痛みを悪化させる思考パターンとは:慢性腰痛と認知モデルの整理

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コラム
◆ 今回のテーマは『恐怖回避モデルを中心に痛みをどう捉えるか』です。
腰痛をはじめとした痛みが長引き、慢性腰痛として固定化していく背景には、認知面の問題が大きく関わっています。
恐怖回避モデルでは、痛みを「危険かもしれない」と評価する 脅威評価 の段階で、
反芻(繰り返し考える)・拡大視(悪い方向に物事を大きく捉える)・無力感(どうせ良くならないという感覚)
といった認知が強まり、脅威評価がさらに増幅されます。
その結果、恐怖が強くなり、動かさない・避けるといった 回避行動 が増え、
活動量が低下し、痛みが改善しにくい状態が続いてしまいます。
腰痛でもよく見られるような 慢性化の悪循環 がここで形成されます。
この
脅威評価 → 恐怖 → 回避行動 → 活動量の低下
という流れが、恐怖回避モデルの中心です。
◆ 脅威評価を増幅する「反芻・拡大視・無力感」
- 反芻:痛みのことを繰り返し考えてしまい、注意が痛みに固定される
- 拡大視:悪い方向に物事を大きく捉え、「もっと悪くなるかもしれない」「この痛みはよくないものだ」と感じやすくなる
- 無力感:「どうせ良くならない」という感覚が強まり、行動が止まる
これらが組み合わさることで、脅威評価がさらに強まり、回避行動が固定化しやすくなります。
◆ 恐怖回避モデルを軸に、他のモデルを重ねて考える
恐怖回避モデルを“中心”に置いたうえで、
以下の要素を合わせて考えると、患者さんの認知状態が一段階深く見えるようになります。
● 注意バイアス
痛みに注意が向き続けることで脅威評価が上がりやすくなる。
例:
- 「常に痛みがある」と訴える
- 痛みがない時間でも痛みのことを考えてしまう
● 予測の問題(予測符号化)
脳は「予測」に基づいて痛みを作るため、脅威側に偏った予測があると痛みが強まりやすい。
例:
- 「体を動かすと痛いかも」
- 「これ以上曲げると痛くなるかも」
● 自己効力感の問題
「できる」という感覚が低いと、回避行動が固定化しやすい。
例:
- 「痛みがあるときに何をすれば軽減するのかわからない」
- 「自分ではどうにもできない」
● 信念・情動の問題
痛み=危険という信念や、不安・恐怖といった情動が脅威評価を押し上げる。
例:
- 「このまま痛みはよくならないかもしれない」
- 「この痛みは何か重大な問題のサインかもしれない」
● 感作の問題
脅威評価が高い状態が続くと、神経系が過敏になり、痛みが増幅される。
◆ 認知はどのように形成されるのか
ここまで挙げてきた注意バイアス、予測、自己効力感、信念・情動、感作といった要素は、
それぞれが独立して存在しているわけではありません。
これらは 大脳皮質のさまざまな領域で相互に影響し合いながら、
「痛みをどう捉えるか」という認知を形づくっています。
注意が痛みに向けば脅威評価が高まり、
脅威評価が高まれば「もっと悪くなるかも」という予測が強まり、
その予測が「自分ではどうにもできない」という自己効力感の低下につながる。
こうした循環が、慢性腰痛でよく見られる認知のパターンとして現れます。
◆ まとめ:認知面を見ることは、患者の“行動の質”を変える入口になる
理学療法の現場では、どうしても 機能的な評価やアセスメントが優先されやすい と感じます。
もちろんそれは重要で、治療の土台になる部分です。
ただ、今回扱ったような 痛みに対する認知面 に目を向けることで、
患者さんが日常生活の中でどのように物事を捉え、
どのように行動しているのかが、より立体的に見えてきます。
そしてこれは、痛みだけに限った話ではありません。
認知の傾向を理解できると、
患者さんが抱える さまざまな事象への反応や行動パターン にも気づきやすくなります。
つまり、
エビデンスに基づく評価や治療に加えて、
より効果的な指導や関わり方につながる視点が得られる ということです。
今回の内容は、理解しやすいようにできるだけ簡潔にまとめています。
興味があれば、文献での裏付けや、より詳しい理論背景を学んでみるのも良いと思います。
認知の理解が深まるほど、臨床で見える景色が変わっていくはずです。

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