装置は組めても、動かせる人間がいない。
多くの装置メーカーが今、深刻な壁にぶつかっています。
機械設計の経験者はいても、電気設計を基礎から教えられる指導者が圧倒的に足りないのです。
私は長年機電気設計士として、航空機・自動車部品、半導体関連、巻線…等の装置を一貫して手がけてきました。
その中で見てきたのは、電気設計の属人化に悩み、一人の担当者に負荷が集中し、その人が倒れたら現場が止まってしまうという危うい経営状況です。
電気設計は、制御用機器(キーエンス、三菱、オムロン)の習熟に加え、現場での調整能力も求められます。
若手を育てようにも、社内に指導できる人間がいなければ、個人のやる気・独学に頼るしかなく、結果として現場での不備や手戻りが繰り返されます。
ベテラン技術者が去り行く今の時代、社内だけで全てを完結させるのは限界があります。
外部のアドバイザーや実務を知り尽くした経験者の「知恵」を借り、早期に「社内の標準」を作り上げることが、結果として最も安く、確実に技術を継承する道です。
本書では、指導者不在の現場でいかにして若手を戦力にするか、そして外部の知見をどのように取り入れて組織を安定させるべきか、私の実務経験に基づいた解決策を提示します。
第1章:なぜ、社内で電気設計者が育たないのか
機械設計との学習順序の違いと、陥りやすい挫折
熟練者の「勘」が言語化されず、若手に伝わらない理由
一人のエースに頼り切る組織が抱える経営リスク
第2章:外部アドバイザーが必要とされる本当の理由
社内の人間関係では難しい「技術の標準化」の推進
最新の制御機器に対応し続けるための、効率的な情報収集
納入直前のトラブルを未然に防ぐ「第三者の目」
第3章:最短で若手を戦力化する「育成の仕組み」
構想設計から立ち上げまでを、迷わず進めるための手順書
制御機器メーカー3社に対応できる共通の考え方を教える
失敗を恐れさせないための、現場でのフォロー体制
第4章:装置メーカーが生き残るための組織戦略
属人化を排除し、誰が担当しても同じ品質で出荷できる体制
技術継承を「仕組み」として外注することの費用対効果
10年後の現場を見据えた、機電一体の教育環境作り
第1章:なぜ、社内で電気設計者が育たないのか
装置メーカーの現場で、機械設計者は複数いても「電気設計はあいつ一人だけ」という状況をよく目にします。
なぜ電気の担当者は育ちにくく、属人化しやすいのでしょうか。
その背景には、電気設計特有の習得プロセスの難しさと、組織の構造的な問題があります。
1. 機械設計との学習順序の違いと、陥りやすい挫折
機械設計は、形状が目に見えるため、図面と実物の関係を直感的に理解しやすい側面があります。
一方、電気設計(特に制御プログラム)は、目に見えない信号の流れを頭の中で組み立てなければなりません。
「動けば正解」の罠: 若手が独学でプログラムを組むと、とりあえず動くものは作れます。
しかし、異常時の処理や安全回路が疎かになりがちです。
メーカーごとの壁: キーエンス、三菱、オムロンなど、使う機器によって操作体系が異なります。
基礎が固まっていない時期に複数のメーカーを扱うと、操作を覚えるだけで精一杯になり、設計の本質に辿り着く前に挫折してしまいます。
2. 熟練者の「勘」が言語化されず、若手に伝わない理由
社内にベテランがいたとしても、必ずしも教育がうまくいくとは限りません。
背中を見て覚えろの限界: 熟練者は、過去の失敗経験から「無意識に」トラブルを避ける回路を組みます。
しかし、その理由を理論立てて説明する時間がなく、若手には「なぜその一行が必要なのか」が伝わりません。
忙しすぎる指導者: 腕の良い電気設計者ほど、構想から納入まで一人で抱え込み、複数の案件を掛け持ちしています。
若手の書いたプログラムを隅々まで添削する余裕など、現実的にはありません。
3. 一人のエースに頼り切る組織が抱える経営リスク
「あの人がいれば現場は回る」という状態は、裏を返せば「その人がいなくなれば会社が止まる」という極めて危うい状態です。
ブラックボックス化: 特定の個人にしか分からない独自の書き方で組まれたプログラムは、他人が修正できません。
納入後のメンテナンスや改造のたびに、その一人を現場へ送り出すしかなくなります。
技術の断絶: 指導者が不在のまま、エースが離職や定年を迎えた瞬間、その会社が長年積み上げてきた「制御のノウハウ」はすべて失われます。
こうした状況を打破するには、個人の努力に頼るのではなく、外部の知見を借りてでも「誰でも一定の品質で設計できる仕組み」を組織として構築する必要があります。
第2章:外部アドバイザーが必要とされる本当の理由
社内にベテランがいれば教育は事足りる、と考えがちです。
しかし、実際には身内だからこそ進まない「改革」や「標準化」があります。
外部の目を入れることは、単なる技術習得以上の価値を組織にもたらします。
1. 社内の人間関係では難しい「技術の標準化」の推進
長年、自社のやり方で装置を作ってきた現場では、設計者ごとに独自の「書き方の癖」や「こだわりの手法」が定着しています。
忖度(そんたく)の壁: 若手がベテランの設計に疑問を持っても、社内の上下関係があると言い出しにくいものです。
結果として、非効率な古い手法がそのまま受け継がれてしまいます。
客観的なルール作り: 外部アドバイザーは、しがらみのない立場で「誰が見ても分かりやすい記述ルール」を提案できます。
特定個人の好みに左右されない、組織としての共通言語(標準仕様)を構築するには、第三者の介入が最もスムーズです。
2. 最新の制御機器に対応し続けるための、効率的な情報収集
制御用機器の進化は速く、キーエンス、三菱、オムロンといった各メーカーから次々と新しい機能が発表されます。
情報の偏り: 日々の設計業務に追われる社内の技術者は、慣れ親しんだ古い機種や手法に固執しがちです。
実務に即した最新知見: 多くの現場を渡り歩き、多様な案件をこなしてきた外部アドバイザーは、「どのメーカーのどの機能が、今の課題解決に最適か」を実体験に基づいて助言できます。
これは、カタログスペックだけでは分からない、現場での「枯れた技術(安定した技術)」と「新技術」の使い分けを教えることでもあります。
3. 納入直前のトラブルを未然に防ぐ「第三者の目」
設計者本人は、自分の書いた図面やプログラムのミスにはなかなか気づけません。
思い込みの排除: 「こう動くはずだ」という思い込みが、重大な設計不備を見逃す原因になります。
未然防止の仕組み: 製作に入る前の段階で、外部の視点による設計審査(検図)を行うことで、現場での手戻りを劇的に減らせます。
特に、機械と電気の境界線で起きやすい「干渉」や「信号の受け渡しミス」を、第三者の冷静な目で摘み取ることができます。
4. 教育の「プロ」としての役割
「名選手、名監督にあらず」という言葉通り、設計の腕が良い人が教え上手とは限りません。
体系的な指導: 外部アドバイザーは、実務の勘所を「言語化」して伝える訓練を積んでいます。
若手がどこでつまずきやすいかを熟知しているため、最短距離での成長を促せます。
精神的な支え: 社内に相談相手がいない若手にとって、実務の悩みを利害関係のない専門家に相談できる環境は、離職を防ぐ大きな安心感に繋がります。
第3章:最短で若手を戦力化する「教育と標準化」の手順
1. 制御機器メーカー3社に共通する「考え方」の伝承
電気設計の現場では、キーエンス、三菱、オムロンといった異なるメーカーの機器を扱う必要があります。
若手が混乱するのは、それぞれの操作方法の違いに目を奪われるからです。外部アドバイザーは、操作方法ではなく「制御の組み立て方」という共通の理屈を教えます。
入力信号を受け取り、条件を整理し、出力へつなげるという基本の流れを徹底する。
メーカーが変わっても変わらない「接点」や「命令」の本質を理解させる。
独自の書き方ではなく、誰が見ても理解できる「標準的な書き方」を組織の決まり事にする。
2. 機械設計段階での「電気の割り込み」を仕組み化する
若手電気設計者が苦労するのは、機械図面が出来上がった後に「電気の入る隙間がない」ことに気づくパターンです。
これを防ぐために、設計の初期段階で以下の確認を義務付けます。
センサーの取り付け位置や、検知対象との距離が適切か。
配線を通すための空間(ダクトや穴)が確保されているか。
メンテナンス時に、電気部品に手が届く配置になっているか。 これらを機械設計者と対等に協議できるよう、アドバイザーが立ち会って調整の仕方を指導します。
3. 「現場の立ち上げ」を迷わせない手順書の作成
出張先や納入現場でのトラブルは、精神的な焦りから判断を誤らせます。準備から納入まで、迷わず進めるための手順を型(かた)にします。
事前の入出力確認(IOチェック)を、一人で確実に行うための確認表。
装置が動かないときの「切り分け」の手順(電気の不具合か、機械の調整不足か)。
納入先で仕様変更を求められた際の、正しい応急処置と報告のルール。
4. 外部の目を借りた「設計審査」の実施
社内の人間関係では、つい「いつものやり方」で済ませてしまいがちです。外部アドバイザーが定期的に図面やプログラムを確認することで、以下の効果を狙います。
特定の個人にしか分からない「癖」を排除し、誰もが修正できるプログラムにする。
過去に起きたトラブルが再発しないよう、設計に反映されているか厳しく確認する。
若手が作った成果物に対し、論理的な根拠に基づいた助言を行い、自信をつけさせる。
第4章:装置メーカーが生き残るための組織戦略
設計者が育たない問題を「個人の能力不足」と捉えているうちは、根本的な解決には至りません。
これからは、教育を「仕組み」として外注し、属人化を徹底して排除する経営判断が求められます。
1. 属人化を排除し、誰が担当しても同じ品質で出荷できる体制
「あの人が書いたソフトは、あの人にしか直せない」という状況は、製品としての欠陥に近いリスクです。
共通言語としてのプログラム: 外部アドバイザーの主導により、社内標準の「書き方のルール」を策定します。
キーエンス、三菱、オムロンのどれを使っても、基本的な構造(構成)が統一されていれば、担当者が変わっても即座にメンテナンスが可能です。
設計資産の共通化: 過去の優れた設計を「型(かた)」として登録し、若手がそれを組み合わせて設計できる環境を整えます。
これにより、ゼロから考える時間を削り、ミスが入り込む余地を最小限にします。
2. 技術継承を「仕組み」として外注することの費用対効果
社内のベテランに教育を任せるのは、一見コストがかからないように見えますが、実は最も高価な選択です。
見えない損失の可視化: ベテランが教育に割く時間は、本来彼らが生み出すはずだった「新しい装置の構想」や「難易度の高い案件」の時間を奪っています。
プロによる短期集中育成: 外部アドバイザーは、実務に必要なエッセンスを凝縮して伝えます。
独学で3年かかる習得期間を1年に短縮できれば、その2年分、若手がいち早く収益を生む戦力になるということです。
3. 担当者の離職や不在に動じない「技術のバックアップ」
一人の担当者に頼り切るリスクは、その人の離職だけでなく、病気や急な出張でも表面化します。
外部との継続的なつながり: 日頃から外部アドバイザーに設計内容を共有しておくことで、万が一の際にも「内容を把握している第三者」がバックアップとして機能します。
安心感がもたらす定着率: 「困ったときに頼れる専門家が外にいる」という環境は、プレッシャーの強い電気設計に携わる若手にとって、精神的なセーフティネット(安全網)となり、離職防止に寄与します。
4. 10年後の現場を見据えた、機電一体の教育環境作り
これからの装置メーカーに求められるのは、機械と電気の境界線をなくした「機電一体」の設計能力です。
領域をまたぐ対話の促進: 外部アドバイザーを介して、機械設計者が電気の基礎を学び、電気設計者が機械の構造を深く理解する場を作ります。
変化への即応力: 制御技術の進化(IoTや画像処理など)に遅れないよう、定期的に外部から新しい風を入れることで、組織全体の技術的な代謝を促します。
第5章:外部アドバイザー導入による費用対効果の可視化
1. 現場手戻り費用の削減(直接的な損失回避)
設計不備による現場での追加工や、部品の買い直しにかかる費用は、一度の案件で数十万円から数百万円にのぼることも珍しくありません。
外部の知見を入れることで、以下の損失を未然に防ぎます。
納入先での深夜作業や、度重なる出張による人件費の膨張。
設計ミスによる納期遅延と、それに伴う顧客からの信頼喪失や遅延損害金。
現場での「現物合わせ」による、装置の見栄え(品質)の低下。
2. 教育時間の短縮と効率化(間接的なコスト抑制)
社内のベテランが若手を教える場合、ベテラン自身の設計業務が止まり、組織全体の生産性が落ちます。
これを外注化することで、以下の効果が得られます。
ベテランは本来の「高付加価値な構想設計」に専念できる。
若手は「正解」が分からないまま悩む無駄な時間を排除し、最短ルートで技術を習得できる。
独学による「間違った癖」がつくのを防ぎ、将来の修正コストを抑える。
3. 属人化の解消による経営リスクの低減
「あの人がいないと装置が動かない」という状態は、企業にとって最大の経営リスクです。外部の目を入れることで、技術を組織の資産へと変えます。
特定の個人に依存しない、社内共通の設計標準(ルール)の確立。
誰が担当しても、一定の品質でプログラムや図面が仕上がる体制。
担当者の離職や不在時でも、他の社員や外部が即座にフォローできる環境。
4. 最新技術と「現場の知恵」の融合
装置メーカーが生き残るには、常に新しい制御技術を取り入れる必要がありますが、日々の業務に追われる中で学習時間を確保するのは困難です。
キーエンス、三菱、オムロンといった主要各社の最新機能を、実務に必要な範囲で効率よく取り込める。
他の現場で培われた「失敗しないための工夫」を、自社の設計に反映できる。
まとめ:外部活用は「コスト」ではなく「投資」である
電気設計者の育成を外部に委託することは、単なる教育費ではありません。現場の混乱を未然に防ぎ、社員の負担を減らし、会社の技術力を底上げするための確実な投資です。
一人で悩む若手を救い、組織として強い足腰を作るために、今こそ「外部の知見を取り入れる」という選択肢を検討すべき時期に来ています。
結び:技術を「個人」から「組織」の資産へ
装置メーカーの現場で、たった一人の電気設計者が孤軍奮闘し、疲弊していく姿を何度も見てきました。
また、教える側の不在により、若手が暗闇を歩くような不安の中で設計している現実も知っています。
電気設計は、機械を動かす「命」を吹き込む仕事です。
その重要な技術が、一人の担当者の頭の中にしか存在しないという状況は、会社にとっても、そこで働く個人にとっても、あまりに危うい状態と言わざるを得ません。
私がこれまでの実務で学んだ最も大切なことは、「優れた設計とは、誰が見ても理解でき、誰でも直せるもの」であるということです。
外部アドバイザーの知見を借りることは、単なる「技術の外注」ではありません。
それは、属人化という呪縛から組織を解き放ち、若手を最短で育て上げ、会社の大切な技術を「型(かた)」として残すための賢明な投資です。
キーエンス、三菱、オムロンといった機器を使いこなし、航空機部品や半導体の厳しい現場を渡り歩いてきた私の経験が、貴社の現場に平穏と成長をもたらす一助となれば幸いです。
まずは、社内の設計図面を広げ、「自分以外の人間がこれを見て、10分で意図を理解できるか」を問い直すことから始めてみてください。
一人で悩む若手を救い、組織として強い足腰を作るために、外部の知見を取り入れる勇気を持ってください。
「どこから手をつければいいか分からない」とお悩みの経営層・管理職の皆様へ
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
自社の現状を振り返り、「属人化は解消したいが、何から手をつけるべきか」「うちの若手をどう導けばいいのか」と、具体的な一歩に迷われているかもしれません。
社内の設計ルールをどう統一すべきかアドバイスが欲しい
若手エンジニアのスキルを客観的に評価し、育成計画を立てたい
機電一体の設計体制を整え、現場の手戻りを本気でゼロにしたい
お悩みをまずは一度ご相談ください。