こんにちは!前嶋拳人です。
昔から、私はコンピュータを扱うことを土いじりに似ていると感じていました。画面の中に広がる世界は、最初は何もないまっさらな地面です。そこに、一行ずつ言葉を並べていく。すると、まるで粘土に指先で触れて形を変えていくように、システムが少しずつ動き出します。
以前は、とても巨大な建造物のようなシステムを扱う場所で働いていました。そこでは、一度固めると動かせないような硬い素材を扱うことが求められていました。間違いが許されない緊張感の中で、崩れないものを作り上げる喜びがありました。
しかし、現在の世界は少し違います。今日作ったものが、明日には別の形になっているかもしれない。まるで湿り気を帯びた粘土のように、常に変化を受け入れながら、最適な形を探り続ける毎日です。目に見える動きの繊細さや、裏側で動く仕組みの複雑さも、すべてはこの粘土細工のような工程の延長線上にあります。
そして、そんな日々の中で、私はいつも栞を挟むように記憶を刻んでいます。うまくいかなかった日の悔しさや、新しいコードが意図した通りに走った瞬間の高揚感。そうした経験の一つひとつが、私の人生という長い物語に挟まれた栞です。
三十代になり、少しだけ振り返る余裕が生まれました。昔の私は、完成させることだけが正解だと思い込んでいました。でも今は、作り上げていく過程そのものが面白いのだと知っています。技術は日々進歩し、新しい道具も次々と生まれますが、根本にあるのは、何もないところから形あるものを作り出すという喜びです。
時に、思った通りの形にならないこともあります。粘土が乾燥してひび割れてしまうように、思い通りにシステムが動かないこともあります。そんな時、私は立ち止まって、これまでの栞を読み返します。あそこで学んだこと、あそこで気づいたこと。それらを繋ぎ合わせると、次に進むべき道がかすかに見えてくるのです。
フリーランスとして一人で仕事をしていると、静かな時間の中で孤独を感じることもあります。しかし、画面の向こうには、私が作った粘土細工を必要としてくれる人がいて、それを使う誰かがいます。そのつながりを想像することで、また指先に力を込めることができるのです。
特別な魔法はありません。ただ、粘土をこねて、自分の物語に栞を挟む。その繰り返しです。十年以上積み重ねてきた経験が、形を変えて誰かの日常に溶け込んでいく。それが今の私の、ささやかな誇りです。形のないものを、確かなものにしていくという仕事に、これからも静かに向き合っていきたいと思っています。