その相談は、少し煙草の匂いがした。
もちろん今どき、店の中で煙草を吸える場所は少ない。
それでも、その人の話には、古いバーのカウンターに残った煙のような重さがあった。
「SNSは動かしているんです」
依頼人は言った。
「投稿もしています。ホームページもあります。LINE公式も作りました」
私は黙って聞いていた。
こういう話は、だいたい最初から犯人が見えている。
だが、すぐに言うと人は納得しない。
人間は不思議なもので、遠回りしてたどり着いた答えほどありがたがる。
「それで、問い合わせは?」
私が聞くと、依頼人は少しだけ目を伏せた。
「そこが、あまり来なくて」
雨が窓を叩いていた。
スマホの画面には、LINE公式アカウントが開かれている。
友だちはいる。
配信もしている。
けれど、問い合わせは来ない。
よくある事件だった。
派手な犯人はいない。
ナイフも拳銃も出てこない。
ただ、画面の中に小さな迷路がある。
私はLINEを開いた。
最初のメッセージを読む。
リッチメニューを見る。
投稿からLINEへ入った人の気持ちで、画面を眺める。
「予約したい人は、どこを押せばいいんですか」
「えっと、それはメッセージを送ってもらえれば」
「料金を知りたい人は?」
「それも、聞いてもらえれば」
「場所は?」
「ホームページに載っています」
「相談したい人は?」
「DMでも大丈夫です」
私はスマホを置いた。
事件は解けた。
「お客さんは、聞いてくれません」
依頼人は顔を上げた。
「え?」
「分からないことがあっても、わざわざ聞いてくれる人ばかりじゃないんです」
お客さんは冷たいわけではない。
興味がないわけでもない。
ただ、面倒なだけだ。
予約方法が分からない。
料金が分からない。
相談していいのか分からない。
どこを押せばいいのか分からない。
その小さな迷いが、問い合わせの前に立ちはだかる。
まるで夜道に立つ、名前のない影のように。
LINEをうまく使うというのは、派手な配信をすることではない。
毎日メッセージを送り続けることでもない。
もちろん、キャンペーンを流すことでもない。
本当に大切なのは、お客さんが迷わず次の行動に進める状態を作ることだ。
予約したい人には、予約への入口を。
料金を知りたい人には、料金表を。
場所を確認したい人には、アクセス案内を。
相談したい人には、「ここから相談できます」という一言を。
それだけで、画面の中の霧は少し晴れる。
「でも、全部自動化するのは冷たくないですか」
依頼人はそう言った。
いい質問だった。
こういう質問が出る人は、まだ救いがある。
「全部を自動化する必要はありません」
私は答えた。
「むしろ、人が返した方がいい場面もあります」
初回の相談。
細かい悩み。
不安を抱えている人への返信。
そこには人の言葉が必要だ。
テンプレートだけで済ませると、店の奥から機械音だけが返ってくるような寂しさがある。
だが、営業時間やメニュー、料金、駐車場、場所の案内まで、毎回人が抱える必要はない。
そこはLINEに任せてもいい。
人がやる接客と、LINEが担う案内。
その役割を分ける。
それだけで、運用はずいぶん楽になる。
リッチメニューは、店の入口に置く案内板のようなものだ。
あいさつメッセージは、最初にかける一言だ。
応答メッセージは、夜中でも返事をしてくれる静かな店番だ。
もちろん、そいつは冗談も言わないし、気の利いた世間話もしない。
だが、疲れた顔も見せない。
同じ質問にも、黙って同じ答えを返す。
そこだけは人間より信用できる。
「つまり、LINEは配信する場所じゃないんですね」
依頼人が言った。
私は少しだけ笑った。
「配信する場所でもあります。でも、それだけじゃもったいない」
LINEは、お客さんの迷いを減らす場所になる。
SNSで興味を持った人が、次にどこへ進めばいいのか。
予約したい人が、どこを押せばいいのか。
相談したい人が、何を送ればいいのか。
その流れを整えるだけで、問い合わせまでの距離は変わる。
SNSは入口だ。
LINEは、その先の廊下だ。
廊下が暗ければ、人は戻ってしまう。
明かりをつける。
案内板を置く。
余計な迷路をなくす。
それだけで、人は少し前に進める。
「うちも、LINEをちゃんと整えた方がいいんでしょうか」
依頼人が聞いた。
私は窓の外を見た。
雨はまだ降っていた。
街の灯りが濡れた道路ににじんでいる。
「SNSから問い合わせにつなげたいなら、整えた方がいいです」
私は言った。
「ただ作るだけではなく、使われるLINEにした方がいい」
LINE公式やLステップは、作って終わりではない。
お客さんが迷わず行動できるようにするための仕組みだ。
友だち登録を増やすことだけが目的ではない。
登録した人が、予約する。
料金を見る。
質問を解決する。
相談する。
そこまで進めて、ようやくLINEは仕事をしたと言える。
事件の犯人は、今回も派手ではなかった。
名前は「分かりにくさ」。
そいつは多くのLINEアカウントに潜んでいる。
静かで、目立たず、しかし確実に問い合わせを止めている。
LINEをうまく使うというのは、その犯人を見つけて、ひとつずつ消していくことだ。
もし、SNSは頑張っているのに問い合わせにつながらない。
LINE公式はあるけれど、うまく活用できていない。
予約や相談までの流れを整理したい。
そう感じている方は、一度LINEの導線を見直してみてもいいかもしれません。
LINE公式・Lステップを使って、お客さんが迷わず行動できる流れを整えるお手伝いをしています。
派手な魔法はありません。
ただ、迷いを減らす設計はできます。
そして案外、それが問い合わせへの一番近い道だったりします。