私は普段、表現設計者として働いています。私の仕事を簡単に説明すると、「目的に合わせて・法律などのルールを考慮しながら・文章やデザインを作る」ということになります。
ライターやデザイナーとの違いは、言われたとおりに成果物を作るだけなのか、上流工程である設計段階も見るのか、という点です。
今日は表現設計者の視点から、発注サイドに起こりがちな困りごとの一つである、「想定と違う、使えない成果物を納品されてしまう問題」について書きます。
使えない成果物が納品されてしまう問題
「ちゃんと説明したはずなのに、なぜか仕上がりがイメージと違う。」
「広告を出しても成果が上がらないので、テキストをよく見直してみたらターゲットのニーズに合わない文面だった。」
デザイナーやライターに仕事を依頼したときに、こんな状況になってしまったことはないでしょうか?
実は制作の現場では、こうしたすれ違いは頻繁に起こります。
修正を重ねるうちに方向性が変わってしまったり、完成間際になって「やっぱり違う気がする」と感じたり。こうなると作業をやり直せばやり直すほど、何が正解なのかが、お互いにますます分からなくなってしまいます。
使えない成果物が生まれる原因は「前提のズレ」
こうした場合、多くは「制作者のスキル不足・理解力不足」として認識されます。ですが、表現設計者としてさまざまな案件に関わる中で感じるのは、スキルや理解力とはまったく別の根本原因が潜んでいるケースがとても多い、ということです。
制作がうまく進まなくなるとき、本当のボトルネックになっているのはほとんどの場合、制作を始める前の「前提の共有」というプロセスが抜けていることなのです。
たとえば、バナー広告のデザイン案件であれば、
● 誰に向けたものなのか
● 商材は「物」なのか?「サービス」なのか?
● どこに掲載するものなのか
こうしたものが「前提情報」となります。そして、前提がどうなっているのかによって、どう作るのが正解かが全く変わってしまいます。
そのため、前提が曖昧なまま制作が始まると、作業自体は順調に進んでいても、途中から少しずつ認識のズレが表面化します。そして後工程になればなるほど修正の負担が大きくなり、「やりにくい案件」になってしまいうのです。
本来、「制作」と「前提確認」はセット
本来、ビジネスの場における制作というのは、成果物を作ることと前提を整理することが、必ずセットになるものです。「商品を売りたい」「集客したい」など、経営上の目的なしに制作依頼されることは、ほとんどないからです。
私は制作に入る前段階での質問が多い方だと思いますが、これもクライアント様と同じ景色が見えていないと、ご依頼の目的に合った成果物を提供することが難しくなってしまうからです。
また、最初に前提を共有することで手戻りを減らすことは、制作時間の短縮と、料金を抑えることにもつながります。
特にデザイン案件の場合は、クライアント様も共有すべき情報が何かを把握しにくい面があるため、こちらがきちんとヒアリングすることが非常に重要です。
制作が詰まったときは、前提を確認すると解決するケースが多い
もし、納品された成果物が求めるものと違うと感じたときは、アウトプットそのものを修正する前に、「そもそもどんな前提で進めているのか」を一度立ち止まって確認してみると、解決の糸口が見つかるかもしれません。
私は普段、こうした前提整理も含めて制作を進めています。目に見えにくい工程ですが、実は成果を左右する一番重要な部分だと感じています。
なお、今回触れた「前提のズレ」というテーマについては、表現設計者の視点から、ChatGPTとの対話を観察・整理した内容を、
Kindle書籍『なぜChatGPTは日本人と噛み合わないのか ― AIとの会話から見えてきた「前提」という盲点』
としてまとめました。
AIとのやり取りの話ではありますが、制作の受発注や仕事・プライベートの人間関係にもそのまま当てはまる内容になっています。
もし「なぜ噛み合わないのか」をもう少し深く知りたい方は、そちらも参考になるかもしれません。興味がある方は、Amazonで「小鳥遊文子」と検索すると見つかります。
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