仕事にも慣れ、任されることも増えた。
家庭や生活も、若い頃とは違う形で落ち着いてきた。
それなのに、ふとしたときに「このままでいいのだろうか」と感じることはありませんか。
大きな不満があるわけではない。今すぐ仕事を辞めたいわけでもない。でも、以前のように目の前の目標だけを追いかけることに、どこか違和感がある。
そんな気持ちを「ぜいたくな悩み」「考えすぎ」と片づけなくてもよいのかもしれません。
成人発達理論という、大人になってからの心の成長を考える理論があります。
名前は少し難しそうですが、考え方は意外と身近です。
■大人の成長は、知識や技術が増えることだけではない
私たちは成長というと、資格を取る、仕事ができるようになる、役職が上がる、といった変化を思い浮かべがちです。
もちろん、それも大切な成長です。
一方、成人発達理論では、物事を見る枠組みそのものが変わることにも注目します。
たとえば、以前は「周囲から評価されること」が仕事を頑張る大きな理由だった人が、あるときから「自分は何を大切にして働きたいのか」を考え始めることがあります。
上司の期待、会社の常識、家族から求められる役割。それらに応えることを大切にしてきたからこそ、実績や信頼を積み重ねてこられた面もあります。
しかし、経験を重ねるうちに、これまで当たり前だと思っていた基準を少し離れたところから眺められるようになることがあります。
「期待に応えることは大切。でも、それだけでいいのだろうか」
「役職や収入だけでなく、自分が納得できる働き方とは何だろう」
こうした問いが生まれるのは、迷いが増えたからだけではありません。自分の人生を、これまでとは違う広さで見始めている可能性があります。
■40代は、いくつもの役割が重なる時期
40代になると、仕事だけを考えて決断することが難しくなります。
職場では責任が増え、家庭では子育てや親のこと、自分自身の健康や体力の変化も気になってきます。
若い頃のように「やりたいなら挑戦すればいい」と単純には割り切れません。
だからこそ、答えがすぐに出ないのは自然なことです。
大切なのは、転職するか、今の会社に残るかという二択を急いで決めることではありません。
まずは、自分が何に引っかかっているのかを丁寧に見ていくことです。
■モヤモヤを整理する3つの問い
よかったら、次の問いを考えてみてください。
1.これまで、誰の期待に応えようとしてきましたか
会社、上司、部下、家族、お客様。期待に応えてきた自分を否定する必要はありません。
まずは、どんな期待を背負ってきたのかを言葉にしてみます。
2.今の自分が、本当に大切にしたいものは何ですか
収入、安定、成長、家族との時間、健康、社会への貢献。
どれか一つに決めなくても構いません。今の自分にとって優先したいものを並べてみます。
3.「正解」ではなく、次に確かめたいことは何ですか
すぐに結論を出す代わりに、小さく確かめられることを探します。
上司に役割の希望を伝える。興味のある仕事について調べる。信頼できる人に話す。生活の中で無理が出ている部分を見直す。
小さな一歩でも、自分が何を大切にしたいのかを知る材料になります。
■迷いは、立ち止まっている証拠とは限らない
40代のモヤモヤは、これまでの生き方が間違っていたというサインではありません。
むしろ、これまで大切にしてきたものを土台にしながら、次は自分なりの基準で人生を選び直そうとしている途中なのかもしれません。
一人で考えていると、仕事、家庭、健康、将来への不安が頭の中で絡まり、同じところを何度も回ってしまうことがあります。
そんなときは、きれいに整理してから相談しなくても大丈夫です。
まとまっていない言葉を話していく中で、「自分はここが気になっていたのか」と見えてくることがあります。
今の仕事を続けるか、環境を変えるか。その答えを押しつけるのではなく、まずは今の気持ちと大切にしたいことを一緒に整理します。
▼40代の仕事・家庭・健康のモヤモヤを整理する30分相談
※成人発達理論には複数の考え方があります。本記事は、心理学者ロバート・キーガンによる「大人になってからも、経験の意味づけ方は変化し得る」という考え方を、日常の言葉で紹介したものです。特定の年齢で全員が同じ変化をする、という意味ではありません。