朝露に濡れる青い果実
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ビジネス・マーケティング
こんにちは!前嶋拳人です。
まだ青みの残る果実が、朝露をたっぷりとまとってしずかに枝先で揺れているのを見たことはあるだろうか。まだ熟しきっていないその固い実には、これから長い時間をかけて甘く豊かな果汁を蓄えていくための、みずみずしいエネルギーがぎゅっと詰まっている。手で触れてみるとひんやりとした朝の冷たさが伝わってきて、これから世界が動き出す直前の清らかな静けさを全身で感じることができる。すぐにでも収穫できるような完成された美しさとは違う、未完成だからこその瑞々しいきらめきに、ふと心が奪われてしまう。
会社員として大きな組織のなかに身を置いていた頃の私の仕事は、どちらかというとこの青い果実の成長を見守ることよりも、あらかじめ収穫期を迎え綺麗に箱詰めされた完熟の果物を、一切の傷をつけることなく決まったルートで正確に配送していくようなシステム的な管理に近かったように思う。あらかじめ決められた基準値に従って、すべての商品を均質にコントロールすること。それは社会全体の大きな基盤を支えるうえで欠かせない、確かな安全性と信頼性を証明する誇らしい役割だった。
けれど、いつしかその完璧に管理された流通のなかに身を置くうちに、もっと自分自身の足で泥や朝露を感じられる場所で、その時々の環境や人々の暮らしにしなやかに寄り添うようなものづくりをしてみたいという気持ちが強くなっていった。大きな組織を離れてフリーランスという生き方を選んだとき、それはまさに自分がこの青い果実のように、あらかじめ用意された箱から一歩飛び出し、新しい場所の土と風を吸い込みながら自分の足でしっかりと育っていくような日々の始まりだった。
実際にさまざまな現場でコードを書きながら技術やプロジェクトに向き合っていると、私たちが手掛けるデジタルな仕組みもまた、この果実の育ち方ととてもよく似ていることに気づく。どれほど完璧な設計図を描いたとしても、それを使う人々の現実の暮らしや、日々変化していく環境に合わせなければ、本当の意味でいきた成果にはならない。あらかじめ決められた正解をただ守り続けるのではなく、その時々に起こる変化をしなやかに受け止めながら、目の前の人にとって本当に心地よい形を手探りで磨き上げていくことが大切だと実感している。
守るべき堅実な技術の土台と、外の世界へと開かれた柔軟な心。その両方を大切にしながら日々を重ねていくことで、ものづくりに対する視野はぐっと広がっていった。完璧な正解をあらかじめ固定するのではなく、その場にいる人たちと対話を重ねながら、いま必要とされるあたたかな温度を形にしていくことの面白さを噛り締めている。
今日もどこかの果樹園や仕事場で、だれかが枝先で揺れる小さな実にそっと目を留めていることでしょう。私も自分の中にある静かな軸を大切にしながら、しなやかで風通しのよい一歩をこれからも一歩ずつ重ねていきたいと思います。