土のなかに眠る球根

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こんにちは!前嶋拳人です。

冷たい土の布団に包まれた小さな球根を、冬のあいだじっと見守っていたことはあるでしょうか。一見するとただの固い塊のようにも見えますが、その皮の奥では、春の訪れを静かに待ちわびる確かな命の息吹がひそやかに蓄えられています。外からは何も変化がないように見える静かな時間のなかで、水分や養分を少しずつ吸い上げながら、いつか芽吹く瞬間に向けてじっと準備を整え続けている姿は、どこかひたむきで美しいものです。

会社員として大きな組織のなかに身を置いていた頃の私の仕事は、どちらかというとこの球根を土の中で育てることよりも、あらかじめ綺麗に整えられた花壇に、すでに咲き誇っている花を決められた間隔で正確に並べていくような作業に近かったように思います。どこをとっても均質で、誰が見ても美しい状態を瞬時に作り出すことは、組織全体を支えるうえで欠かせない確かな役割でした。

けれど、いつしかその整えられた花壇の景色から離れて、もっと自分で土を耕し、まだ見ぬ芽が顔を出すまでの長いプロセスそのものに向き合ってみたいという気持ちが強くなっていきました。大きな組織を離れてフリーランスという生き方を選んだとき、それはまさに自分が一粒の球根をそっと土に埋め、その成長を地道に見守っていくような手探りの日々の始まりでした。

実際にさまざまな現場でコードを書きながら技術やプロジェクトに向き合っていると、私たちが手掛けるデジタルな仕組みもまた、この球根の成長過程とよく似ていると感じます。どれほど綺麗に設計図を描いたとしても、それを使う人々の現実の暮らしや、日々変化していく環境に合わせなければ、本当の意味でいきた成果にはなりません。あらかじめ決められた正解を押し付けるのではなく、その時々に起こる変化をしなやかに受け止めながら、目の前の人にとって本当に心地よい形を手探りで磨き上げていくことが大切だと実感しています。

守るべき堅実な技術の土台と、外の世界へと開かれた柔軟な心。その両方を大切にしながら日々を重ねていくことで、ものづくりに対する視野はぐっと広がっていきました。完璧な正解をあらかじめ決めるのではなく、その場にいる人たちと対話を重ねながら、いま必要とされるあたたかな温度を形にしていくことの面白さを噛り締めています。

今日もどこかの庭先や仕事場で、だれかが小さな命の芽吹きをそっと心待ちにしていることでしょう。私も自分の中にある静かな軸を大切にしながら、しなやかで風通しのよい一歩をこれからも一歩ずつ重ねていきたいと思います。
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