でしょう。
そのうえで、なぜその結論になったのか、どのような懸念が示されたのかを必要に応じて残します。
もちろん、会議によっては発言の経緯そのものが重要になることもあります。
委員会や審議会などでは、発言者ごとの意見や議論の過程を詳しく記録する必要がある場合もあります。
そのため、単純に発言を削ればよいというわけではありません。
議事録の目的に合わせて、どの程度の詳しさが必要なのかを考えることが大切です。
決定事項と検討中の内容は分けておきたい
議事録を作成するとき、特に注意したいのが「決まったこと」と「まだ決まっていないこと」の区別です。
会議では、さまざまな意見や提案が出されます。
しかし、提案された内容が必ずしも正式に決定されたとは限りません。
例えば、
「次回から新しい運用方法に変更してはどうでしょうか」
という発言があったとします。
この発言だけで「次回から新しい運用方法に変更することが決定した」と議事録に書いてしまうと、会議の内容とは異なる記録になってしまいます。
提案された段階なのか、検討を続けることになったのか、正式に決定したのか。
この違いは、後から議事録を読む人にとって非常に重要です。
また、今後の対応についても同じことがいえます。
「確認する必要がある」という意見が出ただけなのか、担当者と期限を決めて確認することになったのかでは、意味が変わります。
議事録では、こうした違いが伝わるように整理しておきたいところです。
読みやすく整えることと、内容を変えることは違う
文字起こしされた文章には、話し言葉特有の表現が多く含まれます。
「あの」「えっと」「その」といった言葉や、途中で言い直した部分などです。
こうした部分を適切に整理すると、文章は読みやすくなります。
また、一つの発言が長く続いている場合には、意味のまとまりごとに文章を分けることも考えられます。
ただし、文章を整えるときに注意したいのは、発言の意味を変えないことです。
例えば、
「この方法でも対応できるかもしれません」
という発言を、
「この方法で対応できます」
と書き換えてしまうと、発言者の確信の程度が変わってしまいます。
「検討します」を「実施します」に変更することも同様です。
一見すると小さな違いですが、業務上の判断や責任に関わる場合があります。
特に、会議で意見が分かれていた内容や、慎重な判断が必要な事項については、発言のニュアンスを正確に残すことが重要です。
読みやすさを優先するあまり、元の発言よりも強い表現にしてしまわないこと。
これは、議事録を整理するときに意識しておきたい点だと思います。
聞き取れない言葉や不明な情報は、無理に補わない
録音状態によっては、発言が聞き取りにくいことがあります。
複数の人が同時に話していたり、マイクから離れた場所で発言していたりすると、音声を正確に聞き取ることが難しくなります。
また、会社名や人名、専門用語などは、音声だけでは正しい表記を判断できない場合があります。
このようなとき、前後の文脈から推測して書いてしまうことには注意が必要です。
特に人名や数値、金額、日付などは、一文字違うだけでも大きな問題につながることがあります。
判断できない部分は、聞き取り不明として残したり、確認が必要な箇所として示したりする方が適切な場合があります。
また、発言者が特定できない場合も、無理に名前を割り当てるべきではありません。
完成した議事録に不明な部分が残ることを避けたい気持ちはありますが、確認できない情報を確定した内容として記載する方が問題になることもあります。
AIで文字起こしした場合も、最後の確認は必要
AIによる文字起こしは便利ですが、すべての音声を正確に認識できるわけではありません。
特に、専門用語、固有名詞、数字、発言者の区別などは誤りが生じることがあります。
さらに、AIに議事録の要約まで任せた場合には、重要な発言が省略されたり、検討中の内容が決定事項のようにまとめられたりする可能性もあります。
そのため、AIが作成した文章をそのまま完成版として扱うのではなく、必要に応じて元の録音と照合することが大切です。
確認するときには、文章が自然かどうかだけでなく、発言の意味が変わっていないか、決定事項が正しく記載されているか、担当者や期限に誤りがないか、といった点を見ておきたいところです。
また、会議の録音には、個人情報や社外秘の内容が含まれる場合があります。
AIサービスを使用する際には、所属先の規程や情報の取り扱い条件を確認し、利用が認められた方法で処理する必要があります。
便利な道具だからこそ、使い方にも注意したいところです。
最後に
文字起こしができれば、会議で話された内容を文字として残すことができます。
しかし、それだけで読みやすい議事録が完成するとは限りません。
会議で何が決まったのか。どのような内容が検討されたのか。今後、誰が何をする必要があるのか。
そうした情報を、会議の目的に合わせて整理することが大切です。
一方で、読みやすくするために発言の意味を変えたり、確認できない情報を補ったりしてはいけません。
議事録に求められるのは、単に文章が整っていることではなく、会議の内容を正確に確認できることだと思います。
読みやすく整理することと、正確に記録すること。
その両方を意識して、議事録を作成していきたいところです。
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