【新堀武司】“頼られる”より、“頼りすぎられない”フリーランスでいたい理由

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独立してしばらく経った頃、クライアントから「新堀さんがいないと進まない」と言われたことがある。率直に言って嬉しかった。信頼されている証拠だと思った。けれど同時に、妙な違和感があった。私はいつの間にか、プロジェクトを“回す人”ではなく、“支える人”になっていたのだ。それからというもの、私は「頼られる」よりも「頼りすぎられない」存在でいることを意識するようになった。

メガバンク時代、システムは常に「属人化」と戦っていた。特定の人しか分からない仕組みはリスクだ。誰が休んでも止まらないように、仕組みとドキュメントを整える。それが組織の強さだった。でも人間は矛盾している。誰かに頼られたいし、頼られることで価値を感じる。フリーランスになると、その感情はもっと顕著になる。プロジェクトに深く入り込むほど、「自分がいなきゃ」という錯覚が生まれる。けれど、それが長期的にはチームの弱さにつながると気づいた。

外資系コンサルにいた頃、上司から言われた言葉がある。「あなたの価値は、自分がいなくてもクライアントが自走できる仕組みを残すことだ」。そのときは実感が湧かなかった。だが今になって、その意味がよく分かる。真のプロフェッショナルとは、自分の存在を必要最小限にする人だ。フリーランスという働き方は、一見“自分中心”に見えるが、実は「自分をどう薄めていくか」という戦いでもある。

私は最近、プロジェクトに入るときに必ず最初に聞く。「この仕事のゴールは、私がいなくても回る状態になることですが、それで良いですか?」と。最初は驚かれることもある。でも説明すると、ほとんどのクライアントが納得してくれる。なぜなら、私の役割は“成果物を納めること”ではなく、“再現性を残すこと”だからだ。設計書やマニュアルはもちろん、会議の進め方、意思決定の考え方まで共有する。それができれば、プロジェクトは強くなる。

フリーランスにとって、一番怖いのは“必要とされすぎること”だと思う。仕事が途切れない安心感の裏で、自分がボトルネックになっていく危険がある。誰かに依存されるほど、自由を失っていく。だから私は、あえてクライアントが私を“手放せる”ように支援する。それが、長期的に信頼を築く最も確実な方法だと感じている。

「いなくても困らない人」でいることは、決して存在感を消すことではない。むしろ、自分の知見や考え方をチームに“染み込ませる”ことだ。そうしてチームが自走し始めたとき、私は次の現場へと移る。そのたびに少し寂しさを感じるけれど、それこそがプロとしての報酬だと思う。

“頼られたい”という感情は、優しさと執着が紙一重だ。私はこれからも、頼られすぎない距離を保ちながら、クライアントが自分の力で走り出す瞬間を一緒に見届けていきたい。そう思えるようになったのは、きっとあの違和感を大切にしたからだ。
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