「書き終わった日」編集後記|第4回

「書き終わった日」編集後記|第4回

記事
コラム
左腕を骨折し、前歯が欠け、唇を七針縫ったまま、すばる文学賞に応募した。

全体のテーマは、虚無感に包まれたものになった。

幸福の話ではない。救いを願ったわけでもない。

世界に向かって喋りたいことがあったわけでもない。

ただ、なぜか今日の夜までに書き終える必要があった。

書いているあいだ中、体は軋んだが、痛みはむしろ都合が良かった。
現実に戻してくれるからだ。

頭が過去に沈むたび、腕と口元の疼きが、現在地点を示してくれた。
小説の中でいくら死にかけても、痛みがある限り、少なくとも自分はまだ生きていた。

締め切り直前の数日は、時間の輪郭が失われた。
朝と夜と締切と痛みだけが交互に訪れ、
何を書き、何を削ったかさえ曖昧だ。

ただ、最後の行だけは覚えている。
あれを書き終えてしまえば、もう少しだけ呼吸が楽になれる気がした。
投函した瞬間、何かが「終わった」というより、
「一旦止まった」という方が近い。

すぐに静けさが戻ってきた。

期待も安堵もなかった。

それでも、机に置かれた紙と傷口の鈍い痛みだけは、確かに残っていた。

熱いコーヒーを淹れた。
カップを持つ手が震えて、少しこぼした。

古いJAZZを低い音量で流した。

部屋の空気が、ようやく自分のものであるように感じられた。

しばらくは、書くことと静かに話すことを続けています。

夜はオンラインサロンを開けています。誰かと会話したい日だけ来てもらえれば十分です。
僕と話したい方はDMを下さい。

次は、少し落ち着いたら新しいものを書きます。

誰も来なくても、また夜に声を出して読もうと思います。




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