こんにちは!前嶋拳人です。
広大な海に帆を掲げて進む船を想像してみてください。目的地を目指してまっすぐに進むためには、風の向きを読み、波の高さに合わせて舵を切らなければなりません。私の仕事も、どこかそれに似ている気がします。最初は巨大な貨物船に乗る船員として、決められた航路を外れないことに全力を尽くしていました。それが安全で、最も効率的だと教えられていたからです。
けれど、あるとき私は自分の手で小さな帆船を操りたくなりました。もっと遠くへ、まだ誰も見たことのない場所へ行ってみたかったのです。今、私はフリーランスとして一人でその帆船に乗り、デジタルという広大な海を航海しています。そこには決まった航路などなく、自分自身で風を見極め、自分自身の意志で舵を切らなければなりません。
今回、私の中で重要なモチーフとして浮かんだのは、帆です。帆があるからこそ、私たちは風を受け止め、前に進むことができます。私たちの書くコードも、同じような役割を果たしているのではないでしょうか。技術という名の風を捉え、アプリケーションという船を動かすための、しなやかで力強い帆。それを丁寧に張り、調整し続けることこそが、エンジニアとしての私の役目だと思っています。
かつて組織という大きな船の一部だったときは、帆の向きを気にする必要はありませんでした。誰かが操舵室で正しい方角を決め、私はただエンジンの維持に努めていればよかったのです。けれど、今はすべての責任が自分にあります。向かい風が吹けば止まり、追い風が吹けば速度を上げる。その判断の連続が、今の私というエンジニアを形作っています。
三十代になり、少しだけ波の音に敏感になりました。昔はただ速く進むことだけを考えていましたが、今は心地よい風を感じながら進むことの大切さを知っています。技術は常に移り変わり、昨日の追い風が今日は向かい風になることもあるでしょう。それでも、帆を調整する技術さえ持っていれば、どんな風が吹いても前に進み続けることができる。そう信じています。
エンジニアリングという旅には、終わりはありません。目的地にたどり着いたと思っても、水平線の先にはまた別の景色が広がっています。その景色を見るために、私はまた帆を張り直すのです。誰かの困りごとを解決するための風を捉え、自分の技術という帆で、新しい場所へと運んでいく。そんなささやかな航海を、これからも続けていきたいと思っています。
一人で帆船を操ることは、時に孤独かもしれません。しかし、海の上で見上げる空は広く、自分の力で進んでいるという実感は、何にも代えがたい喜びです。これからも、風の声を聴き、波の機嫌を伺いながら、自分だけの航路を開拓し続けます。いつかどこかの海で、また別の航海者と出会うその瞬間まで、私は帆を上げ続けようと思います。