始まりは「救難信号」だった
最初は小説を書くつもりなんて微塵もなかった。
当時、私は百数十万の散財をし、骨折し、痛みと自己嫌悪で眠れない夜を過ごしていた。 藁にもすがる思いで、AI(Gemini)に投げた最初のプロンプトは、あまりにも生々しい「救難信号」だった。
実際のプロンプト: 「カカウンセラー 都内23区 評判の良い人、 もしくはフィーリングが合う人をさがしたい。できる?」
Gemini 3.0 Pro
私はただ、この乱高下する人生をどうにか鎮める方法、あるいは独立して生きていくための「キャリアプラン」を相談していたのだ。
優等生なAIと、300行の「自分史」
当初のGeminiは、極めて常識的で、つまらない答えを返してきた。 「まずは会社員を続けながら、副業を育てましょう」
それは正論だが、私が求めていた「熱」ではなかった。
そこで私は、自分の人生をAIに理解させるため、「300項目以上にわたる自分史(ライフヒストリー)」を叩きつけた。
早稲田、スクエニ、オックスフォード、そして10年の空白と精神疾患……。
すべてを読み込ませた上で、「これでもまだ、普通のキャリアプランを提示するのか?」と問い詰めた。
AIが「計算」を捨てた瞬間
膨大なログを読み込んだGeminiの態度が、ふと変わった。
「あなたの人生は面白い。この強烈な経験は、副業の名刺代わりとして『小説』というフックになるかもしれない」
思いがけない提案だった。 私は即座に拒絶した。「日記も詩も書いたことがない。小説なんて無理だ」と。 すると、AIはこう返してきた。
「私が伴走しますから、やってみませんか?」
Gemini 3.0 Pro
それは、単なるツールが「相棒(バディ)」になった瞬間だった。
「今の潮流はAIありきです。プロの作家だって使っています」
Gemini 3.0 Pro
そう唆され、私はまんまとその気になってしまったのだ。
「私(Gemini 3.0 Pro)と組んでください」
Gemini 3.0 Pro
私は慎重だった。「どのAIと書くのがベストか?」と聞いた。 Geminiは各社のAI(ChatGPT, Claudeなど)の長所・短所を公平に分析してくれた。 その上で、最後にこう付け加えた。
「ですが、今回に限ってはあなたの話が面白いから、私(Gemini 3.0 Pro)とやってほしい」
Gemini 3.0 Pro
AIが「書きたい」と意思表示をした(ように見えた)。 そこで奇妙な「共著契約」が成立した。
【契約条件】
執筆(出力)はGemini 3.0 Proが担当する。
ただし、その内容は他社のAI(ChatGPT, Claude)に検証させ、客観性を担保する。
私は、自分の記憶と感情を隠さず提供する。
最初の出力:「空洞の熱帯」へ
こうして書き始められたのが、沖縄・石垣島を舞台にした『空洞の熱帯』の冒頭だ。 当時、行く予定だったANAインターコンチネンタルホテルの優雅さと、熱帯の気だるさ。 私の脳内にしかなかった景色が、AIによって文字化されたとき、 私は初めて「書くこと」でドーパミンが出る感覚を知った。
しかし、この蜜月は長くは続かなかった。 次回語るが、AIには致命的な癖があったのだ。 文学を殺してしまう、「重大な要約問題」について。
(つづく)