介護BCPをもう一度見直す|利用者・家族・職員を守るための20の確認ポイントシリーズ
介護BCPは、すでに多くの介護施設・介護事業所で策定されています。
2024年度から義務化されたこともあり、
「とりあえず作成した」
「法人本部でまとめて作った」
「外部の専門家に依頼して整えた」
「厚生労働省のひな形を参考に作成した」
「テンプレートを使って完成させた」
という施設も多いのではないでしょうか。
もちろん、介護BCPを策定すること自体は、とても大切です。
災害や感染症が発生したときに、介護サービスをどう継続するのか。
利用者をどう守るのか。
職員の安否をどう確認するのか。
必要な物資や連絡体制をどう確保するのか。
こうしたことを、あらかじめ整理しておくことには大きな意味があります。
しかし、ここで一つ大切な視点があります。
それは、
介護BCPは「作ったら終わり」の書類ではない
ということです。
むしろ、作成したあとにこそ、本当の意味での見直しが必要になります。
## なぜ、介護BCPの見直しが必要なのか
介護BCPは、義務化されたことで一気に整備が進みました。
その一方で、短期間で作成する必要があったため、現場では次のような状態が起きやすくなっています。
・ ひな形をもとに作成したが、現場の実情に合っているか分からない
・法人本部で一括作成したが、各施設の建物や人員体制まで反映できていない
・ 外部に作成を依頼したが、実際の訓練や現場の動きとつながっていない
・ 書類はあるが、職員が内容を十分に理解していない
・ 防火訓練や避難訓練と、BCP訓練が別々になっている
*・夜勤帯や少人数体制で本当に動けるか確認できていない
これらは、どれも珍しいことではありません。
施設が悪いという話ではありません。
むしろ、制度化されたばかりの段階では、多くの施設がまず「策定すること」を優先せざるを得なかったはずです。
だからこそ、次の段階として必要になるのが、
作成した介護BCPを、現場で動く内容に見直すこと
です。
テンプレート型BCPで見落とされやすいこと
介護BCPを作成するとき、ひな形やテンプレートはとても役に立ちます。
何から書けばよいか分からない施設にとって、テンプレートは大切な入口です。
しかし、テンプレートには限界もあります。
なぜなら、介護施設の現場は一つひとつ違うからです。
たとえば、
1 建物の構造
2 居室の配置
3 避難経路
4 階段やスロープの位置
5 利用者のADL
6 車椅子利用者の人数
7 夜勤職員の人数
8 早朝・夜間の職員配置
9 防火管理者や防災担当者の役割
10 法人本部との距離
11 災害時に本部が来られるかどうか
こうした条件は、施設ごとに大きく違います。
そのため、同じテンプレートを使って作成しても、実際に災害が起きたときに「その施設で本当に動けるか」は、別の問題になります。
書類として整っていることと、現場で動けることは同じではありません。
ここに、介護BCPを見直す大きな理由があります。
「BCPがある」だけでは安心できない理由
介護BCPがあることは大切です。
しかし、本当に確認したいのは、
「そのBCPが、災害時に誰の行動をどう支えるのか?」
という点です。
たとえば、災害が発生した直後、現場ではすぐに判断が必要になります。
誰が避難を指示するのか。
誰が119番通報を行うのか。
誰が初期消火を判断するのか。
誰が利用者の移送を指示するのか。
誰が本部や家族へ連絡するのか。
夜勤帯で職員が少ないとき、どこまで対応するのか。
こうした初動対応は、数分単位で判断が求められることがあります。
ところが、介護BCPの中には、災害後の継続や再開については書かれていても、災害直後の初動が十分に整理されていないものもあります。
また、防火訓練や避難訓練では別の流れで動き、BCP訓練では別の流れで確認している場合、職員が災害時に迷ってしまうことがあります。
つまり、
BCPがあるかどうか?
だけでなく、
BCPと初動対応、訓練、現場の役割がつながっているか?
を確認する必要があります。
見直しは「施設を責めるため」ではありません
介護BCPの見直しというと、
「今の計画が間違っていると言われるのではないか」
「外部から指摘されるのは不安」
「職員の負担が増えるのではないか」
と感じる方もいるかもしれません。
しかし、介護BCPの見直しは、施設を責めるために行うものではありません。
目的は、もっと前向きなものです。
利用者を守るため。
家族の安心につなげるため。
職員が災害時に迷わず動けるようにするため。
施設が混乱しないようにするため。
そして、作成したBCPを本当に役立つものに育てるためです。
介護現場の職員は、日々とても忙しい中で利用者を支えています。
その現場に、災害時の判断まで丸投げするようなBCPでは、職員を守ることはできません。
だからこそ、BCPは「利用者を守る計画」であると同時に、「職員を守る計画」でもある必要があります。
最初に確認したい20のポイント
この連載では、介護BCPをもう一度見直すために、次のような確認ポイントを順番に整理していきます。
1. なぜ介護BCPの見直しが必要なのか
2. テンプレート型BCPで見落とされやすいこと
3. 本部作成BCPをそのまま使うと起きやすいズレ
4. 初動対応は誰が指揮するのか
5. 防火防災管理者の役割はBCPに入っているか
6. 防火訓練とBCP訓練はつながっているか
7. 夜勤帯の対応は現実的に設計されているか
8. 利用者の状態に応じた避難動線になっているか
9. 職員が自分の役割を理解できる内容か
10. 連絡体制は実際に使えるものになっているか
11. 物資や備蓄は現場の人数と日数に合っているか
12. 家族への説明や連絡方法は整理されているか
13. BCP発令の基準は明確になっているか
14. 初動から継続対応への引き継ぎは書かれているか
15. 訓練記録が改善につながっているか
16. 書類と現場の動きにズレがないか
17. 職員の負担が増えるだけのBCPになっていないか
18. 外部支援を前提にしすぎていないか
19. 施設ごとのリスクが反映されているか
20. 「動くBCP」として継続的に育てているか
この20の確認ポイントを通じて、介護BCPを少しずつ見直していきます。
一度にすべてを完璧にする必要はありません。
まずは、
「今のBCPは、現場で本当に使えるだろうか?」
と確認することから始めれば十分です。
介護BCPは、見直して初めて育っていく
介護BCPは、完成した瞬間がゴールではありません。
むしろ、完成したあとに、
訓練してみる。
現場で確認してみる。
職員の声を聞いてみる。
夜勤帯で使えるか考えてみる。
家族に説明できるか確認してみる。
防火訓練や避難訓練とつなげてみる。
こうした見直しを重ねることで、少しずつ「動くBCP」に近づいていきます。
大切なのは、立派な書類を作ることではありません。
災害時に、利用者を守れること。
職員が迷わず動けること。
家族に説明できること。
施設として継続できること。
そのために、介護BCPは定期的に見直す必要があります。
まとめ
介護BCPは、策定して終わりではありません。
特に、テンプレートや外部作成、本部一括作成によるBCPでは、書類としては整っていても、現場ごとの実情が十分に反映されていないことがあります。
だからこそ、今必要なのは、
「介護BCPをもう一度見直すこと」
です。
それは、施設を責めるためではありません。
利用者を守るため。
家族の安心につなげるため。
職員を守るため。
そして、施設のBCPを本当に動く計画に育てるためです。
この連載では、介護BCPを見直すための20の確認ポイントを、できるだけ分かりやすくお伝えしていきます。
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また、
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