あるWeb制作の相談について考えていたとき、「センスがいい」という評価について立ち止まりました。
Webサイトにとってデザインは重要です。色、写真、余白、文字、動きによって、同じ商品でも受け取られ方は大きく変わります。
ただ、「センスがいい」という一言だけで、事業に合うWebサイトかどうかまで判断できるのでしょうか。
「センスがいい」は誰と誰の評価なのか
あるデザイナーが作ったサイトを、依頼した人が「センスがいい」と感じることがあります。
それは、作る人と依頼する人の感性が一致したという意味では、とても価値のあることです。
一方で、その一致だけを根拠に、商品を買う人にも伝わる、必要な情報を理解できる、問い合わせや購入につながる、とまでは言えません。
100人に見せたとき、100人が同じように「センスがいい」と感じるとは限りません。だからWeb制作では、「好きか嫌いか」と「目的に合っているか」を分けて考える必要があります。
Webサイトには少なくとも三者がいる
Webサイトには、少なくとも三者が関わります。
・依頼する人
・作る人
・実際に見る人、買う人
依頼する人と作る人の二者だけでデザインを決めると、三人目である利用者が抜けることがあります。
依頼者が気に入り、制作者も満足していても、必要としている人が商品の価値を理解できなければ、事業用Webサイトとして十分に機能しているとは限りません。
商品によってデザインの役割は変わる
だからといって、すべてを数字や機能だけで決めればよいわけでもありません。
アート、ファッション、インテリア、工芸品のように、世界観や美しさそのものが購入価値になる商品があります。その場合、写真、色、余白、言葉の温度まで含めた表現が重要です。
一方、専門サービスや業務向けサイトでは、信頼、正確さ、比較しやすさ、問い合わせまでの分かりやすさが強く求められます。
必要なデザインは、制作者の好みではなく、届けるものと相手によって変わります。
先に決めたいのは「誰に、何を、どの価値として」
同じ商品でも、癒やしとして届けるのか、作品として届けるのか、贈り物として届けるのか、空間演出として届けるのかで、適切な見せ方は変わります。
写真の選び方、文字の大きさ、説明する順番、価格の見せ方、購入までの導線も変わります。
デザインを始める前に整理したいのは、次の三つです。
・誰に届けたいのか
・何を価値として届けるのか
・どの順番で理解してもらうのか
ここが曖昧なままでは、見た目が整っていても、何を伝えるサイトなのかが弱くなります。
Webデザインは価値を届く形へ変換する仕事
私は、デザインと戦略を対立させる必要はないと考えています。
デザインが重要ではないのではありません。誰に何を届けるかと接続されて、初めてデザインが十分に力を発揮します。
Webデザインは、制作者のセンスを見せるためだけの場所ではありません。商品の価値を、必要としている人が理解できる形へ変換する仕事です。
だから確認したいのは、「センスがいいか」だけではなく、「この表現は誰に、何を、どのように届けるためのものか」です。
まとめ:クライアントが気に入ることと、顧客に届くことを両立する
クライアントが自分のWebサイトを好きになれることは大切です。作る人の表現力や感性も、Web制作に必要です。
そのうえで、実際に見る人・買う人に商品の価値が届き、事業の目的にも合っているかを確認します。
「センスがいい」を最終回答にせず、「誰にとって、何のために良いのか」まで考える。そこから、事業に合うWebサイトの形が見えてきます。