今回は、『論文演習会社法 上巻・下巻 第3版』について書評をしてみようと思います。
1 評価
87点 十分におすすめできます。
私も受験生時代に使用していました。
会社法でA評価を取ることができたのは、この本も大きな理由だったと思います。
2 本書の強み
本書の最大の強みは、①司法試験・予備試験の過去問を教材にしていること、
②実務家による答案例があること、③研究者による解説がついていることで
す。
これだけで買う価値はあります。会社法の演習本で、この3つの要素を備えて
いるものは、おそらくないかと思います。
私は徹底した過去問分析を重視していましたので、何度も何度も本書を読みま
した。
3 良いところ
まず、司法試験・予備試験の過去問を中心に扱っているため、問題の質が高い
です。
また、司法試験・予備試験では、過去に出題された論点が再度出題されること
が多々あります。
例えば、株主総会決議取消しの訴えは会社法における頻出分野であると言えま
す。
そのため、本書で過去問を勉強することは、司法試験・予備試験本番での得点
に直結する可能性が高いです。
加えて、実務家による答案例と研究者による解説がセットになっているため、
法的正確性が一定程度担保されており、安心して読み込むことができるのも魅
力です。
4 よろしくないところ
もっとも、本書には注意点もあります。
第一に、初学者向けではありません。
司法試験・予備試験の問題を教材にしているため、当たり前なのですが、初学
者には難しいです。
一定程度の基礎知識を身に付けた人が、論文試験対策として読むことを想定し
た書籍であるといえます。
第二に、答案例・解説の質にばらつきがあります。
まず、答案例については、典型論点の検討が欠落していたり、事実を十分に拾
い上げられていなかったりするものも散見されます。
もっとも、勁草書房のHPには、「『合格レベル』で慎重に作成された若手実
務家による解答例」という記述がありますし、司法試験は完璧な答案でなくと
も合格可能であることに鑑みると、学習上大きな支障はないと思います。
また、解説ついても、詳細かつ丁寧な解説がなされていると評価できるもの
が多いですが、なかには重要な事項に関する説明がやや簡潔なものにとどまっ
ていたり、読者自身の検討に委ねられていたりする箇所も見受けられます。
複数の執筆担当者によって構成されている書籍である以上、ある程度はやむを
得ない面もあると思われますが、答案例及び解説の質には一定のばらつきがあ
ることに留意しておく必要があるでしょう。
第三に、誤字脱字が多いです。なかには、結論が真逆になってしまう誤字もあ
ります。
5 まとめ
私の評価は、87点/100点です。
かなりの良書です。
特に、会社法の論文対策において、過去問を使いながら、実務家答案と研究者
解説の両方を確認できる点は大きな強みです。
一方で、答案例や解説の質にはばらつきがありますので、本書を「これだけ読
めば完璧な本」と見るべきではありません。
むしろ、条文・判例・出題趣旨・採点実感・基本書と往復しながら使うことで
力を発揮する教材ですし、私もそのように使用していました。