『蛍色メロディーズ -Next Stage-』/オリジナル曲

『蛍色メロディーズ -Next Stage-』/オリジナル曲

コンテンツ
音声・音楽

メインキャラクター

🎸 蛍色メロディーズ ― メンバー公式設定

🩵 星宮ひかり
学年:高校1年生
担当:メインボーカル+作詞
イメージカラー:空色🩵

性格・特徴
物語の主人公

感受性が豊か

アニメ好き

最初は少し自信がない

自分の気持ちを言葉にするのが得意

歌を通して想いを届ける

仲間との出会いによって少しずつ成長

第2部では「先輩」から「仲間を迎える側」へ成長

ビジュアル
黒髪ロング

空色の瞳

空・青空・光のイメージ

ボーカル
明るく真っ直ぐ → 第2部では真っ直ぐ+熱量

第1部では「歌いたい」という気持ちが中心。

第2部では、

「もっと上へ行きたい」

という意志が歌声にも出てくる。

💜 雨宮しずく
学年:高校2年生
担当:リードギター
イメージカラー:紫💜

性格・特徴
ひかりたちの先輩

クール

実力派

アニメ好き

ギターの技術が高い

少し負けず嫌い

ライバル意識が強い

でも根は仲間思い

感情を表に出すのが少し苦手

ビジュアル
ショートボブ

紫系の雰囲気

クールな目元

重要な関係
ひかりとは、

「先輩と後輩」→「音楽仲間」

へ変化。

Black Lilyとの合同ライブでは特にライバル心が爆発🤣

でも第2部終盤では、

「競い合える相手がいるから、もっと上手くなれる」

という考えに変わっていきます。

💛 夏川ほたる
学年:高校1年生
担当:ベース
イメージカラー:蛍光イエロー💛

そして……

一番重要な設定。ほたるは、ほたるです🤣
性格・特徴
ムードメーカー

天然

明るい

人見知りを吹き飛ばす謎のコミュ力

食べることが大好き

お弁当大好き🍱

焼きとうもろこし大好き🌽

ベースを忘れる🤣

走る

笑う

飛ぶ🤣

場の空気を一瞬で変える

深刻な場面でも妙な方向から突破口を作る

ビジュアル
茶髪ショート

蛍光イエロー系

元気いっぱいの表情

ほたるの役割
実は物語上かなり重要です。

ひかり=物語を感じる人

しずく=技術・競争心

レイナ=秩序・現実

ゆい=新しい可能性

そして、

ほたる=「楽しい」を守る人なんです。

🤍 月城レイナ
学年:高校2年生
担当:ドラム
イメージカラー:白🤍

性格・特徴
生徒会

真面目

冷静

しっかり者

ツッコミ担当

実はかなり優しい

メンバーをよく見ている

ほたるの暴走を止める係🤣

ビジュアル
ポニーテール

白を基調としたイメージ

凛とした雰囲気

役割
レイナは「現実を見る人」。

「夢を見ること」と「現実を見ること」を両立させる役ですね。

🩷 新メンバー・ゆい
ゆい
高校1年生
担当:ボーカル
イメージカラー:ピンク🩷

です。

性格・特徴
最初は非常に緊張しやすい

人前でなかなか話せない

蛍色メロディーズに憧れている

特に「音楽を届けること」に強い憧れがある

控えめで柔らかい

でも歌うと印象が変わる

透明感のある声

柔らかな高音

徐々にメンバーへ心を開いていく



曲紹介


この小説から5曲誕生しました。
1. 新しい音 🌟 第2部OP/ゆい加入/ツインボーカル
2. 交わる旋律 🎸 Black Lily/合同ライブ
3.夏祭りPhonk系楽曲🎆 番外編/夏の思い出/ほたるワールド🤣
4. 夏フェスへの切符🔥 オーディション/挑戦/青春ロック
5. 永遠のライバル🌌 第2部ED/友情と成長

第2部 蛍色メロディーズ -Next Stage-

第1章 新しい音 

第1節 音楽室の小さな来訪者

夏休み前の放課後。

窓の外では、セミの声が元気よく響いていた。

音楽室では、蛍色メロディーズの4人がいつものように練習をしている。

「そこ、もう少しリズムを合わせよう」

しずくがギターを弾きながら言った。

「は、はいっ!」

ひかりが慌ててマイクを握り直す。

「ひかり、緊張してる?」

レイナがドラムスティックをくるくる回しながら聞く。

「だって、しずく先輩の目が真剣すぎて…!」

「真剣にやってるだけ」

しずくはクールに答える。

すると、ほたるがベースを抱えたまま大きく手を挙げた。

「はい!私も真剣です!」

「ほたるは何に真剣なの?」

ひかりが笑いながら聞く。

「今日のおやつ!」

「練習に真剣になってください」

レイナが即座にツッコむ。

「えへへ~」

ほたるは悪びれる様子もなく笑った。

その時だった。

コンコン。

音楽室のドアが小さくノックされた。

4人の視線が一斉にドアへ向く。

「誰だろう?」

ひかりが首をかしげる。

「はい、どうぞ」

レイナが返事をすると、ドアがそっと開いた。

そこに立っていたのは、小柄な女の子だった。

肩までの黒髪。

少し大きめの制服。

そして、胸の前でぎゅっと抱えた楽譜。

「え、えっと…」

女の子は小さな声で言った。

「……あの……」

「どうしたの?」

ひかりが優しく声をかける。

しかし、女の子は顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。

「……」

「……」

「……」

沈黙。

ほたるがそっと前に出る。

「大丈夫?」

「ひゃっ!」

女の子がびくっと肩を震わせた。

「ご、ごめんなさい!」

「謝らなくていいよ~!」

ほたるはにこにこしながら言う。

「私はほたる!ベース担当!」

「しずく。ギター」

「ひかりです。ボーカル」

「レイナです。ドラム担当です」

4人が順番に自己紹介をすると、女の子はさらに緊張したようだった。

「あ、あの…私は……」

「うんうん」

「か、風見……」

「風見さん!」

ほたるが元気よく言う。

「か、風見ゆいです……」

「ゆいちゃん!」

ほたるは目を輝かせた。

「かわいい名前!」

「ほたる、いきなり距離が近い」

しずくが呆れたように言う。

「だって、ゆいちゃんだよ?かわいいじゃん!」

「ありがとうございます……」

ゆいは小さく頭を下げた。

「それで、ゆいちゃんは何か用があったの?」

ひかりが聞く。

ゆいはぎゅっと楽譜を握りしめた。

「えっと……その……」

「うん」

「……入部、したくて……」

一瞬、音楽室が静かになった。

そして次の瞬間。

「えええええっ!?」

ほたるが一番大きな声を上げた。

「しーっ!」

レイナが慌てて口元に指を当てる。

「音楽室です」

「ごめんなさい!」

ほたるは小声になった。

「でもでも!入部って、私たちのバンドに?」

ゆいはこくんと頷く。

「はい……蛍色メロディーズに、入りたいです……」

ひかりの目がぱっと輝いた。

「本当に?」

「はい……」

しずくも少し驚いた表情を見せる。

「見学じゃなくて、入部希望?」

「はい……」

レイナはゆいをじっと見つめた。

「楽器は何かできますか?」

ゆいは少し迷ってから答えた。

「歌を……歌うのが好きです……」

「ボーカル!」

ひかりが思わず前に出る。

「私もボーカルだから、すごく嬉しい!」

「ひゃっ!」

ゆいはまたびくっとした。

「ご、ごめん!驚かせちゃった!」

ひかりが慌てて謝る。

すると、ほたるが真剣な顔でゆいを見つめた。

「ゆいちゃん」

「は、はい……」

「緊張してる?」

「す、すごく……」

「大丈夫!」

ほたるは胸を張った。

「私なんて、最初はベースを忘れたから!」

「それは緊張の問題じゃない」

しずくが即座にツッコむ。

「えっ、違うの?」

「違います」

レイナもきっぱり言った。

ゆいは思わず「ふふっ」と笑った。

4人がその声に気づいて、顔を見合わせる。

「笑った!」

ほたるが嬉しそうに言う。

「ゆいちゃん、笑ったよ!」

「え、あっ……」

ゆいは慌てて口を押さえた。

「ご、ごめんなさい……」

「だから謝らなくていいって!」

ほたるが笑う。

ひかりも優しく微笑んだ。

「ゆいちゃん、よかったら今度、一緒に歌ってみない?」

「えっ……」

「無理にとは言わないよ。でも、ゆいちゃんの歌、聴いてみたいな」

ゆいはしばらく黙っていた。

そして、そっと顔を上げる。

「……はい」

小さな声だった。

でも、その返事には確かな勇気が込められていた。

夏の風が、音楽室の窓からふわりと吹き込む。

蛍色メロディーズに、新しい音が訪れようとしていた。


第2節 ほたる式歓迎会

音楽室。

風見ゆいが入部希望を伝えてから、数分後。

まだ少し緊張しているゆいを前に、4人はどう歓迎するか話し合っていた。

「まずは、ゆいちゃんにこの部屋に慣れてもらわないとね」

ひかりが優しく言う。

「そうですね。いきなり歌わせるのは負担が大きいかもしれません」

レイナも頷いた。

「うん。まずは普通に話せるようになればいい」

しずくが言う。

すると、ほたるが勢いよく立ち上がった。

「はいっ!」

「何?」

しずくが警戒するように聞く。

「私、歓迎会をします!」

「歓迎会?」

ひかりが首をかしげる。

「そう!その名も!」

ほたるは両手を大きく広げた。

「ほたる式歓迎会!!」

「名前そのままですね」

レイナが冷静に言う。

「分かりやすいでしょ?」

「分かりやすすぎる」

しずくが呟く。

ゆいは4人のやり取りを見ながら、小さく目を丸くしていた。

「ゆいちゃん!」

ほたるがゆいの前にしゃがみ込む。

「は、はいっ!」

「好きな食べ物は?」

「えっ……」

ゆいは突然の質問に戸惑った。

「た、卵焼きです……」

「よし!」

ほたるが拳を握る。

「卵焼き歓迎会に変更!」

「何が変更されたの?」

ひかりが笑いながら聞く。

「ゆいちゃんの好きなものを中心に歓迎するの!」

「でも、ここ音楽室ですよ」

レイナが言う。

「卵焼きはありません」

「えっ」

ほたるが固まった。

「そ、そんな……」

「そんなにショック受ける?」

しずくが呆れる。

ゆいは思わず「ふふっ」と笑った。

「あっ、また笑った!」

ほたるが嬉しそうに言う。

「ゆいちゃん、笑顔かわいい!」

「ほたる、距離が近い」

しずくがツッコむ。

「だって、笑ってくれると嬉しいんだもん!」

ほたるはにこにこしていた。

ひかりもゆいに微笑みかける。

「ゆいちゃん、緊張しなくて大丈夫だよ。私たち、こんな感じだから」

「こ、こんな感じ……」

ゆいは4人を見渡した。

しずくはクールにギターを抱え、レイナは落ち着いた表情で座っている。

ひかりは優しく微笑み、ほたるは今にも何か面白いことを言い出しそうな顔をしている。

「はい……なんだか、楽しそうです」

「楽しいよ!」

ほたるが即答した。

「毎日楽しい!」

「ほたるは楽しみすぎです」

レイナが言う。

「だって、音楽って楽しいじゃん!」

ほたるはベースを抱きしめた。

「歌って、弾いて、笑って、たまにベース忘れて!」

「その最後はいらない」

しずくが即座にツッコむ。

ゆいはまた笑った。

今度は、前より少し大きな笑い声だった。

「ほら!」

ほたるが得意げに言う。

「ゆいちゃん、もう笑ってる!」

「本当だね」

ひかりが嬉しそうに言った。

レイナも優しく頷く。

「少し慣れてきたみたいですね」

ゆいは頬を赤くしながら、こくんと頷いた。

「はい……皆さんが、優しいので……」

「もちろん!」

ほたるが胸を張る。

「私たちは、蛍色メロディーズだから!」

「どういう意味?」

しずくが聞く。

「えっ、えっと……」

ほたるは少し考えた。

「みんなで光るって意味!」

「今考えたでしょ」

しずくが言う。

「バレた?」

「バレます」

レイナがきっぱり言った。

音楽室に笑い声が広がる。

ゆいはその笑い声を聞きながら、胸の中が少し温かくなるのを感じていた。

最初は、怖かった。

知らない先輩たちのいる音楽室に入るのも、声をかけるのも、全部。

でも今は、不思議と「ここにいたい」と思えた。

その時、ほたるが突然立ち上がった。

「よし!」

「今度は何?」

しずくが聞く。

「ゆいちゃんの緊張を完全に吹き飛ばす作戦を実行します!」

「嫌な予感しかしない」

レイナが呟く。

「大丈夫!」

ほたるは自信満々に言った。

「私が空を飛ぶから!」

「飛びません」

しずくとレイナが同時にツッコんだ。

「えーっ!」

ほたるが不満そうな声を上げる。

ゆいはお腹を抱えて笑っていた。

「ふふふっ……!」

その笑顔を見て、ひかりはそっと思った。

きっと、ゆいちゃんは大丈夫。

この音楽室で、たくさん笑って、たくさん歌って、仲間になっていく。

新しい音が、少しずつ重なり始めていた。



第3節「五人目のハーモニー」

夏休み前。

蝉の声が校舎を包み込む午後。

音楽室の窓から吹き込む風が、譜面をさらりと揺らした。

「今日は……」

ひかりがゆいへ優しく微笑む。

「ゆいちゃんの歌、聴かせてもらえないかな?」

「えっ……!」

ゆいの肩がぴくっと震える。

「む、無理です……。」

「やっぱり……。」

顔を真っ赤にして俯いてしまう。

しずくが優しく笑った。

「大丈夫。」

「誰も審査なんてしない。」

「ただ、一緒に音を楽しみたいだけ。」

レイナも頷く。

「上手い下手じゃありません。」

「私たちは仲間として聴きたいんです。」

ゆいはぎゅっと制服の裾を握る。

「で、でも……。」

その時だった。

ほたるが立ち上がる。

「じゃあ私が先に歌う!」

「え?」

四人が同時に振り返る。

「緊張してる人の前で歌えばいいんだよ!」

「それ誰理論?」

レイナが即座にツッコむ。

「え?」

「違うの?」

「違います。」

「じゃあ踊る!」

「悪化します。」

「じゃあ空飛ぶ!」

「飛びません。」

「飛べたら緊張忘れるよ!」

「ほたるだけです。」

しずくが真顔で返す。

ひかりは笑いをこらえて肩を震わせていた。

「ふふっ……。」

ゆいも思わず吹き出す。

「ふっ……。」

「あっ。」

自分で笑ったことに驚いている。

ほたるが指をさした。

「笑った!」

「ゆいちゃん笑った!」

「任務成功!」

「何の任務ですか。」

レイナが呆れる。

「笑顔回収任務!」

「勝手に始めないでください。」

音楽室が笑いに包まれた。

少しだけ空気が軽くなる。

ひかりがマイクを差し出した。

「今なら……歌えそう?」

ゆいは小さく頷く。

「……少しだけ。」

「うん。」

「ありがとう。」

部屋が静かになる。

蝉の声だけが遠く響いている。

ゆいは深呼吸をひとつ。

目を閉じた。

そして──

小さく歌い始めた。


透き通るような歌声。

柔らかくて。

優しくて。

どこまでも真っ直ぐ。

まるで雨上がりの朝に吹く風。

音楽室の空気が、一瞬で変わった。

誰も動けない。

歌い終わる。

静寂。

……

……

ほたるが一番最初に口を開いた。

「…………。」

「…………。」

「私……。」

「うん?」

「今、天使いた?」

「いた。」

しずくが即答した。

「いるわけありません。」

レイナも反射的に返す。

「いや!」

「いたって!」

「羽見えた!」

「見えてません。」

「白かった!」

「カーテンです。」

「そうかなぁ?」

「そうです。」

ひかりは何も言えなかった。

ただ、ゆいを見つめている。

(この声……。)

(なんて綺麗なんだろう。)

(優しい。)

(透明で。)

(心が軽くなる。)

自然と笑顔になる。

「ゆいちゃん。」

「はい……。」

「一緒に歌いたい。」

ゆいの目が大きく開く。

「……え?」

「この声と。」

「私、一緒に歌いたい。」

「!」

ゆいの目に涙が浮かぶ。

「わ、私なんて……。」

「そんなことない。」

ひかりは首を横に振った。

「このバンドには。」

「ゆいちゃんの声が必要。」

しずくも静かに頷く。

「私もそう思う。」

レイナも微笑む。

「五人になった意味が、今わかりました。」

ほたるは満面の笑みで両手を上げた。

「やったーー!!」

「これで五人バンド!」

「記念に空飛ぼう!!」

「飛びません。」

レイナが即答。

「じゃあジャンプ!」

「それなら許可します。」

「よーし!」

「せーの!」

「「「「「せーの!」」」」」

五人はその場で小さくジャンプした。

ドンッ。

「……。」

「……。」

ほたるが天井を見上げる。

「惜しかった。」

「何がですか。」

「あと三メートル跳べば飛べた。」

「体育館でも無理です。」

全員が笑った。

その笑い声は、夏の風に乗って音楽室の窓から青空へと溶けていった。



第4節「新しい音の始まり」

夏休み初日。

朝から青空が広がっていた。

蝉の声が校庭いっぱいに響いている。

音楽室には、いつもの四人。

……そして。

「し、失礼します……。」

小さな声。

ドアから顔を出したのは、ゆいだった。

「おはよう!」

ひかりが大きく手を振る。

「お、おはようございます……。」

「おっ!」

ほたるが指をさした。

「今日は昨日より三文字多くしゃべった!」

「数えてたの?」

しずくが笑う。

「もちろん!」

「昨日は『はい……。』」

「今日は『おはようございます……。』」

「大進歩!」

レイナが苦笑する。

「観察日記じゃないんですから。」

ゆいも思わず笑った。

「ふふ……。」

ほたるがガッツポーズ。

「また笑った!」

「記録更新!」

「何の記録ですか。」

「笑顔ランキング!」

「順位制なんですか。」

「今一位!」

「参加者一人ですよ。」

また音楽室に笑いが広がる。

ひかりが机の上に一枚の紙を置いた。

「今日はね。」

「みんなに話したいことがあるの。」

ゆいが首を傾げる。

「?」

ひかりは四人を見渡した。

そして、ゆっくり微笑む。

「ゆいちゃん。」

「はい。」

「改めて。」

「蛍色メロディーズへようこそ。」

ゆいの目が丸くなる。

「え……。」

「正式に。」

「今日から私たちの仲間です。」

しずくが拍手する。

パンパン。

レイナも続く。

ほたるは両手を高く上げた。

「五人目ーー!!」

「いらっしゃーーい!!」

ゆいは目を潤ませる。

「私……。」

「本当に……。」

「いいんですか?」

ひかりは迷わず答えた。

「もちろん。」

「私たちがお願いしたいんだから。」

レイナも優しく頷く。

「これからよろしくお願いします。」

しずくは照れくさそうに笑う。

「ギター教えてほしかったらいつでも。」

「……私もまだ勉強中だけど。」

ゆいは何度も頭を下げた。

「よろしくお願いします!」

ほたるが急に手を挙げた。

「はい!」

「質問!」

「どうしました。」

レイナが嫌な予感しかしない顔になる。

「五人になったってことは!」

「うん。」

「フォーメーション増えるよね?」

「まあ……。」

「じゃあ!」

「今すぐ考えよう!」

「早いですね。」

「まず!」

ほたるが床に寝転がる。

「星形!」

「ライブ中に?」

「うん!」

「寝るんですか?」

「寝ないよ!」

「寝転がるだけ!」

「もっとダメです。」

しずくが吹き出す。

「ライブじゃなくて体操。」

「じゃあ円になる!」

「演奏できません。」

「じゃあ三角!」

「一人余ります。」

「じゃあ五角形!」

「誰が真ん中ですか。」

「……。」

ほたるが考え込む。

「空。」

全員

「空?」

「私が飛ぶ。」

「またですか。」

レイナが即ツッコむ。

「五角形の上!」

「立体!」

「ライブじゃなくて芸術作品です。」

ひかりが笑いながら涙を拭いた。

「もう……。」

「ほたるらしいね。」

「えへへ。」

「じゃあ。」

ひかりはゆいへ向き直る。

「私たちらしくいこう。」

「背伸びしないで。」

「笑って。」

「楽しんで。」

「一緒に音を作ろう。」

ゆいは力強く頷いた。

「はい!」

「よろしくお願いします!」

その返事は、初めて会った日の小さな声とは違っていた。

音楽室に、明るく響く。

窓の外では、夏の風がカーテンを揺らしている。

五つの楽器。

五つの笑顔。

そして五人になった

蛍色メロディーズ。

その瞬間――

コンコン。

音楽室のドアがノックされた。

「失礼します。」

見知らぬ女子生徒が顔を出す。

「地区合同ライブの件で、生徒会からお知らせです。」

レイナが立ち上がる。

「合同ライブ……?」

「はい。」

「近隣高校との交流ライブです。」

「参加校の中には……」

女子生徒は資料をめくる。

「Black Lilyの名前もあります。」

音楽室が静まり返る。

ひかり
「……え?」

しずく
「本当に?」

レイナ
「もう会えるんですね。」

ゆい
「Black Lily……?」

ほたるだけが目を輝かせた。

「合同ライブ!」

「お弁当持って行こう!!」

レイナ
「まだそこですか。」

全員が笑う。

窓の外では、一匹の蛍が昼間だというのに、風に乗ってふわりと舞った。

それは、新しい季節の始まりを告げる、小さな光だった。



第2章「交わる旋律」

第1節「再会のステージ」

夏休みも中盤。

照りつける太陽の下、校舎のセミたちは今日も全力で鳴いていた。

音楽室では──

「地区合同ライブのお知らせ!」

レイナが配られた資料を机へ並べる。

「開催日は来月。」

「参加校は六校。」

「各校二曲ずつ演奏。」

「合同演奏も一曲あります。」

ほたるが手を挙げる。

「質問!」

「どうぞ。」

「お弁当ありますか?」

「まだ始まって三十秒です。」

「大事だよ?」

「大事ですが順番があります。」

しずくが笑う。

「ほたるは食べることになると本気だよね。」

「音楽も本気!」

「ご飯も本気!」

「睡眠も本気!」

「全部本気!」

「そこだけはブレませんね。」

レイナが苦笑する。

ひかりは資料をめくっていた。

そして、一枚目を見た瞬間。

「あ……。」

表情が固まる。

そこには大きく書かれていた。

出演校

・桜ヶ丘高校

・青葉学園

・白鷺高校

・……

そして。

Black Lily Academy Band

「……。」

ひかりが固まる。

「本当に……。」

「来るんだ。」

その声は小さかった。

しずくが資料を覗き込む。

「ほんとだ。」

「Black Lily。」

自然と口元が上がる。

「面白くなってきた。」

レイナは冷静に資料を読み進める。

「合同演奏の可能性もありますね。」

「リハーサルは前日。」

「交流会も予定されています。」

ほたるが再び反応した。

「交流会!」

「ほら!」

「ご飯ある!」

「そこなんですね。」

「絶対お弁当!」

「立食かもしれません。」

「じゃあ立って食べる!」

「そういう意味ではありません。」

音楽室に笑いが広がる。

その横で、ゆいは小さく首を傾げた。

「Black Lilyって……。」

ひかりが優しく説明する。

「私たちがずっと憧れてきたバンドなの。」

「演奏も。」

「歌も。」

「全部すごくて。」

しずくが腕を組む。

「でも。」

「今は違う。」

「?」

「追いかけるだけじゃない。」

「同じステージに立つ。」

「それが今の目標。」

ゆいは目を丸くした。

「すごい……。」

ほたるが元気よく言った。

「私は友達になりたい!」

「目的が違います。」

レイナが即座に返す。

「ライバルじゃないの?」

「ライバルにもなりたい!」

「友達にもなりたい!」

「お弁当も食べたい!」

「全部乗せですね。」

しずくが笑う。

その時だった。

ガラガラッ。

音楽室のドアが開く。

「失礼します。」

顧問の先生だった。

「みんな。」

「ちょうど良かった。」

先生は一通の封筒を持っている。

「合同ライブ実行委員会から。」

「メッセージが届いてるよ。」

「メッセージ?」

ひかりが受け取る。

封筒を開く。

中には綺麗な便箋が入っていた。

読み上げる。

『蛍色メロディーズの皆さんへ。

第1部の文化祭ライブ映像を拝見しました。
とても温かく、見ているこちらまで笑顔になれる演奏でした。
当日、お会いできることを楽しみにしています。

― Black Lily』

音楽室が静まり返る。

「え……。」

ひかりの目が潤む。

「見てくれてた……。」

しずくも驚いていた。

「文化祭ライブ……。」

「あの映像を?」

レイナが静かに微笑む。

「認めてもらえたんですね。」

ゆいは嬉しそうに拍手した。

「すごいです!」

ほたるは感動で震えていた。

「うぅ……。」

「ほたる?」

「私……。」

「感動した……。」

「うん。」

「でも一番気になることがある。」

「何ですか。」

「この手紙……。」

「うん。」

「お弁当のお誘いじゃなかった。」

一秒。

静寂。

そして。

「「「「そこですかーーー!!」」」」

四人の声が見事に揃った。

ほたるは首をかしげる。

「え?」

「違った?」

「違います。」

「交流会って書いてあるから。」

「きっとご飯あるよ?」

「食べ物から離れてください。」

レイナが笑いながら肩を落とす。

ひかりは便箋を胸に抱いた。

(憧れだった人たちが。)

(私たちを見てくれていた。)

(同じステージで。)

(今度は胸を張って歌いたい。)

窓の外では、入道雲がゆっくりと広がっていた。

夏はまだ始まったばかり。

そして──

新しい挑戦も、始まったばかりだった。



第2節「お弁当同盟」

合同ライブ当日。

午前中はリハーサル。

午後から本番。

体育館には各校のバンドが集まり、あちこちからギターやドラムの音が聞こえてくる。

「緊張する……。」

ひかりが小さく深呼吸をした。

しずくはギターを調整しながら笑う。

「こういう空気、嫌いじゃない。」

レイナはプログラムを確認している。

「蛍色メロディーズは四番目です。」

「Black Lilyは最後ですね。」

ゆいは周りを見回していた。

「みんな……上手そう……。」

その時だった。

ほたるが立ち上がる。

「よし!」

「決めた!」

レイナが嫌な予感しかしない顔をする。

「……何をですか。」

「行ってくる!」

「どこへ。」

「Black Lily!」

「えっ?」

「お弁当誘ってくる!」

「今ですか!?」

「今しかない!」

「ライブ前ですよ!」

「だからだよ!」

「お腹空くじゃん!」

「その理屈は分かりますけど!」

ほたるはもう走り出していた。

「ほたるー!」

ひかりが慌てて追いかける。

しかし遅かった。

体育館の隅。

黒を基調にした衣装の四人組。

Black Lily。

ほたるは迷いなく近づく。

「こんにちはー!」

四人が振り向く。

「あら?」

「蛍色メロディーズさん?」

リーダーらしき女性が優しく微笑んだ。

ほたるは深々と頭を下げる。

「いつも応援してます!」

「ありがとうございます。」

「今日は!」

「はい?」

「一緒にお弁当食べませんか!」

……

……

……

沈黙。

ひかり

「ほ、ほたる!」

しずく

「早すぎる!」

レイナ

「いきなり何を……。」

ゆい

「ひぇぇぇ……。」

Black Lilyのメンバーは顔を見合わせる。

そして。

クスッ。

一人が吹き出した。

「ふふっ。」

もう一人も笑う。

「初めてです。」

「ライブ前にお弁当に誘われたの。」

リーダーも笑った。

「面白い子ですね。」

ほたるは真剣だった。

「お弁当って仲良くなる最短ルートだよ!」

「そうなんですか?」

「うん!」

「美味しいもの食べると笑顔になる!」

「笑顔になると仲良くなる!」

「仲良くなるとライブも楽しい!」

「完璧!」

レイナが小声で。

「理屈だけ聞くと間違ってない……。」

しずくも頷く。

「否定しづらい……。」

Black Lilyのベーシストが笑う。

「確かに。」

「今日はお弁当持ってきてますよ。」

ほたるの目が輝いた。

「ほんと!?」

「ええ。」

「じゃあ!」

「お弁当同盟結成!」

「同盟?」

「今日から!」

「お弁当友達!」

「新しい言葉ですね。」

Black Lilyのドラム担当が笑う。

「じゃあ。」

「一緒に食べましょうか。」

「やったーー!!」

ほたるがガッツポーズ。

ひかりは頭を抱えた。

「成功しちゃった……。」

レイナはため息をつく。

「予想外です。」

しずくは笑いを堪えている。

「ほたるだからかな。」

やがて中庭。

木陰のベンチに二つのバンドが向かい合って座る。

「いただきます!」

十人の声が重なった。

Black Lilyのリーダーが聞く。

「皆さん、文化祭ライブの時も楽しそうでしたね。」

ひかりは照れ笑い。

「はい。」

「すごく緊張してましたけど……。」

「それ以上に楽しかったです。」

しずくが微笑む。

「楽しんだ者勝ち。」

「そう思ってます。」

Black Lilyのギタリストが頷いた。

「その気持ち。」

「私たちも忘れたくない。」

その横では。

ほたるが幸せそうに卵焼きを食べていた。

「おいしい……。」

Black Lilyのキーボード担当が笑う。

「それ、自分のお弁当ですよ?」

「うん!」

「だからおいしい!」

「そっちですか。」

「でも!」

ほたるは真顔になった。

「みんなで食べるからもっとおいしい!」

その一言に。

一瞬だけ。

空気が静かになった。

Black Lilyのリーダーが優しく笑う。

「……そうですね。」

「ライブも同じ。」

「一人じゃ作れない音があります。」

ひかりはその言葉を胸に刻む。

(そうか。)

(だから私たちは。)

(この五人なんだ。)

その時。

ほたるが突然立ち上がった。

「よし!」

「記念写真!」

「いいですね。」

Black Lilyも笑顔になる。

全員が並ぶ。

カメラを構える先生。

「いきますよー!」

「はい!」

「チーズ!」

カシャッ。

写真が撮られた。

撮影が終わると。

ほたるが一枚の紙を取り出す。

「はい!」

「これ!」

Black Lilyのリーダーが受け取る。

「?」

紙には大きく書かれていた。

お弁当同盟 会員証

第一号
Black Lily

第二号
蛍色メロディーズ

会員特典
『おいしいものは笑顔で食べること』

……

……

Black Lily全員が笑い出した。

「ふふふっ!」

「これは保存します!」

「額に入れたい!」

「伝説ですね!」

レイナは額に手を当てる。

「また伝説を増やしましたね……。」

しずくが肩を震わせる。

「ライバルバンドと。」

「お弁当同盟。」

ひかりは笑いながら空を見上げた。

「これも……。」

「私たちらしいね。」

ゆいも大きく笑う。

「はい!」

夏空には白い入道雲。

ライブ開始まで、あと一時間。

ライバルだったはずの二つのバンドは。

この日だけは、

"お弁当同盟"という、不思議な絆で結ばれていた。



第3節「ぶつかる音」

午後一時。

体育館。

合同ライブのリハーサルが始まった。

照明スタッフが忙しく動き回り、

ドラムのチューニング音が響く。

「次!」

「Black Lilyさん!」

スタッフの声が飛ぶ。

「はい。」

神崎美月が静かに頷いた。

四人はステージへ上がる。

照明が灯る。

そして——

ジャーン……。

ギターが鳴った。

一音。

たった一音。

それだけなのに、

体育館の空気が変わる。

「……。」

ひかりは息を呑んだ。

(やっぱり……。)

(すごい。)

しずくも腕を組んだまま見つめる。

(いい音。)

(悔しいくらい。)

(綺麗。)

ゆいは小さくつぶやく。

「鳥肌……。」

レイナも頷く。

「演奏に無駄がありません。」

Black Lilyの演奏が終わる。

体育館から自然と拍手が起こった。

神崎たちは一礼してステージを降りる。

入れ替わりに。

「蛍色メロディーズ、お願いします!」

「はい!」

ひかりが返事をする。

五人はステージへ。

ほたるがベースを構えた。

神崎が微笑む。

「今日は忘れてませんね。」

ほたるは胸を張る。

「今日は三回確認しました!」

「家を出る前!」

「駅!」

「学校!」

「完璧!」

美月が吹き出した。

「ふふっ。」

「進歩しましたね。」

レイナが苦笑する。

「皆さんのおかげです。」

体育館が少し和む。

「では。」

「お願いします。」

演奏開始。

ギターが鳴る。

ドラムが重なる。

ベースが支える。

歌声が響く。

一曲が終わる。

静かな余韻。

神崎が拍手した。

「素敵でした。」

ひかりは照れ笑い。

「ありがとうございます。」

しかし。

しずくだけは、

まだギターを見つめていた。

その視線に気付いた一人の女性。

Black Lilyのギタリスト。

黒瀬 奏(くろせ かなで)

静かな瞳。

長い黒髪。

言葉は少ない。

しかしギターを持つと別人のような存在感を放つ。

奏が歩み寄る。

「しずくさん。」

「はい。」

「少し。」

「合わせてみませんか?」

「……!」

しずくの目が輝く。

「ぜひ。」

体育館の隅。

二人はアンプを並べる。

周囲のメンバーも自然と集まってきた。

「いきます。」

奏がコードを鳴らす。

しずくも返す。

ジャーン。

ジャーン。

ジャーン。

音が重なる。

二人とも譲らない。

速く。

正確に。

でも。

勝とうとしているのではない。

「……。」

「……。」

言葉はない。

ギターだけが会話をしている。

ひかりは思わず見入っていた。

「すごい……。」

ゆいも目を輝かせる。

「音がお話してるみたい……。」

レイナも静かに頷く。

「ええ。」

「これがライバルなんですね。」

演奏が終わる。

二人は同時に息を吐いた。

奏が少し笑う。

「楽しかった。」

しずくも笑った。

「私も。」

「また。」

「弾きましょう。」

「もちろん。」

握手。

その瞬間だった。

ほたるが拍手しながら駆け寄る。

「すごーーい!」

「感動した!」

「ありがとう。」

奏が微笑む。

「今度。」

ほたるが真顔になる。

「うん?」

「ギター二本で空飛べる?」

……

……

……

奏が固まる。

神崎も固まる。

ひかりは笑いを堪えて震えている。

レイナは天井を見上げた。

「また始まりました。」

しずくが笑いながら答える。

「ギターは飛ぶための道具じゃないよ。」

「えー?」

「二本なら?」

「四本でも無理。」

「十本!」

「増えても無理。」

神崎が肩を震わせながら笑う。

「ふふっ……。」

「ほたるさん。」

「はい!」

「もし飛べたら。」

「うん!」

「私も教えてください。」

「もちろん!」

「一緒に飛ぼう!」

Black Lilyのメンバーまで笑い始める。

レイナが小さくつぶやいた。

「ついに。」

「感染しましたね。」

「何が?」

ひかりが聞く。

「ほたるワールドです。」

「一度入ると。」

「もう戻れません。」

神崎が笑顔で頷く。

「確かに。」

「楽しいですね。」

体育館に、

また笑い声が響いた。

でも。

その笑顔の奥では、

しずくと奏は同じことを思っていた。

(次は。)

(もっといい音を。)

(もっと心を震わせる演奏を。)

ライバルとは、

相手を倒す存在ではない。

相手がいるから、

昨日の自分を超えられる存在。

夏の日差しが体育館へ差し込む。

二人のギターが反射して、

まるで蛍のような光を放っていた。



第4節「同じ空の下で」

夕方。

体育館。

客席は満席だった。

照明がゆっくり落ちる。

ざわめきが静まり返る。

司会の声が響く。

「続きまして!」

「合同ライブ特別ステージ!」

「蛍色メロディーズ!」

「そして!」

「Black Lily!」

大きな拍手。

「行こう。」

神崎美月が微笑む。

「はい!」

ひかりが大きく頷く。

ステージ袖。

五人は円になった。

ひかりが手を差し出す。

「今日も。」

「楽しもう!」

「おー!」

五人の声が重なる。

ほたるはさらに叫ぶ。

「ベース忘れてない!」

レイナが即答する。

「知っています。」

「四回確認しました!」

「それも知っています。」

「今日は完璧!」

「そこは安心しています。」

しずくが吹き出す。

「ライブ前なのに笑わせないで。」

ゆいも肩を震わせている。

「緊張してたの忘れちゃいました。」

レイナが微笑む。

「それが。」

「ほたるです。」

照明が灯る。

ステージへ。

歓声。

「蛍色メロディーズー!」

「Black Lily!」

客席が揺れる。

ひかりがマイクを握る。

「今日は!」

「一緒に楽しみましょう!」

歓声。

イントロ。

ドラム。

ギター。

ベース。

そして歌。

体育館いっぱいに音が広がる。

客席では自然と手拍子が始まる。

しずくは横を見る。

奏。

Black Lilyのギタリスト。

目が合う。

二人とも笑う。

「行くよ。」

「負けない。」

ジャーン!

ギターソロ。

しずく。

奏。

交互にフレーズを重ねる。

昨日より速く。

昨日より綺麗に。

でも。

競い合っているのに、

不思議と笑顔だった。

神崎が歌いながら思う。

(これが。)

(音楽なんだ。)

ひかりも歌いながら感じていた。

(勝ち負けじゃない。)

(一緒に鳴らすから。)

(こんなに楽しい。)

その時。

ほたるが勢いよく前へ出た。

「みんなーー!」

歓声。

「楽しんでるーー!?」

「イェーーー!」

「お弁当食べたーー!?」

……

……

……

一秒。

静寂。

次の瞬間。

会場が大爆笑した。

「ライブ中に聞くこと!?」

「食べたーー!」

「食べたよーー!」

「まだーー!」

あちこちから返事が飛ぶ。

神崎は歌えなくなるほど笑っている。

「ふふっ……!」

奏はギターを弾きながら肩を震わせる。

しずくも笑いながら演奏を続けた。

レイナは小さくため息。

「また伝説です。」

ゆいが笑顔で歌う。

「最高です!」

ひかりは笑いながらマイクを握った。

「みんな!」

「今日は!」

「笑って!」

「歌って!」

「最高の思い出を作ろう!」

大歓声。

サビへ。

全員で歌う。

客席も歌う。

体育館が一つになる。

演奏が終わる。

静寂。

そして。

割れんばかりの拍手。

スタンディングオベーション。

誰からともなく、

「アンコール!」

その声が広がっていく。

「アンコール!」

「アンコール!」

「アンコール!」

ひかりは涙ぐんでいた。

「こんなの……。」

「初めて。」

神崎が隣へ来る。

「おめでとう。」

「ありがとう。」

「素敵なライブだった。」

ひかりは笑う。

「美月さんたちがいたからです。」

神崎は首を振る。

「違う。」

「あなたたちだから。」

「この空気になった。」

その横では。

ほたるが神崎の肩を叩く。

「ね!」

「はい?」

「ライブも楽しかった!」

「ええ。」

「でも!」

「今日一番嬉しかったこと!」

「何ですか?」

「美月さんとお弁当食べられたこと!」

神崎は一瞬きょとんとした。

そして。

声を出して笑った。

「あはははっ!」

「やっぱり。」

「ほたるさんには敵いません。」

「え?」

「音楽でも。」

「笑顔でも。」

「全部ひっくるめて。」

「最高のバンドです。」

その言葉に。

ひかりたちは顔を見合わせる。

しずくが照れながら笑う。

「ライバルに褒められると。」

「嬉しいね。」

レイナも静かに頷く。

「ええ。」

ゆいは満面の笑み。

「私。」

「このバンドに入れて。」

「本当に幸せです。」

ほたるが両手を広げた。

「じゃあ!」

「記念に!」

「最後はみんなで!」

「ジャンプしよう!」

レイナが苦笑する。

「また飛ぶんですか。」

「うん!」

「空は飛べなくても!」

「気持ちは飛べる!」

神崎も笑って手を上げた。

「そのくらいなら。」

「私たちも。」

Black Lilyのメンバーも並ぶ。

客席からカウントが始まる。

「せーの!」

「3!」

「2!」

「1!」

「ジャンプーー!!」

十人が同時に跳ぶ。

その瞬間を、

カメラマンがシャッターに収めた。

夕陽が差し込み、

舞い上がる汗が蛍のように輝く。

その一枚は後に、

合同ライブ史上もっとも笑顔にあふれた写真として、

音楽室に飾られることになる。

ライブが終わり、帰り道。

夕焼けに染まる河川敷を歩きながら、ひかりが空を見上げた。

「同じ空の下で演奏できて、よかった。」

神崎も同じ空を見上げる。

「また会いましょう。」

「次はもっと成長して。」

しずくが笑う。

「その時は、今日以上の音で。」

奏も頷く。

「楽しみにしてる。」

ほたるは元気よく手を振った。

「今度はお弁当二回ねー!」

「約束です。」

神崎が笑顔で返す。

「はい。」

「お弁当同盟、継続ですね。」

「やったーー!」

みんなの笑い声が、夏の夕空へ溶けていく。

ライバルとは、勝ち負けを決める相手ではない。

互いの音を認め合い、笑い合い、ともに高め合う存在。

そうして二つのバンドは、それぞれの夢へ向かって歩き始める。

同じ空の下で。



番外編「夏祭り∞PHONK DAYS」

第1話「浴衣パニック!」

蝉の声が朝から元気よく響く。

校門の前。

「今日から夏休みー!」

ほたるが両手を上げて叫んだ。

「やったぁぁーー!」

ひかりが笑う。

「元気だねぇ。」

しずくはギターケースを肩に掛けながら空を見上げた。

「夏って始まるだけでワクワクする。」

レイナは腕時計を見る。

「皆さん。」

「集合時間の五分前です。」

ゆいは慌てて頭を下げる。

「すみません!」

「私、遅れてないですよね?」

「大丈夫ですよ。」

その時。

ほたるが突然叫ぶ。

「あっ!」

全員が振り向く。

「どうしたの?」

「セミ!」

「うん。」

「元気!」

「そうだね。」

「負けられない!」

「何にですか。」

レイナのツッコミが飛ぶ。

午後。

商店街。

今日は地元の夏祭り。

色とりどりの提灯が風に揺れている。

「みんな浴衣似合うね!」

ひかりは空色の浴衣。

しずくは紫の朝顔柄。

レイナは白地に銀色の流水模様。

ゆいは薄桃色の可愛らしい浴衣。

そして……

「どう?」

ほたるは黄色の浴衣に、大きな向日葵の髪飾り。

「夏ーー!」

本人は満足そうだった。

しずくが笑う。

「ほたるらしい。」

ゆいも嬉しそう。

「すごく似合ってます!」

レイナが一言。

「目立ちますね。」

「やった!」

「褒められた!」

「違います。」

祭り会場へ向かって歩き始める。

カラン……

カラン……

下駄の音が心地いい。

「浴衣って歩くの難しいね。」

ひかりが裾を押さえる。

「最初はね。」

しずくが微笑む。

その瞬間。

ほたるが走り出した。

「焼きそばーー!」

「走らないでください!」

レイナが叫ぶ。

しかし遅い。

カラン!

「あっ。」

「きゃっ!」

ほたるの下駄が少しずれた。

バランスを崩す。

「ほたる!」

ひかりが手を伸ばす。

しずくも支える。

ゆいも慌てる。

レイナが帯を軽くつかんだ。

四人のおかげで、

転ばずに済んだ。

……

……

ほたるは目をぱちぱち。

「助かった!」

レイナはため息をつく。

「だから。」

「走らないでください。」

「でも。」

「焼きそば。」

「逃げません。」

「本当に?」

「焼きそばは逃げません。」

「安心した!」

しずくが吹き出した。

「心配するとこそこ?」

祭りの広場。

屋台がずらりと並んでいる。

「わぁ……。」

ゆいは目を輝かせた。

「すごい……。」

「全部美味しそう!」

ほたるも輝いていた。

「全部食べよう!」

「全部は無理です。」

レイナ即答。

「じゃあ半分!」

「半分でも多いです。」

「三分の一!」

「交渉しないでください。」

ひかりが笑う。

「まず何食べる?」

「焼きそば!」

「予想通り。」

しずくが苦笑する。

焼きそばを買って、

みんなでベンチへ。

「いただきます!」

五人の声が重なる。

「おいしい!」

ゆいが笑顔になる。

「屋台の焼きそばって特別ですね。」

「うん!」

ほたるは口いっぱい。

「幸せ!」

ひかりが見つめる。

「ほたるって。」

「食べてる時が一番幸せそう。」

「えへへ。」

「だって。」

「美味しいものは笑顔になるじゃん。」

レイナが少しだけ笑った。

「それは。」

「否定できません。」

その時。

向こうから聞き覚えのある声。

「こんにちは。」

五人が振り向く。

「美月さん!」

神崎美月だった。

その後ろにはBlack Lilyのメンバー。

「偶然ですね。」

「こんばんは!」

ほたるが元気よく手を振る。

「こんばんは。」

神崎も笑顔で返した。

「皆さんも夏祭りですか?」

「はい!」

「もちろん!」

ほたるは立ち上がる。

「美月さん!」

「はい?」

「屋台同盟!」

「……屋台同盟?」

「今日は!」

「お弁当じゃなくて!」

「屋台!」

神崎は少し考えてから笑った。

「いいですね。」

「今日は屋台同盟で。」

「やったーー!」

ほたるがガッツポーズ。

Black Lilyのメンバーも笑う。

奏が小さくつぶやく。

「また新しい同盟ができた。」

しずくが肩をすくめる。

「ほたるだからね。」

レイナは空を見上げる。

「そのうち。」

「同盟だけで本が一冊できそうです。」

「じゃあ!」

ほたるが元気よく言う。

「次はかき氷!」

「その次はたこ焼き!」

「その次は……」

神崎が笑いながら続ける。

「りんご飴ですか?」

「大正解!」

二人は顔を見合わせて笑った。

夕暮れの空に、提灯の灯りが少しずつともり始める。

祭囃子が聞こえ、浴衣姿の人々が行き交う。

夏休みは始まったばかり。

音楽も、お祭りも、友情も。

この夏はまだまだ、たくさんの思い出が待っている。

そして、このあと――

ほたるが挑むのは、

金魚すくい。

もちろん、その結果は……

誰もが予想できるものだった――。



第2話「屋台グランプリ!」

祭りの灯りが、少しずつ夜の街を彩り始める。

赤い提灯。

浴衣姿の人たち。

遠くから聞こえる祭囃子。

そして――

「次は何食べるー!」

ほたるの声が、今日も元気いっぱい響いていた。

レイナは即座に返す。

「まだ焼きそばを食べたばかりです。」

「デザートは別腹!」

「焼きそばはデザートではありません。」

「じゃあ前菜!」

「もう終わっています。」

ひかりが笑いをこらえる。

「ほたる、今日すごい食欲だね。」

「夏だから!」

「夏ってお腹空く!」

しずくが肩をすくめた。

「まあ、元気なのはいいこと。」

そこへ神崎美月たちBlack Lilyも合流した。

「こんばんは。」

「屋台同盟、再集合ですね。」

「待ってましたー!」

ほたるが両手を広げる。

「本日の目標!」

神崎が興味深そうに尋ねる。

「目標?」

「屋台制覇!」

「全部ですか?」

「全部!」

レイナが静かに首を振る。

「予想通りです。」

最初の勝負は――

金魚すくい。

店のおじさんが笑顔で声をかける。

「一回三百円だよ!」

「やるー!」

ほたるが勢いよくポイを受け取る。

「見てて!」

「金魚さん!」

「待っててね!」

レイナが小さくつぶやく。

「金魚は待っていません。」

ほたるは慎重にポイを水へ。

「そーっと……。」

「そーーっと……。」

「いまだ!」

ポチャン。

破れた。

……

……

「早っ!」

ひかりが思わず声を上げた。

「まだ三秒だよ!?」

しずくは笑いをこらえられない。

「過去最速じゃない?」

ほたるは真剣な顔。

「これは風が悪い。」

レイナが空を見上げる。

「無風です。」

「じゃあ金魚!」

「金魚も悪くありません。」

神崎が肩を震わせる。

「ふふっ……。」

奏も口元を押さえている。

「もう一回!」

二回目。

ポチャン。

一秒。

終了。

「記録更新!」

しずくが拍手する。

「さっきより早い!」

ほたるは胸を張る。

「進化した!」

「退化です。」

レイナ即答。

屋台のおじさんまで吹き出した。

「お嬢ちゃん面白いなぁ!」

すると、そのおじさんが網を一枚差し出した。

「サービス!」

「ありがとう!」

三回目。

ほたるは真剣そのもの。

「今度こそ!」

ゆっくり。

ゆっくり。

金魚を追う。

すると一匹の赤い金魚が、ほたるのポイの上へちょこんと乗った。

「やった!」

その瞬間。

金魚がぴょん!

自分から水へ戻った。

……

……

会場中が笑いに包まれた。

「金魚の方が一枚上手!」

「逃げたー!」

「かわいい!」

ほたるは両手を広げる。

「また遊ぼうねー!」

レイナが苦笑する。

「取る気があったんですよね?」

「もちろん!」

「友達になれた!」

「目的が変わっています。」

その後。

ラムネ。

「かんぱーい!」

五人とBlack Lilyでラムネ瓶を合わせる。

カラン。

涼しげな音が鳴る。

ゆいが嬉しそうに笑った。

「こんな夏祭り、初めてです。」

神崎が優しく微笑む。

「私も。」

「こんなに賑やかなのは初めて。」

その時だった。

ほたるがラムネを飲もうとして――

ビー玉が落ちてこない。

「飲めない!」

ひかりが笑う。

「瓶を少し傾けて。」

「あ!」

ゴクゴク。

「飲めたー!」

「よかったね。」

「ラムネって頭使う!」

レイナが静かに言う。

「少しだけです。」

続いて。

りんご飴。

ほたるが大きくかじる。

「かたーい!」

ガリッ!

その勢いで飴がくるっと回転。

「わっ!」

ほたるの鼻に飴がちょこん。

しずくが吹き出す。

「鼻までりんご飴!」

ゆいは笑いすぎてしゃがみ込む。

「かわいいです!」

神崎まで肩を震わせている。

「写真……撮ってもいいですか?」

「いいよ!」

パシャッ。

その写真は後日、

Black Lilyのグループチャットで、

『夏祭りの奇跡』

という名前で保存されることになる。

祭りも終盤。

境内には盆踊りの音楽が流れ始めた。

「踊る人どうぞー!」

司会の声。

ほたるが振り返る。

「行く?」

「もちろん!」

「えっ。」

「みんなも!」

レイナは嫌な予感しかしない。

「嫌な予感がします。」

神崎が笑った。

「せっかくです。」

「一曲だけ。」

「え?」

「Black Lilyも?」

「参加します。」

奏が静かに頷く。

「楽しそう。」

ひかりも笑顔になる。

「じゃあ!」

「みんなで!」

「盆踊り!」

十人が輪に入る。

見よう見まねで踊り始める。

ほたるは元気いっぱい。

ゆいは少しぎこちない。

しずくは意外と上手。

レイナは正確すぎる。

神崎は優雅。

奏は少し照れながら。

その光景を見た周りの人たちも笑顔になり、輪はどんどん大きくなっていった。

夏祭りの夜。

笑い声と祭囃子が重なり、提灯の灯りが十人を優しく照らしていた。

そして、盆踊りが終わると、神社の実行委員が声をかけてくる。

「皆さん、バンドをやっているんですよね?」

ひかりたちは顔を見合わせる。

「はい。」

実行委員は笑顔で言った。

「実は明日、この神社の特設ステージで演奏してくれるバンドを探しているんです。」

「もしよかったら、出演してみませんか?」

その一言に、十人の表情が輝く。

そしてほたるは――

「出演したら……」

「屋台の焼きそば食べてもいいですか?」

実行委員は大笑いした。

「もちろん!」

「やったーーーー!!」

みんなも笑いながら拍手する。

こうして、夏祭りの偶然は、新しいステージへの招待へとつながっていくのだった。



第3話「祭囃子∞PHONK」

翌日。

夕暮れの神社。

赤い鳥居。

風鈴の音。

石段の両脇には無数の提灯。

境内には特設ステージが組まれていた。

「わぁ……。」

ゆいは目を輝かせる。

「神社でライブなんて初めてです。」

ひかりも空を見上げた。

「夏の匂いがするね。」

しずくはギターケースを下ろす。

「昨日より人、多くない?」

レイナが周囲を見渡す。

「屋台帰りのお客さんもいますね。」

すると。

実行委員のおじさんが駆け寄ってきた。

「来てくれてありがとう!」

「こちらが控室ね!」

「よろしくお願いします!」

全員で頭を下げる。

その横で……

ほたるだけが違う方向を見ていた。

「……。」

「……。」

ひかりが気付く。

「どうしたの?」

ほたるが真剣な顔で指をさす。

「焼きとうもろこし……。」

レイナが即答する。

「ライブが終わってからです。」

「まだ何も言ってないよ?」

「顔に書いてあります。」

「読めるの!?」

「読めます。」

しずくが吹き出した。

「レイナ、ほたる語が分かるようになってる。」

控室。

衣装に着替えた五人。

今日は夏祭り仕様。

ひかりは空色のリボン。

しずくは紫の和柄ストラップ。

レイナは白いヘアアクセサリー。

ゆいは桜色の髪飾り。

そして……

ほたる。

「見て!」

「向日葵のヘアピン!」

「かわいい。」

ゆいが笑顔になる。

「ありがとうございます!」

ほたるは嬉しそうに一回転。

その勢いで……

コツン。

「いたっ。」

鳥居の柱に頭をぶつけた。

「だから回らないでください。」

レイナがため息をつく。

「鳥居さん、ごめんなさい。」

「鳥居に謝るんですか。」

ステージ袖。

太鼓の音が響く。

ドン!

ドン!

ドドン!

司会の声が境内に広がる。

「続きまして!」

「地元高校生バンド!」

「蛍色メロディーズ!」

「そして友情出演!」

「Black Lily!」

拍手が起こる。

「行こう。」

神崎美月が微笑む。

「はい!」

十人はステージへ向かった。

ライトが灯る。

提灯の赤い光。

夜空には一番星。

ひかりがマイクを握る。

「こんばんは!」

「こんばんはー!」

子どもたちの元気な声。

「今日は夏祭りなので!」

「一緒に踊ってください!」

歓声が上がる。

レイナがスティックを構える。

「いきます。」

ドン!

和太鼓。

続いて。

ドゥン……。

808ベース。

「おぉ……!」

客席がどよめく。

さらに。

ピィィーー……

尺八。

シャラン!

三味線。

ジャキーン!!

エレキギター。

そして、

ほたるがベースを鳴らす。

「いくよーー!」

🎵

♪ ワッショイ!ワッショイ!

♪ 響け祭囃子!

♪ 夜空へ飛ばそう!

♪ PHONKの鼓動!

境内の空気が一変した。

子どもたちが飛び跳ねる。

高校生たちは手拍子。

大人たちも自然に笑顔になる。

「なんだこの曲!」

「盆踊りなのにロック!」

「ベースが気持ちいい!」

神崎が笑いながら歌う。

奏がギターを鳴らす。

しずくが応える。

二人の音が夜空へ駆け上がる。

サビ。

ほたるがマイクへ飛び出す。

「みんなー!」

「イェーーー!」

「ワッショイ!」

「ワッショイ!」

「もっと!」

「ワッショイ!」

境内全体が揺れた。

子どもたちまで一緒に跳ねる。

すると……

ほたるが突然言った。

「焼きとうもろこし食べた人ー!」

……

……

一瞬の静寂。

次の瞬間。

「はーーい!!」

「食べたー!」

「二本食べた!」

「今持ってる!」

会場が大爆笑。

神崎は歌えなくなりそうなくらい笑っている。

「ふふっ……!」

奏もギターを弾きながら肩を震わせる。

しずくが笑いながら叫ぶ。

「ライブ中に聞くことじゃない!」

ほたるは満面の笑み。

「おいしいよね!」

客席。

「おいしいーー!」

いつの間にか、

焼きとうもろこしコールが始まっていた。

「焼きとうもろこし!」

「焼きとうもろこし!」

「違います!」

レイナがマイクを握る。

「曲名を覚えてください!」

会場はさらに大笑い。

演奏はクライマックス。

花火が一発。

ドーン!

夜空に大輪の花。

その瞬間。

曲の最後のサビが始まる。

ひかりが歌う。

「この夏は!」

「一度しか来ない!」

ゆい。

「だから!」

「笑って!」

しずく。

「思い切り!」

神崎。

「音を楽しもう!」

そして……

ほたる。

「屋台も楽しもう!」

「そこ!?」

会場総ツッコミ。

最後の一音。

ジャーン!!

演奏終了。

一拍の静寂。

そして……

拍手。

歓声。

指笛。

「アンコール!」

「もう一回!」

「ワッショイ!」

「焼きとうもろこし!」

「だから違います!」

レイナのツッコミで境内が笑いに包まれた。

ライブ終了後。

実行委員のおじさんが興奮気味に駆け寄る。

「最高だったよ!」

「ありがとう!」

「特に……」

「焼きとうもろこし!」

「そこなんですか!?」

全員が声をそろえた。

おじさんは大笑い。

「いやぁ!」

「祭りなんだから!」

「楽しんだもん勝ちだ!」

ひかりは夜空を見上げる。

提灯。

花火。

笑顔。

音楽。

全部が混ざり合って、一つの夏になっていた。

その時、神崎が静かに言う。

「今日のライブ、忘れません。」

ひかりも微笑む。

「私たちもです。」

ほたるは両手いっぱいに屋台の袋を抱えていた。

「帰って反省会!」

レイナが聞く。

「何を食べるんですか?」

「焼きとうもろこし!」

「やっぱり。」

みんなが笑う。

夏祭りの夜は、まだ終わらない。

笑い声は祭囃子と一緒に、夜空へと溶けていった。



第4話「夜空に咲く約束」

神社ライブが終わった。

拍手の余韻が境内に残る。

提灯の灯りがゆらゆら揺れ、

夜風が浴衣の袖を優しく揺らした。

「楽しかったね。」

ひかりが大きく息を吐く。

しずくがギターケースを背負いながら頷いた。

「今までで一番笑ったライブかも。」

「それは間違いありません。」

レイナも珍しく笑っている。

ゆいはまだ興奮が冷めない様子だった。

「みんなで歌うと、こんなに幸せなんですね……。」

その時。

ドーン……。

夜空に最初の花火が咲いた。

「あっ!」

ほたるが空を指さす。

「始まった!」

神社から少し歩いた河川敷。

人々が思い思いの場所に座り、夜空を見上げている。

蛍色メロディーズとBlack Lilyも、芝生の上に並んで腰を下ろした。

誰も何も話さない。

ただ、夜空に咲く花火を見つめる。

ドーン。

パラパラパラ……

赤。

青。

金色。

大輪の花が次々と夜空を彩る。

ゆいが小さくつぶやく。

「きれい……。」

神崎美月も頷いた。

「音楽とは違うけど、似ていますね。」

ひかりが尋ねる。

「似てる?」

「ええ。」

「一瞬だからこそ、心に残る。」

その言葉に、ひかりは静かに微笑んだ。

「ライブも同じですね。」

「はい。」

しずくは奏の隣に座っていた。

「今日はありがとう。」

奏も穏やかに笑う。

「こちらこそ。」

「また一緒に弾こう。」

「もちろん。」

「今度はもっと速いフレーズで。」

「負けない。」

二人は笑って拳を軽く合わせた。

少し離れた場所では、ゆいがラムネを飲んでいる。

「レイナ先輩。」

「はい。」

「私、入部したばかりの頃は、ちゃんとやっていけるか不安でした。」

レイナは静かに聞いている。

「でも。」

「今は毎日が楽しいです。」

「それは良かった。」

「皆さんがいてくれるからです。」

レイナは少し照れたように笑った。

「私たちも。」

「ゆいさんが来てくれて良かったと思っています。」

ゆいの目が少し潤んだ。

「ありがとうございます。」

その頃。

ほたるはというと……

「……。」

「……。」

神崎が気付く。

「どうしました?」

「静かですね。」

ほたるは真剣な顔だった。

「考えてる。」

「何を?」

「花火って。」

「食べられないよね。」

……

……

……

神崎は口元を押さえた。

「そこですか。」

ひかりが吹き出す。

「ほたるらしい!」

しずくは笑い転げる。

「食べ物から離れられない!」

レイナは空を見上げた。

「今日は五分もちました。」

「自己最高記録ですね。」

ゆいまで笑い始めた。

「ふふっ。」

ほたるは首をかしげる。

「だって。」

「綿あめみたいだった。」

神崎はとうとう笑いをこらえきれなくなった。

「あははは!」

「そんな発想、初めて聞きました。」

また一発。

ドーン!

金色の大輪が夜空いっぱいに広がる。

その光が十人の顔を照らした。

ひかりは静かに立ち上がる。

「来年も。」

みんなが振り向く。

「また、この景色を見たい。」

「みんなで。」

神崎が立ち上がる。

「ええ。」

「約束しましょう。」

しずくも続く。

「その時は。」

「もっといい演奏を。」

奏が頷く。

「もっと心に届く音を。」

レイナ。

「もっと成長した私たちで。」

ゆい。

「もっと自信を持って歌える私で。」

みんなの視線が最後にほたるへ向く。

ほたるは少しだけ考えて……

満面の笑みで言った。

「来年は!」

「焼きとうもろこし三本!」

「増えてる!」

全員のツッコミが夜空に響いた。

笑いが落ち着いたあと。

ひかりが手を差し出す。

「約束。」

しずくが重ねる。

レイナ。

ゆい。

ほたる。

神崎。

奏。

Black Lilyの仲間たちも続く。

十人の手が重なった。

「せーの!」

「また来年!」

その瞬間。

夜空いっぱいに特大の花火が咲いた。

ドォォーーン!!

金色の光が降り注ぐ。

その光景は、まるで蛍が夜空一面に舞っているようだった。

ひかりは心の中でそっとつぶやく。

(この夏は終わる。)

(でも。)

(今日の思い出は、きっとずっと輝き続ける。)

夜風が優しく吹き抜ける。

十人の笑顔と、夜空の花火。

その景色は、それぞれの心に「次の夢へ進む勇気」を灯していた。



第5話「夏の終わり、夢の始まり」

夏祭りから数日。

空は少しだけ高くなり、蝉の声にもどこか秋の気配が混じり始めていた。

放課後。

いつもの音楽室。

「失礼しまーす!」

ほたるが勢いよくドアを開ける。

「みんなー!」

「アイス買ってきたよー!」

レイナが苦笑する。

「今日は楽器ではなくアイスなんですね。」

「暑い日はこれ!」

「部費ではありませんよね?」

「自腹!」

「安心しました。」

しずくが笑う。

「相変わらずだね。」

ゆいも嬉しそうに微笑む。

「ありがとうございます、ほたる先輩。」

ひかりは窓を開け、夏風を胸いっぱい吸い込んだ。

「この風も、もうすぐ秋になるんだね。」

五人は丸くなってアイスを食べ始める。

「冷た〜い!」

「頭キーン!」

ほたるが額を押さえる。

「アイスに負けた……。」

「毎年負けていますね。」

レイナの冷静な一言に、みんなが笑った。

その時だった。

コンコン。

音楽室の扉がノックされる。

「失礼します。」

入ってきたのは、音楽顧問の先生だった。

「みんなに話がある。」

五人の表情が引き締まる。

先生は一枚の封筒を机に置いた。

「これは……」

ひかりが手に取る。

表紙には大きく書かれていた。

『全国高校サマーミュージックフェス オーディション開催』

「えっ……。」

ゆいが目を丸くする。

しずくも息をのむ。

「全国……?」

先生は優しく頷いた。

「合同ライブを見ていた関係者から推薦があった。」

音楽室が静まり返る。

「推薦……?」

ほたるがぽかんと口を開ける。

「私たち?」

「そうだ。」

先生は微笑んだ。

「挑戦してみないか?」

誰もすぐには答えられなかった。

全国。

テレビでしか見たことのないような大きな舞台。

夢のような場所。

ひかりは封筒を見つめながらつぶやく。

「私たち……。」

「ここまで来たんだ。」

しずくは静かにギターケースを握る。

「怖い。」

「でも。」

「行きたい。」

レイナが真っ直ぐ前を見る。

「挑戦しなければ、後悔します。」

ゆいも小さく頷いた。

「私も……。」

「皆さんと一緒なら。」

四人の視線が、最後にほたるへ集まる。

ほたるは真剣な顔だった。

珍しく。

誰も何も言わず待つ。

そして……

ほたるがゆっくり立ち上がる。

「全国って……」

「遠い?」

しずくが笑う。

「そこ?」

「いや、大事だけど!」

ほたるは真面目に続ける。

「でも!」

「遠くても!」

「みんなで行くなら!」

「きっと近い!」

音楽室が静かになる。

レイナが少しだけ目を細めた。

「……いい言葉ですね。」

ひかりも優しく笑う。

「うん。」

「一人なら遠い夢でも。」

「五人なら届く気がする。」

ゆいの瞳が輝く。

「はい!」

その日の帰り道。

夕焼けに染まる坂道を、五人は並んで歩いていた。

「夏祭り、楽しかったね。」

「うん。」

「屋台も。」

「ライブも。」

「花火も。」

「全部。」

ほたるが突然立ち止まる。

「ねえ!」

「最後に一つだけ!」

レイナが振り向く。

「何ですか?」

ほたるは少し照れくさそうに笑った。

「みんなと出会えて良かった。」

一瞬、静かな風が吹いた。

ひかりは微笑みながら答える。

「私も。」

しずく。

「もちろん。」

レイナ。

「同じ気持ちです。」

ゆい。

「私もです!」

五人は顔を見合わせ、笑い合った。

駅前の交差点。

それぞれ帰る道が違う。

「また明日!」

「またね!」

「気を付けて!」

「バイバーイ!」

ほたるが大きく手を振る。

歩き出した、その瞬間。

「あーーーーーっ!!」

全員が振り向く。

「どうしたの!?」

ほたるは青ざめた顔で叫ぶ。

「アイス!」

「冷凍庫に忘れた!!」

……

……

……

レイナが空を見上げる。

「最後までほたるでしたね。」

しずくは笑い転げる。

「締まらないなぁ!」

ひかりも涙が出るほど笑っている。

ゆいはお腹を抱えてしゃがみ込んでしまった。

五人の笑い声は、夕暮れの街へ響いていく。

その夜。

ひかりは部屋で新しいノートを開いた。

一ページ目に書いた言葉。

『第3章 夏フェスへの切符』

その文字の横に、小さく蛍を一匹描く。

窓の外では、本物の蛍がふわりと光り、夏の終わりを優しく知らせていた。

ひかりはペンを握り直し、小さくつぶやく。

「次は、もっと大きな夢へ。」

ページが静かにめくられる。

五人の物語は、まだ始まったばかりだった。



第3章「夏フェスへの切符」【秋】

第1節「届いた募集要項」

九月。

朝夕の風が少しだけ涼しくなり、校庭の木々もほんのり色づき始めていた。

放課後。

音楽室では今日も五人の音が重なっている。

ジャーン……

「そこ!」

しずくが演奏を止めた。

「ひかり、サビに入る前、一拍ためてみて。」

「こう?」

ひかりがもう一度歌い始める。

「うん、それ!」

「前より気持ちが伝わる。」

レイナも頷く。

「ドラムも合わせます。」

ゆいは楽しそうに二人を見ていた。

「みんな、本当にすごいなぁ……。」

ほたるがベースを抱えながら笑う。

「ゆいちゃんもすごいよ!」

「昨日より百倍うまい!」

ゆいは照れながら笑った。

「ありがとうございます……ほたるちゃん。」

ほたるは一瞬止まる。

「……。」

「ちゃん?」

ゆいは慌てた。

「あっ、ご、ごめん!」

「今まで『ほたる先輩』って呼んでたから……。」

ほたるはにっこり笑う。

「ううん!」

「同級生だもん!」

「『ほたるちゃん』うれしい!」

ひかりも笑う。

「私も『ひかりちゃん』でいいよ。」

ゆいは少し照れながら頷いた。

「……うん。」

「ひかりちゃん。」

「えへへ。」

二人は顔を見合わせて笑った。

しずくが腕を組む。

「青春だねぇ。」

レイナが静かに微笑む。

「いい変化です。」

その時。

音楽室のドアが勢いよく開いた。

ガラッ!

「みんな!」

顧問の先生が一枚のポスターを持っている。

「これを見て。」

ひかりが受け取る。

そこには大きく書かれていた。

『全国高校生バンドフェス2026』

「……!」

ゆいが目を丸くする。

「全国?」

先生は頷く。

「高校生だけの全国大会だ。」

「書類審査。」

「動画審査。」

「そして本選ライブ。」

しずくの目が輝いた。

「本選……。」

レイナは真剣な表情になる。

「かなり大きな大会ですね。」

先生は続ける。

「優勝バンドには、プロミュージシャンとの共演権。」

「さらに音楽フェス出演。」

音楽室が静まり返る。

ほたるだけが首をかしげた。

「先生。」

「なんだ?」

「優勝したら……」

みんながほたるを見る。

「お弁当出ますか?」

……

……

……

先生まで吹き出した。

「あははは!」

「そこか!」

しずくが机を叩く。

「ぶれない!」

レイナは額に手を当てる。

「全国大会でも食べ物ですか……。」

ひかりは笑いながら涙をぬぐった。

「ほたるらしい。」

先生も笑いながら答える。

「去年はお弁当が出たらしいぞ。」

「やったーーーーー!!」

ほたるがベースを抱えたまま飛び跳ねた。

「全国行く!」

「目的が違う!」

全員のツッコミが重なり、音楽室は笑い声に包まれた。

笑いが落ち着いたあと。

先生は真剣な表情になる。

「でも。」

「全国は甘くない。」

「応募は数百組。」

「本選へ進めるのは十組ほどだ。」

音楽室の空気が変わる。

ひかりは募集要項をじっと見つめた。

「……。」

「怖い。」

小さく漏れた本音。

しずくが隣へ立つ。

「私も。」

「でも。」

「挑戦しなかったら、もっと後悔する。」

レイナも続く。

「勝ち負けだけではありません。」

「挑戦した経験は必ず次につながります。」

ゆいは少し不安そうに俯いた。

「私……。」

「まだ入部したばかりなのに。」

ひかりが優しく肩に手を置く。

「ゆいちゃん。」

「一人で出るんじゃないよ。」

「五人で出るんだから。」

ゆいは顔を上げる。

「……うん。」

「ありがとう、ひかりちゃん。」

その時。

部屋の隅で静かにベースを磨いていたほたるが立ち上がる。

「ねぇ。」

みんなが振り向く。

「全国ってさ。」

「知らない人がいっぱい来るんだよね?」

「そうだね。」

「じゃあ。」

ほたるは満面の笑みで言った。

「友達いっぱいできるね!」

一瞬、静まり返る。

そして。

ひかりが笑った。

「そうだね。」

しずくも笑う。

「その考え方、好き。」

レイナも穏やかに頷く。

「勝敗だけではありませんね。」

ゆいは目を輝かせる。

「私も……。」

「たくさん友達作りたい!」

ほたるはガッツポーズ。

「決まり!」

「全国で!」

「お弁当食べながら友達百人!」

「またお弁当!」

「百人は多すぎ!」

「まずオーディションです!」

ツッコミが三方向から飛び、音楽室は再び笑い声に包まれた。

夕暮れ。

窓の外では赤とんぼがゆっくり空を横切っていく。

ひかりは募集要項をカバンへしまい、静かに空を見上げた。

(文化祭のステージより、もっと大きな舞台。)

(きっと簡単じゃない。)

(でも——。)

隣を見ると、笑い合う四人の姿があった。

ほたるは何やら真剣な顔でメモを書いている。

しずくがのぞき込む。

「何書いてるの?」

ほたるは誇らしげにノートを見せた。

そこには大きく、

『全国大会で食べたいものリスト①』

と書かれていた。

一番上には。

🌽 焼きとうもろこし(もし売ってたら)

「まだ大会始まってないよ!」

音楽室に今日一番の笑い声が響いた。



第2節「初めての壁」

十月。

秋風が校舎の窓を優しく揺らしていた。

放課後。

音楽室には珍しく笑い声がない。

ジャーン……

演奏が終わる。

静寂。

誰も口を開かなかった。

しずくがゆっくりギターを下ろす。

「……違う。」

ひかりも頷く。

「うん。」

レイナが譜面を閉じる。

「演奏は間違っていません。」

「ですが。」

「心が揃っていません。」

ゆいは申し訳なさそうに俯いた。

「ごめんなさい……。」

「私が遅れて……。」

ひかりは首を振る。

「違うよ。」

「誰か一人のせいじゃない。」

しずくがため息をつく。

「全国を目指すって、こういうことなんだね。」

その日から。

五人は毎日遅くまで練習した。

テンポ。

ハーモニー。

表情。

呼吸。

少しでもズレると、もう一度。

「もう一回。」

「はい!」

「もう一回!」

「はい!」

何度も。

何度も。

何度も。

数日後。

ひかりはノートを閉じた。

「ダメだ……。」

「歌詞に気持ちは込めてる。」

「でも。」

「何か足りない。」

しずくもギターを見つめる。

「ソロは弾ける。」

「でも、伝わらない。」

レイナはスティックを握ったまま呟く。

「リズムは正確です。」

「なのに。」

「熱が届かない。」

ゆいも小さく言った。

「私……。」

「みんなに追いつこうって思いすぎて。」

「笑えてない。」

音楽室が静かになる。

その空気を見ていたほたる。

今日は珍しく黙っている。

ベースを抱えたまま窓の外を見ていた。

ひかりが声をかける。

「ほたる?」

「どうしたの?」

「……。」

「考えてる。」

しずくが笑う。

「珍しい。」

「何考えてるの?」

ほたるは真面目な顔で答えた。

「最近さ。」

「みんな。」

「笑ってない。」

その一言に、四人はハッとした。

ほたるは続ける。

「前は。」

「間違えても笑ってた。」

「転んでも笑ってた。」

「ベース忘れても笑ってた。」

しずくが吹き出す。

「それは忘れちゃダメ!」

レイナも笑う。

「伝説ですから。」

ほたるは首をかしげる。

「でも。」

「最近は。」

「上手に弾こう。」

「失敗しないように。」

「ばっかり考えてる。」

静かな時間が流れる。

ひかりがゆっくり呟く。

「……そうか。」

「私。」

「審査員ばかり見てた。」

「お客さんじゃなくて。」

しずくも苦笑した。

「勝とう勝とうって。」

「ギターと勝負してた。」

レイナが小さく頷く。

「私は正確さばかり追いかけていました。」

ゆいも照れ笑い。

「私は間違えないことしか考えてなかった……。」

ほたるは満面の笑み。

「だから!」

「今日の練習!」

「禁止!」

「え?」

「何を?」

ほたるは指を一本立てた。

「『間違えちゃダメ』禁止!」

しずくが首をかしげる。

「じゃあ?」

「『楽しもう!』だけ!」

十分後。

「じゃあ行くよ!」

「せーの!」

ジャーン!!

ひかりが歌う。

笑顔で。

しずくが身体を揺らす。

レイナも自然に笑っている。

ゆいも思い切り声を出した。

そして。

ほたるは――

ノリノリで弾きながら。

「いぇーーーい!」

ぴょん!

ジャンプ!

「飛んだ!」

「また飛んだ!」

「今回は普通のジャンプ!」

「安心しました!」

全員が笑う。

演奏も止まらない。

その笑い声が、そのまま音になっていく。

曲が終わる。

シーン……

誰も話さない。

その代わり。

五人とも笑っていた。

その時。

音楽室のドアが少し開く。

顧問の先生だった。

「……。」

何も言わず最後まで聞いていたらしい。

先生は静かに拍手する。

パチ。

パチパチ。

「今の演奏だ。」

「え?」

「技術は前回より少し荒い。」

五人が顔を見合わせる。

先生は優しく笑った。

「でも。」

「今日初めて。」

「五人全員が楽しそうだった。」

「音楽は。」

「心で聴く人もいる。」

「その笑顔は、演奏以上に届く。」

ひかりの目が少し潤む。

「ありがとうございます。」

帰り道。

夕焼けに染まる歩道橋。

五人は並んで歩いていた。

ゆいが隣のほたるを見る。

「ほたるちゃん。」

「うん?」

「ありがとう。」

「え?」

「今日。」

「一番大事なことを思い出せた。」

ほたるは照れくさそうに笑う。

「えへへ。」

「実はね。」

「うん?」

「私。」

「難しいこと分かんない。」

「でも。」

「みんなが笑ってると。」

「音も笑ってる気がする!」

ひかりは空を見上げた。

「……うん。」

「そうかもしれない。」

秋空には、うろこ雲がゆっくり流れていた。

その雲の向こうには、まだ見ぬ全国のステージが待っている。

そして、その夜。

部室のホワイトボードには、誰が書いたのか大きく一行だけ残されていた。

『上手になる前に、音楽を楽しもう!』

その文字の横には、小さく黄色いマーカーでとうもろこしの絵が描かれていた。

「……。」

しずくが苦笑する。

「最後までほたるだね。」

すると、その横にもう一行、小さな字が添えられていた。

『全国で焼きとうもろこしを食べるためにも!🌽』

「目的がまた増えてる!」

五人の笑い声が、秋の音楽室にいつまでも響いていた。



第3節「オーディション動画撮影」

秋晴れの日曜日。

学校の体育館。

今日は全国高校生バンドフェスへ送る応募動画の撮影日だった。

体育館には、

カメラ。

照明。

マイク。

譜面台。

そして顧問の先生。

「よし。」

先生がカメラを確認する。

「一発目、行こう。」

五人はステージへ上がった。

ひかりは深呼吸。

(大丈夫。)

(いつも通り。)

しずくはギターを構える。

レイナはスティックを握る。

ゆいは少し緊張している。

そして。

ほたる。

「……。」

カメラをじっと見つめている。

先生が声を掛ける。

「スタート!」

赤いランプが点灯した。

その瞬間。

ほたるが一歩前へ出た。

「こんにちはーー!!」

全員

「えっ!?」

「蛍色メロディーズです!」

「今日はよろしくお願いしまーーす!!」

体育館中に元気な声が響く。

先生が思わず笑う。

「ほたる!」

「まだ自己紹介はいらない!」

ほたるは首をかしげた。

「え?」

「カメラさんにも挨拶した方が礼儀かなって。」

しずくが吹き出す。

「カメラさん!」

レイナも肩を震わせる。

「丁寧ですね。」

ゆいは笑いをこらえていた。

ひかりは額に手を当てた。

「もう……。」

撮影開始。

ジャーン!!

……

……

十秒後。

「ストップ!」

先生が苦笑した。

「しずく。」

「はい?」

「ギターソロで笑ってた。」

「ほたる見ちゃったので。」

ほたるはきょとん。

「私?」

「うん。」

「カメラに手振ってた。」

「応援してくれてるかなって。」

「カメラは応援しない!」

全員爆笑。

二回目。

「スタート!」

演奏開始。

今回は順調だった。

ところが。

サビ直前。

ガタン。

「え?」

ほたるの譜面台がゆっくり倒れていく。

カタン……

「わぁぁ!」

足で受け止める。

ベースは弾き続ける。

譜面台だけ絶妙に支える。

しずくが横目で見る。

(すごいバランス……。)

レイナも吹き出しそうになる。

ゆいは必死に歌を続ける。

ひかりは笑いをこらえてサビへ。

演奏終了。

先生は拍手した。

「すごい。」

「最後まで止まらなかった。」

ほたるが胸を張る。

「譜面台も守った!」

「そこ!」

三回目。

かなり良い演奏になった。

しかし。

撮影が終わった瞬間。

先生が困った顔をする。

「……。」

「どうしました?」

ひかりが尋ねる。

先生はカメラを指差した。

「録画ボタン。」

「押してなかった。」

……

……

……

体育館が静まり返る。

ほたるがゆっくり先生を見る。

「先生。」

「はい。」

「仲間。」

「え?」

「忘れ物仲間。」

先生まで吹き出した。

「あははは!」

「認める!」

しずくがお腹を抱える。

「まさか先生まで!」

レイナも珍しく大笑い。

「これは予想外でした。」

ゆいは涙をぬぐう。

「みんな一緒ですね。」

先生は頭をかいた。

「すまない!」

「もう一回お願いします!」

四回目。

「これが最後!」

先生が宣言する。

「今度こそ!」

ひかりが笑う。

「みんな。」

「楽しもう!」

「うん!」

「はい!」

「もちろん!」

「焼きとうもろこし!」

「違う!」

全員でツッコミ。

その空気のまま。

演奏が始まった。

誰も力みすぎない。

笑顔。

アイコンタクト。

自然な呼吸。

しずくのギターが歌う。

レイナのドラムが背中を押す。

ゆいの透明なハーモニー。

ほたるの温かなベース。

そして。

ひかりの歌が体育館いっぱいに響いた。

演奏が終わる。

静寂。

先生は映像を確認する。

誰も息をしない。

数十秒後。

先生がゆっくり振り向いた。

「……。」

五人は固唾をのむ。

先生は満面の笑みで親指を立てた。

「最高だ。」

「やったーーー!!」

五人は飛び跳ねた。

ほたるは勢い余って。

ぴょん!

またジャンプ。

「飛んだ!」

「普通のジャンプです!」

「今日は浮いてません!」

「そこ重要?」

体育館が笑い声に包まれた。

帰り道。

夕焼けに照らされながら五人は歩く。

「終わったね。」

ひかりがほっと息をつく。

ゆいも笑顔だった。

「すごく緊張した。」

しずくは肩を回す。

「でも楽しかった。」

レイナも頷く。

「今の私たちらしい演奏でした。」

その時。

ほたるがバッグをごそごそ探し始める。

「ん?」

「どうした?」

しずくが聞く。

ほたるは青ざめた。

「……。」

「ない。」

「え?」

「何が?」

ほたるは真剣な顔で答えた。

「体育館に。」

みんなが息をのむ。

「ベース忘れた。」

……

……

……

レイナが静かに空を見上げる。

「伝説は。」

「更新されますね。」

「急げーーー!!」

五人は笑いながら学校へ走り出した。

夕焼けの校庭に、楽しそうな笑い声がいつまでも響いていた。



第4節「結果発表の朝」

オーディション動画を送ってから三週間。

季節はすっかり秋。

校庭のイチョウが黄金色に染まり始めていた。

その朝。

ひかりは目覚ましより先に目を覚ました。

時計を見る。

午前五時三十分。

「……眠れなかった。」

スマホを見る。

新しい通知はない。

(今日だ。)

(結果発表。)

胸が少し苦しくなる。

同じ頃。

しずくも布団の中で天井を見つめていた。

「寝られない……。」

ギターを抱えてみる。

ポロン……

「余計に落ち着かない。」

レイナは朝六時。

いつも通りランニング。

「落ち着きましょう。」

「走れば冷静になります。」

そう言いながらも、

今日は少しだけペースが速かった。

「……やはり緊張していますね。」

自分で苦笑する。

ゆいは朝ごはんを食べながら。

「パンが喉を通らない……。」

お母さんが笑う。

「初ライブの日も同じだったわね。」

「うん……。」

「今日はもっと緊張する。」

そして。

ほたる。

午前六時。

台所。

ジュージュー……

お弁当を作っていた。

お母さんが聞く。

「今日遠足?」

「違うよ!」

「結果発表!」

「じゃあ何でお弁当?」

ほたるは笑顔。

「合格でも!」

「不合格でも!」

「お腹は空くから!」

お母さんは吹き出した。

「それは正しい。」

放課後。

音楽室。

まだ誰も落ち着かない。

ひかりが時計を見る。

「あと十分。」

しずくが歩き回る。

「長い。」

レイナは腕時計を何度も確認。

ゆいは深呼吸を繰り返す。

「すぅ……。」

「はぁ……。」

その時。

ガラッ!

「お待たせーー!!」

ほたるが大きなお弁当袋を持って入ってきた。

しずくが指差す。

「やっぱり持ってきた!」

「もちろん!」

レイナが聞く。

「何人前ですか?」

「七人前!」

「増えてる!」

「先生とBlack Lily来ても大丈夫!」

「来ません!」

音楽室が少しだけ和んだ。

午後四時。

先生が入ってきた。

「みんな。」

五人が立ち上がる。

先生の手には一枚の封筒。

誰も息をしない。

先生も少し緊張している。

「結果が届いた。」

ひかりの鼓動が速くなる。

しずくが拳を握る。

レイナは姿勢を正す。

ゆいは手を合わせていた。

ほたる。

「先生。」

「なんだ?」

「お弁当食べながら見ます?」

「今じゃない!」

全員のツッコミ。

先生も笑った。

「ありがとう。」

「緊張が少しほぐれた。」

先生は封筒をゆっくり開ける。

紙を取り出す。

静寂。

紙がめくれる音だけが響く。

先生が読み始めた。

「全国高校生バンドフェス。」

「一次審査。」

ひかりは目を閉じる。

「……。」

「蛍色メロディーズ。」

一拍。

先生が笑った。

「通過です。」

……

……

……

「え?」

一瞬。

誰も動けなかった。

次の瞬間。

「やったーーーーーー!!」

五人が一斉に飛び上がる。

しずくはギターを抱えたままジャンプ。

ゆいは涙ぐむ。

レイナまでガッツポーズ。

ひかりは嬉し涙が止まらない。

「本当に……。」

「本当に……。」

「行けるんだ。」

ほたるは先生へ駆け寄る。

「先生!」

「はい!」

「お祝い!」

「はい?」

「お弁当食べましょう!」

先生は大笑いした。

「結局それか!」

「もちろん!」

十分後。

音楽室。

なぜか全員でお弁当タイム。

「いただきまーす!」

先生も箸を持つ。

「おいしい。」

ほたるが誇らしげ。

「今日は!」

「合格弁当!」

しずくが笑う。

「名前付けた!」

レイナも頷く。

「確かに記念日ですね。」

ゆいはおにぎりを食べながら微笑む。

「こんな結果発表、初めてです。」

ひかりはみんなを見渡した。

「私。」

「一人だったら。」

「こんなところまで来られなかった。」

しずくが肩を叩く。

「五人だから。」

レイナ。

「支え合える。」

ゆい。

「笑い合える。」

ほたる。

「食べ合える!」

「違う!」

全員爆笑。

その時。

先生がもう一枚の紙を取り出した。

「実は。」

五人が振り向く。

「二次審査。」

「会場はこちら。」

紙には大会会場の写真。

巨大なライブホールだった。

ゆいが息をのむ。

「大きい……。」

しずくも目を見開く。

「文化祭の何倍?」

レイナが静かに答える。

「何十倍でしょう。」

ひかりはその写真を見つめた。

(ここで歌うんだ。)

(五人で。)

ほたるが写真をのぞき込む。

「屋台。」

「あるかな。」

「まだ言う!」

帰り道。

夕焼け空の下。

五人は並んで歩く。

風が少し冷たい。

秋は少しずつ深まっていた。

ひかりが空を見上げる。

「ここからが本番だね。」

「うん。」

「はい!」

「もちろん。」

ほたるは両手を空へ伸ばした。

「全国ーー!」

「待っててーー!」

そして。

勢いよくジャンプ。

ぴょん!

その姿を見て。

四人も笑いながら一緒に跳んだ。

五人の影が夕日に重なる。

夢までの距離は、まだ遠い。

でも。

五人ならきっと届く。

そんな予感が、秋の空に静かに広がっていた。



第4章「夢の向こう側」【晩秋】

第1節「進路希望調査票」

晩秋。

窓の外ではイチョウの葉が風に乗って舞っていた。

ホームルーム。

担任の先生が一枚の紙を配る。

「今日は進路希望調査票を配ります。」

教室が少しざわつく。

「一年生はまだ先のことだと思うかもしれません。」

「ですが、一度考えてみることも大切です。」

ひかりは紙を受け取る。

一番上には大きく書かれていた。

『将来の夢・希望進路』

「……。」

鉛筆が止まる。

(将来の夢。)

(私の夢って……。)

放課後。

音楽室。

五人はそれぞれ机に調査票を広げていた。

しずくが紙を見ながらため息をつく。

「これ難しいね。」

レイナも頷く。

「簡単には書けませんね。」

ゆいは困った顔。

「まだ何になりたいか、はっきり分からなくて……。」

ひかりは空欄を見つめたまま。

「私も。」

「音楽は好き。」

「でも……。」

「仕事って考えると急に難しくなる。」

静かな空気が流れる。

その時。

ガタン!

ほたるが勢いよく立ち上がった。

「書けた!」

全員が振り向く。

「早っ!」

しずくが笑う。

「見せて。」

ほたるは胸を張る。

「どうぞ!」

紙を見る。

そこには大きな字で。

『焼きとうもろこし屋さん兼ベーシスト🌽🎸』

……

……

……

しずくが吹き出した。

「兼業!?」

レイナも目を丸くする。

「まさかの二刀流。」

ゆいは肩を震わせている。

「かわいい……。」

ひかりは笑いながら聞く。

「どうして?」

ほたるは真剣そのものだった。

「ライブって。」

「お腹空くでしょ?」

「うん。」

「だから。」

「ライブ会場で焼きとうもろこし屋さんやれば。」

「演奏できる!」

「食べられる!」

「みんな幸せ!」

しずくが手を叩く。

「発想が自由すぎる!」

レイナが冷静に尋ねる。

「演奏中は屋台どうするんですか?」

ほたる。

「交代制!」

「誰と!?」

全員爆笑。

そこへ顧問の先生が入ってきた。

「みんな、書けたかな?」

「先生ー!」

ほたるが元気よく紙を差し出す。

先生は読む。

「……。」

「……。」

「焼きとうもろこし屋さん兼ベーシスト。」

教室が静かになる。

先生は眼鏡を外し。

もう一度見る。

「……本気?」

ほたるは満面の笑み。

「本気です!」

先生は少し考えたあと。

笑った。

「いい夢だ。」

五人が驚く。

「え?」

先生は紙を返しながら言う。

「職業は一つじゃなくてもいい。」

「好きなことを二つ持つ人生もある。」

ほたるの目が輝く。

「じゃあ!」

「否定しないんですか?」

先生は微笑んだ。

「ただし。」

「焼きとうもろこしを焦がさないこと。」

「はい!」

「あと。」

「ベースを忘れないこと。」

……

……

……

音楽室が大爆笑に包まれた。

「先生まで!」

「言われちゃった!」

「伝説が学校中に広まってる!」

ほたるは頬をふくらませる。

「もう忘れません!」

しずくがすかさず。

「先週忘れたよ?」

「……。」

「……あ。」

「思い出した。」

「今思い出すな!」

笑いが落ち着いた頃。

先生が静かに言った。

「みんな。」

「夢は。」

「今すぐ決めるものじゃない。」

「変わってもいい。」

「遠回りしてもいい。」

「でも。」

「好きという気持ちは、大事にしてほしい。」

音楽室が静かになる。

ひかりはその言葉をノートに書き留めた。

『好きという気持ちを、大事に。』

帰り道。

五人は夕焼けの河川敷を歩いていた。

ゆいが小さく呟く。

「私。」

「まだ夢は分からないです。」

ひかりが笑う。

「私も。」

しずく。

「考えながら進めばいいよ。」

レイナ。

「答えは一つではありません。」

すると。

ほたるが立ち止まった。

「私は決まってる!」

「知ってる。」

しずくが笑う。

「焼きとうもろこし屋さん兼ベーシストでしょ?」

ほたるは首を横に振った。

「違う。」

四人が驚く。

「え?」

ほたるは少し照れくさそうに笑った。

「本当の夢。」

「ずっとみんなで演奏すること。」

風が吹く。

落ち葉が五人の周りを舞った。

誰もすぐには言葉を返せなかった。

その一言があまりにも自然で、

あまりにも、ほたるらしかったから。

ひかりが優しく笑う。

「……うん。」

「それ、私も。」

しずくも頷く。

「私も。」

「私もです。」

「私も!」

五人は顔を見合わせる。

そして。

「せーの!」

全員で空へ向かってジャンプ。

ぴょん!

「今回は飛べた?」

「ジャンプだけ!」

「十分です!」

笑い声が、秋の澄んだ空へ吸い込まれていった。



第2節「家族の言葉」

晩秋の夕暮れ。

木々は赤や黄色に色づき、吐く息も少し白くなり始めていた。

音楽室での練習を終えた五人は、それぞれの家へ帰っていく。

今日は誰もが、少しだけ胸に何かを抱えていた。

先生の言葉。

「好きという気持ちは、大事にしてほしい。」

その言葉が、それぞれの心に残っていた。

ひかりの家
夕食の時間。

食卓には湯気の立つシチューが並んでいた。

お父さんがパンをちぎりながら聞く。

「最近、バンド頑張ってるみたいだね。」

ひかりは少し照れながら頷く。

「うん。」

「全国大会の二次審査も決まったんだ。」

お母さんの顔が明るくなる。

「すごいじゃない!」

「ありがとう。」

少し沈黙が流れる。

ひかりはフォークを置いた。

「ねえ……。」

「私ね。」

両親が顔を上げる。

「音楽を……。」

「仕事にできたらいいなって思ってる。」

静かな時間。

お父さんはゆっくり笑った。

「そうか。」

「うん。」

「簡単じゃないぞ。」

「……うん。」

「でも。」

「本気で好きなら。」

「挑戦してみなさい。」

ひかりの目が潤む。

お母さんも優しく頷いた。

「失敗したっていいの。」

「好きなことに本気になれた経験は、一生の宝物だから。」

「……ありがとう。」

その夜のシチューは、いつもより少しだけ温かく感じた。

ゆいの家
ゆいはリビングで宿題をしていた。

お母さんが温かいココアを置く。

「ありがとう。」

「何か考え事?」

ゆいは少し迷ってから話し始めた。

「私ね。」

「音楽が好き。」

「うん。」

「でも。」

「プロなんて……。」

「私には無理かなって。」

お母さんは首を振った。

「まだ高校一年生でしょう?」

「うん。」

「だったら。」

「今は好きって気持ちを大事にすればいい。」

「できるかどうかは。」

「未来のゆいが決めること。」

ゆいはココアを一口飲む。

「……うん。」

「ありがとう。」

しずくの家
ギターの音が止まる。

リビング。

お父さんが新聞を閉じた。

「音大を考えてるんだって?」

しずくは驚く。

「先生から聞いた?」

「いや。」

「顔に書いてある。」

思わず笑ってしまう。

「そんなに分かる?」

「分かる。」

少し真面目な空気になる。

お父さんはゆっくり言った。

「趣味で終わらせるのか。」

「仕事にするのか。」

「そこは覚悟がいる。」

しずくは頷いた。

「うん。」

「でも。」

「中途半端にはやらない。」

お父さんは嬉しそうに笑う。

「その顔なら大丈夫だ。」

「本気で悩め。」

「本気で決めろ。」

「それだけだ。」

しずくは大きく頷いた。

レイナの家
机の上には参考書。

その横にはドラムスティック。

お母さんが部屋を覗く。

「勉強してる?」

「はい。」

「ドラムも?」

「もちろん。」

お母さんは笑う。

「レイナらしい。」

少し間を置いて聞く。

「将来。」

「音楽も考えてる?」

レイナは静かに答えた。

「考えています。」

「でも。」

「音楽だけじゃなく。」

「支える仕事も素敵だと思っています。」

「先生とか?」

「教育。」

「音楽療法。」

「裏方。」

「色々興味があります。」

お母さんは嬉しそうに頷いた。

「レイナは昔から。」

「誰かを支えるのが好きだものね。」

レイナは少し照れ笑いを浮かべた。

そして、ほたるの家
夕食。

食卓には焼き魚。

味噌汁。

炊きたてご飯。

ほたるが突然立ち上がる。

「発表します!」

お父さんとお母さんが顔を見合わせる。

「将来!」

「焼きとうもろこし屋さん兼ベーシストになります!」

「おぉ。」

お父さんが真剣な顔になる。

「屋号は?」

「え?」

「店の名前。」

ほたるも真剣になる。

「考えてなかった!」

お母さんまで乗ってくる。

「"ほたる炭火堂"は?」

「かっこいい!」

お父さん。

「"とうもろこし☆メロディーズ"。」

「かわいい!」

お母さん。

「ライブ付き屋台。」

「最高!」

三人で盛り上がる。

そこへ、おばあちゃんが一言。

「とうもろこしもいいけど。」

「冬は焼きいもも売りなさい。」

……

……

……

全員。

「それだーー!!」

ほたるは目を輝かせる。

「季節限定メニュー!」

お父さんが腕を組む。

「経営戦略まで決まったな。」

「まだ高校一年生だからね?」

お母さんが笑う。

家族全員、大笑いだった。

翌日。

音楽室。

五人が昨日の話をしていた。

「みんな家族と話した?」

「うん。」

「はい。」

「話した。」

ひかりは優しく笑う。

「少し安心した。」

ゆいも頷く。

「私も。」

しずくは照れくさそうに笑う。

「ちゃんと応援してくれてた。」

レイナも微笑む。

「家族はありがたいですね。」

みんなの視線が自然とほたるへ向く。

「……。」

「ほたるちゃんは?」

ほたるは満面の笑みで答えた。

「屋号決まった!」

「そこ!?」

「聞いて!」

胸を張る。

「『ほたる炭火メロディーズ』!」

しずくが吹き出す。

「バンド名入ってる!」

レイナが笑う。

「宣伝効果はありますね。」

ゆいも笑顔になる。

「ライブもできますね。」

ひかりは笑いながら言った。

「じゃあ。」

「全国大会終わったら。」

「みんなで一番最初のお客さんになろう。」

ほたるは飛び跳ねる。

「予約第一号!」

「まだ開店してないよ!」

笑い声が音楽室いっぱいに広がる。

その笑顔を見ていた先生は、廊下からそっと微笑んだ。

「夢の形は、人それぞれか。」

「でも――」

「笑顔で語れる夢なら、きっと大丈夫だ。」

先生はそう呟き、静かに職員室へ戻っていった。



第3節「夢を語る夜」

晩秋の夜。

窓の外では虫の声も少なくなり、澄んだ空気の中に星が瞬いていた。

全国大会まで、あと一週間。

その日の練習を終えても、誰も帰ろうとはしなかった。

音楽室。

楽器は壁に立て掛けられ、五人は円になって床に座っていた。

静かな時間。

ひかりが窓の外を見上げる。

「星、きれい。」

ゆいもそっと見上げる。

「本当ですね。」

しずくはギターケースにもたれかかりながら笑う。

「なんか、文化祭の前夜を思い出す。」

レイナが頷く。

「あの時も、みんな緊張していました。」

ほたるは小さく笑う。

「私はお弁当の心配してた。」

「知ってる。」

全員が笑った。

その笑いが落ち着くと、ひかりがぽつりと話し始めた。

「私ね。」

みんながひかりを見る。

「小さい頃は。」

「歌が好きってだけだった。」

「でも。」

「みんなと出会って。」

「歌は、人に届けるものなんだって思えた。」

少し照れながら笑う。

「だから。」

「私は。」

「誰かの明日を少しだけ明るくできる歌を歌う人になりたい。」

静かな拍手。

パチ、パチ。

しずくが微笑む。

「ひかりらしい。」

次に口を開いたのは、しずくだった。

「私はね。」

「最初は。」

「誰より上手くなりたかった。」

「負けたくなかった。」

「Black Lilyにも。」

「誰にも。」

苦笑する。

「でも。」

「今は少し違う。」

ギターケースを優しく撫でる。

「このギターで。」

「誰かが『かっこいい』って思ってくれたら嬉しい。」

「そんなギタリストになりたい。」

ひかりが笑顔で言う。

「絶対なるよ。」

しずくは照れくさそうに頭をかいた。

レイナが静かに続ける。

「私は。」

「目立つことは得意ではありません。」

「でも。」

「後ろから支えることは好きです。」

スティックを見つめながら微笑む。

「ドラムも。」

「学校でも。」

「誰かが安心して前へ進めるように。」

「そんな人でいたい。」

ゆいが目を輝かせる。

「レイナ先輩。」

「もう、そういう人です。」

レイナは少しだけ照れて笑った。

「ありがとうございます。」

ゆいは少し緊張した様子で口を開く。

「私は……。」

「入部した時。」

「みんなについていくだけで精一杯でした。」

四人が優しく見守る。

「でも。」

「今は。」

「このバンドが大好きです。」

「だから。」

「もっと歌って。」

「もっと笑って。」

「ずっと。」

「みんなと歌っていたい。」

ひかりがゆっくり頷く。

「うん。」

「私たちも。」

「そう思ってる。」

最後に。

四人の視線が自然とほたるへ向いた。

「ほたるちゃん。」

「うん?」

「夢は?」

ほたるは少し考える。

珍しく。

すぐには答えなかった。

窓の外を見る。

星空。

そして、小さく笑った。

「昔ね。」

「有名になりたいって思ってた。」

四人は少し驚く。

「でも。」

「今は違う。」

「じゃあ?」

ひかりが優しく聞く。

ほたるはゆっくり答えた。

「ライブが終わったあと。」

「みんなが。」

「『楽しかったね。』」

「って笑って帰る。」

「それを見るのが。」

「一番好き。」

静かな夜。

誰も言葉を挟まない。

ほたるは続ける。

「プロでも。」

「アマチュアでも。」

「大きな会場でも。」

「小さなライブハウスでも。」

「学校でも。」

「公園でも。」

「どこでもいい。」

少し照れながら笑う。

「私は。」

「みんなが笑ってるライブを。」

「ずっとやりたい。」

風が窓を揺らした。

カーテンがふわりと舞う。

誰も話さない。

その言葉が、音楽室いっぱいに静かに広がっていく。

やがて。

ひかりが立ち上がった。

「その夢。」

「私も一緒に叶えたい。」

「私も。」

しずくが立つ。

「もちろんです。」

レイナも。

「私もです!」

ゆいも笑顔で立ち上がる。

五人は自然と手を重ねた。

ひかりが言う。

「全国大会。」

「楽しもう。」

「うん!」

「はい!」

「もちろん!」

「焼きとうもろこしも!」

「まだ言う!」

五人の笑い声が夜空へ溶けていく。

帰ろうとした、その時。

廊下から先生の声がした。

「……。」

「聞こえていましたよ。」

「先生!」

「盗み聞きですか?」

しずくが笑う。

先生は苦笑する。

「偶然です。」

「本当ですか?」

「……半分くらい。」

全員が笑った。

先生は五人を見渡し、ゆっくりと言う。

「先生は。」

「君たちがプロになるかどうかは分からない。」

五人が静かに聞く。

「でも。」

「君たちなら。」

「どこで演奏しても。」

「誰かを笑顔にできる。」

「それだけは保証します。」

ひかりの目に涙が浮かぶ。

先生は続けた。

「だから。」

「全国大会も。」

「いつもの君たちらしく。」

「楽しんでおいで。」

「はい!」

五人の声が揃った。

先生は満足そうに頷く。

「……あと。」

ほたるを見る。

「全国大会で。」

「焼きとうもろこしが売っていたら。」

ほたるの目が輝く。

「はい!」

「先生の分も買ってきます!」

「ありがとう。」

「でも。」

「演奏が終わってからね。」

「もちろん!」

笑いながら校舎を出る五人。

夜空には、冬の始まりを告げる星座が輝いていた。

夢はまだ遠い。

でも。

その夢は、もう一人のものではない。

五人で奏でる、同じ夢になっていた。



第4節「夢の向こう側」

全国大会当日の朝。

空はどこまでも澄み渡り、冷たい風が頬を優しく撫でていた。

駅前広場。

約束の時間より少し早く、ひかりがやって来る。

「……早すぎたかな。」

そう呟いた瞬間。

「おはよう!」

振り向くと、ゆいが手を振っていた。

「ゆい!」

「私も早く来ちゃいました。」

二人は顔を見合わせて笑う。

「緊張してる?」

「……少しだけ。」

「私も。」

十分後。

「おはよー!」

しずくがギターケースを背負って現れる。

「二人とも早いね。」

「落ち着かなくて。」

「分かる。」

三人で笑い合う。

さらに数分後。

「お待たせしました。」

レイナが歩いてきた。

制服姿にドラムスティックケース。

「全員……じゃないですね。」

「あと一人。」

四人は自然と同じ方向を見る。

「……。」

「……。」

「遅刻?」

「まさか。」

その時だった。

遠くから元気な声。

「ごめーーーん!!」

ほたるが全力で走ってくる。

「間に合った!」

息を切らしながら笑っている。

しずくが腕を組む。

「寝坊?」

「違う!」

「駅で迷った!」

「駅前で!?」

「毎日来てる駅だよ!」

全員爆笑。

ようやく改札へ向かおうとした、その時。

ほたるが突然立ち止まる。

「……。」

「どうした?」

ひかりが尋ねる。

ほたるは駅弁売り場をじっと見つめていた。

「焼きとうもろこし弁当……。」

「探してた!」

レイナが苦笑する。

「本当にあったら奇跡です。」

ほたるは肩を落とす。

「ない……。」

しずくが笑う。

「全国大会終わったら探そう。」

「約束?」

「約束。」

ほたるは満面の笑みになった。

その時。

「みんな。」

顧問の先生が改札前へやって来た。

「先生!」

「今日は応援だけだからな。」

先生は五人を見渡す。

「緊張してるか?」

「はい。」

「少し。」

「まあまあ。」

「結構。」

「焼きとうもろこし……。」

「ほたるだけ違う!」

笑いが広がる。

先生も笑った。

「それでいい。」

五人が先生を見る。

先生は静かに続けた。

「全国大会。」

「大きな舞台だ。」

「上手なバンドもたくさんいる。」

「悔しい思いをするかもしれない。」

「思った結果にならないかもしれない。」

五人は真剣に聞く。

「でも。」

「忘れないでほしい。」

先生は五人一人ひとりの顔を見ながら言った。

「君たちは。」

「勝つためだけに、ここまで来たんじゃない。」

「音楽が好きだから。」

「仲間と演奏することが好きだから。」

「その気持ちが。」

「ここまで連れてきてくれた。」

静かな朝。

駅前の喧騒が少し遠く感じる。

「だから。」

「今日も。」

「いつもの君たちで演奏しておいで。」

「はい!」

五人の返事が重なった。

電車がホームへ滑り込む。

「行こう。」

ひかりが一歩踏み出す。

四人も続く。

車窓から見える街並みが少しずつ流れていく。

ゆいが小さく呟く。

「本当に全国なんですね。」

「うん。」

しずくが微笑む。

「まだ実感ない。」

レイナは窓の外を見つめる。

「でも。」

「ここまで来られたことが嬉しいです。」

ほたるは景色を見ながら笑う。

「みんなで電車乗るのも遠足みたい!」

「大会だからね!」

「知ってる!」

また笑いが起こる。

やがて電車は目的の駅へ到着した。

改札を抜ける。

その先に見えたのは――

巨大なライブホール。

「……。」

ひかりは思わず息をのむ。

「大きい。」

ゆいも目を輝かせる。

「文化祭と全然違う……。」

しずくはギターケースを握り直した。

「ここで演奏するんだ。」

レイナは静かに頷く。

「夢の舞台ですね。」

ほたるは建物を見上げる。

「……。」

「どうした?」

ひかりが聞く。

ほたるはにっこり笑った。

「ここでも。」

「きっと誰かが笑って帰るね。」

四人は、その言葉に優しく頷く。

「うん。」

「そうだね。」

「きっと。」

「絶対。」

ライブホールの入口。

五人は横一列に並ぶ。

ひかりが手を差し出した。

「みんな。」

「最後じゃない。」

「でも。」

「今までで一番大きな一歩。」

しずくが手を重ねる。

「行こう。」

レイナも。

「全力で。」

ゆいも。

「楽しみましょう。」

最後に。

ほたるが手を重ねて言った。

「せーの!」

五人の声が重なる。

「蛍色メロディーズ、行ってきます!」

その瞬間、秋の風が五人の背中を優しく押した。

夢の向こう側は、まだ見えない。

けれど、その一歩一歩が、確かに夢へと続いている。

五人は笑顔でライブホールの扉を開いた。



第5章「永遠のライバル」【初冬】― 友情と成長 ―

第1節「全国での再会」

初冬。

夏の暑さが遠い記憶になり始めた頃。

街路樹の葉は赤や黄色に染まり、朝の空気には冬の気配が混じっていた。

蛍色メロディーズの五人は、大きなホールの入口に立っていた。

今日は、全国高校生バンドフェス。

夏から続けてきた挑戦の、その先。

ひかりは、入口を見上げながら小さく息を吐いた。

「……ここが、全国……」

ゆいが隣で頷く。

「大きいですね……」

「うん」

ひかりは胸に手を当てる。

「なんだか、まだ夢みたい」

ほたるはというと――

「ねえねえ!」

三人が振り向く。

「どうしたの、ほたる?」

ほたるは真剣な顔で言った。

「全国大会って……」

「うん」

「全国の焼きとうもろこしが集まる大会なの?」

「違うよ!!」

ひかりのツッコミが響いた。

レイナがため息をつく。

「……どうしてそういう発想になるのよ」

「だって全国だよ?」

「音楽の全国大会です」

「そっかぁ……」

ほたるは少し考えた。

「じゃあ、焼きとうもろこしは会場に売ってるかな?」

「まだ言うか……」

しずくが呆れたように笑う。

「ほたる。今日は演奏に集中しなさい」

「もちろん!」

ほたるは胸を張った。

「演奏が終わったら探す!」

「そこは変わらないのね……」

五人が笑う。

その時だった。

「――あれ?」

ひかりが入口の向こうを見つめた。

見覚えのある制服。

そして、ギターケース。

「……Black Lily?」

向こうもこちらに気付いた。

神崎美月が笑顔で手を振る。

「蛍色メロディーズ!」

「美月さん!」

ひかりが駆け寄る。

「久しぶり!」

「本当に久しぶりね」

夏祭り以来。

そして、合同ライブ以来。

けれど、以前とは少し違っていた。

ひかりは、もう以前ほど緊張していない。

ゆいも、美月たちを見て微笑んでいる。

しずくはギターケースを背負い直した。

「……また会ったわね」

Black Lilyのギタリストが笑う。

「今度こそ負けないよ」

しずくの目が輝く。

「こっちの台詞」

「二人とも、全国大会の入口で火花散らさない」

レイナが即座に止める。

すると、ほたるが手を上げた。

「はい!」

美月が笑う。

「どうしたの?」

「お弁当!」

「……え?」

「全国大会でも、お弁当同盟しましょう!」

一瞬の沈黙。

そして――

「いいわね!」

美月が笑った。

「もちろん!」

「やったー!」

ほたるが両手を上げる。

しずくが頭を抱える。

「……この人、本当に変わらないわね」

ひかりは笑いながら言った。

「でも……なんだか安心する」

ゆいも頷く。

「はい」

レイナが五人を見渡した。

「じゃあ、行きましょう」

扉の向こうには、大きなステージが待っている。

それぞれの音を抱えて。

それぞれの夢を抱えて。

五人は、全国の舞台へ歩き出した。





第2節「それぞれのステージ」

会場には、全国から集まった高校生バンドが並んでいた。

楽屋には様々な音が響いている。

ギターのチューニング。

ドラムの音。

ボーカルの発声。

誰もが、この日のために練習してきた。

ゆいは少し緊張した様子で周囲を見る。

「……みんな、すごいですね」

ひかりが笑う。

「うん。でも、私たちもここまで来たんだよ」

「……はい」

その言葉に、ゆいの表情が少し柔らかくなった。

ほたるはベースを確認している。

「よし!」

レイナが見る。

「珍しくちゃんと持ってきたわね」

「もちろん!」

「……『珍しく』は余計じゃない?」

しずくが笑う。

「全国大会でベースを忘れたら伝説になるわよ」

「それはそれで……」

ほたるが少し考える。

「……面白そう!」

「面白くない!」

四人の声が重なった。

「ふふっ」

ゆいが笑った。

緊張が少しだけ消えた。

やがてBlack Lilyの出番が近づく。

美月が蛍色メロディーズのところへ来た。

「じゃあ、先に行ってくるね」

「はい!」

ひかりが拳を握る。

「頑張ってください!」

「ひかりたちもね」

美月は微笑んだ。

「今日は、楽しもう」

「……はい!」

Black Lilyがステージへ向かう。

そして、音が始まった。

力強いギター。

安定したリズム。

会場を包み込む歌声。

蛍色メロディーズの五人は、客席からその演奏を見つめていた。

しずくが小さく呟く。

「……やっぱり、上手い」

レイナが頷く。

「うん」

ひかりはステージを見ながら言った。

「……私たちも、あんなふうに」

ゆいが続ける。

「自分たちの音を、ちゃんと届けたいです」

ほたるが笑う。

「うん!」

そして、ほたるらしく。

「そのあとお弁当!」

「今そこに戻る!?」

全員が笑った。

Black Lilyの演奏が終わる。

大きな拍手。

そして、いよいよ――

蛍色メロディーズの番が来た。



第3節「最高のライブ」

「蛍色メロディーズ、お願いします!」

ステージ袖。

五人が並ぶ。

ひかりは深呼吸した。

「……みんな」

四人が見る。

「今日、楽しもう」

しずくが頷く。

「もちろん」

レイナも。

「準備はできてる」

ゆいが微笑む。

「はい」

ほたるは――

「終わったら焼きとうもろこし!」

「それ今言う!?」

笑いが起きる。

その笑顔のまま、五人はステージへ向かった。

ライトが点く。

眩しい。

客席が見える。

ひかりは一瞬だけ息を呑んだ。

以前なら、この景色に足がすくんでいたかもしれない。

でも――

隣には四人がいる。

ひかりはマイクを握る。

「私たちは――蛍色メロディーズです!」

音が始まる。

ギター。

ベース。

ドラム。

そして二つの歌声。

ひかりの真っ直ぐな声。

ゆいの透明感のある柔らかな声。

二人の歌声が重なった瞬間、五人の音が一つになる。

夏から積み重ねてきたもの。

ゆいが加入した日。

Black Lilyとの合同ライブ。

夏祭り。

オーディション。

失敗した日。

笑った日。

悩んだ日。

全部が、今の音になっていた。

ひかりは客席を見る。

「――届け!」

声が響く。

ゆいも続く。

「この歌を!」

五人の演奏が一気に加速する。

最後の音。

――ジャーン!

一瞬の静寂。

そして。

大きな拍手。

「ありがとう!」

ひかりが頭を下げる。

ゆいも。

しずくも。

レイナも。

ほたるも。

五人で深く頭を下げた。

ステージを降りた瞬間。

「……終わった……」

ひかりが息を吐く。

ゆいが笑う。

「すごく……楽しかったです」

しずくが頷く。

「うん」

レイナも笑った。

「最高だった」

ほたるは両手を広げた。

「じゃあ――」

全員が嫌な予感。

「焼きとうもろこし探しに行こう!」

「やっぱりそれ!?」

五人の笑い声が廊下に響いた。

その時。

「蛍色メロディーズ!」

美月たちがやってきた。

「最高だったよ」

「ありがとうございます!」

ひかりが笑う。

美月が続ける。

「私たちも負けていられないね」

しずくがギターケースを持ち直した。

「……当然」

二人は顔を見合わせる。

そして――笑った。



第4節「永遠のライバル」

大会終了後。

会場の外。

初冬の冷たい風が吹いていた。

結果発表を終え、それぞれのバンドが帰路につこうとしている。

順位や結果。

もちろん、それは大切だった。

けれど。

五人の胸に残っていたのは、別のものだった。

「……楽しかったね」

ひかりが言った。

ゆいが頷く。

「はい」

しずくが空を見上げる。

「もっと上手くなりたい」

レイナが笑う。

「私も」

ほたるが手を挙げる。

「私も!」

「ほたるは何を?」

「もっとベース上手くなって――」

一同が驚く。

「……ちゃんと練習して……」

「うんうん」

「全国の焼きとうもろこしを制覇する!」

「そっち!?」

全員が笑う。

すると美月が言った。

「ねえ、ひかり」

「はい?」

「また一緒にライブしよう」

ひかりは一瞬驚いた。

そして笑顔になる。

「はい!」

しずくとBlack Lilyのギタリストも向き合う。

「次はもっといい演奏をする」

「私も」

レイナが二人を見る。

「また始まった……」

ゆいが笑う。

「でも……素敵ですね」

「そうね」

レイナが頷く。

ひかりは空を見上げた。

夏の空とは違う。

高く、澄んだ冬の空。

でも――

同じ空だった。

「ライバルって……」

ひかりが呟く。

「敵じゃないんだね」

美月が頷く。

「うん」

「お互いがいるから、もっと頑張れる」

「もっと遠くまで行ける」

しずくが笑う。

「……なら、ずっとライバルね」

Black Lilyのギタリストが答える。

「もちろん」

五人とBlack Lily。

それぞれの音が、また別々の道へ進んでいく。

でも、音楽が続く限り。

きっとまた、どこかで交わる。

「またね!」

「また!」

「次は負けないから!」

「こっちも!」

そして最後に。

ほたるが大声で叫んだ。

「次はお弁当会もねーーー!」

美月が笑う。

「もちろんーーー!」

冬の空に、笑い声が響いた。

エピローグ「蛍色の未来」

帰り道。

五人は並んで歩いていた。

吐く息が白い。

ひかりが言った。

「……今年、いろんなことがあったね」

「うん」

ゆいが答える。

「私、最初は入部するだけでもすごく緊張していました」

「そうだったね」

ひかりが笑う。

「でも、今は?」

ゆいは少し考えてから答えた。

「……歌いたいです」

「もっと?」

「はい」

ゆいは空を見上げた。

「もっと、みんなと歌いたい」

ひかりは嬉しそうに笑った。

「私も」

しずくが言う。

「まだまだ上手くなれる」

レイナも。

「やりたいことは、まだたくさんある」

ほたるは歩きながら空を見ていた。

「ねえ」

「何?」

「蛍って、冬はどうしてるのかな?」

全員が止まった。

「……」

ほたるが続ける。

「春になったら、また光るのかな?」

ひかりが微笑んだ。

「きっと、また光るよ」

「そっか」

ほたるも笑う。

「じゃあ私たちも、また光ろう!」

五人は顔を見合わせる。

「うん!」

冬の夜空。

星が一つ、また一つと輝いている。

夏の思い出。

秋の挑戦。

冬のステージ。

そして、その先にある未来。

五人の音は、まだ始まったばかりだった。

ひかりが歩きながら呟く。

「……次は、どんな曲を作ろうかな」

しずくが笑う。

「もう次の曲?」

レイナが言う。

「止まる気はないみたいね」

ゆいが微笑む。

「楽しみです」

そして――

ほたるが突然立ち止まった。

「あっ!」

四人が振り返る。

「今度は何!?」

ほたるは真剣な顔で言った。

「……冬の屋台って」

「嫌な予感……」

「焼きいも、あるよね?」

「あるでしょうね」

「じゃあ!」

ほたるが走り出す。

「冬の焼きいも探しに行こうーーー!!」

「待ちなさーーーい!!」

「ほたるちゃん、走らないでー!」

「転ぶわよ!」

「ベース置いていかないで!!」

「持ってるよーーー!!」

五人の声が遠ざかっていく。

冬の街に、笑い声が響く。

その声も。

その音も。

きっといつか、誰かへ受け継がれていく。

蛍のように。

暗い夜の中でも、小さな光を繋ぎながら。

――そして。

蛍色メロディーズの未来は、まだ続いていく。



歌詞紹介

『新しい音』


雨上がりの空
光る水たまり

昨日まで知らなかった
色が映ってる

いつもの窓辺から
見上げた青い空

変わらない景色なのに
今日は少し違う

ノートに描いた夢
ひとりで抱えてた

言葉にできない想い
胸の奥で鳴ってた

「このままでいいのかな」

「私にもできるかな」

小さな声でも

震える声でも

重なればきっと
届くから

新しい音が 今 生まれる
君と私の声が重なる

ひとりじゃ見えなかった空へ
一緒なら飛べる気がする

新しい音が 胸を叩く
知らない明日を呼びに行こう

五つの鼓動 ひとつのメロディ
ここから始まる
私たちのステージ

初めて握ったマイク
指先が震えてる

「大丈夫」って笑う君が
そばにいてくれた

知らないことばかりで
迷う日もあるけれど

昨日より少しだけ
前を向ける気がした

昨日の私より

今日の私らしく

一歩ずつでいい

一緒なら怖くない

違う声だからこそ
響き合える

新しい音が 今 弾ける
君と私の夢が重なる

失敗したって笑い合えば
また何度でも始められる

新しい音が 空を駆ける
まだ知らない場所へ行こう

五つの想い ひとつのメロディ
響かせていこう
私たちの未来

もしも一人だったなら
見つけられなかった

もしも声を出せなかったら
出会えなかった

だから今

ここにいる

違う色の夢が
ひとつの空で輝く

新しい音が 今 生まれる
君と私の声が重なる

ひとりじゃ描けなかった未来
五人なら描いていける

新しい音が 胸を鳴らす
どんな明日も迎えに行こう

五つの鼓動 ひとつのメロディ
ここから始まる
私たちのストーリー

新しい音を 響かせよう
この空の向こうまで

出会えた奇跡を
歌に変えて

「私たちの音は――これから!」

新しい空に
新しい声

君と奏でる
新しい音……

「また、ここから。」



『交わる旋律』

違う音が
遠くで鳴ってる

ひとつの空の下
まだ知らない旋律

いつもより少しだけ
速くなる鼓動

ステージの向こう側
誰かが笑ってる

負けたくない
その気持ちも

憧れてる
その気持ちも

全部抱えて
ここまで来たんだ

「もっと遠くへ行きたい」

「もっと歌っていたい」

違う夢を持っていても
同じ空を見てる

交わる旋律 今 響け
違う音だから強くなる

ぶつかるたびに見えてくる
まだ知らない自分の色

交わる旋律 空へ飛べ
君の音も 私の音も

一緒に鳴らしたその瞬間
新しい未来が始まる

譲れないものがある

守りたい夢がある

だからこそ本気で

向き合えるんだね

笑われたっていい
転んだっていい

音を止めなければ
また走り出せる

昨日より高く
今日より強く

目の前の壁さえ
音に変えてゆこう

「あなたがいるから」

「私も負けない」

その言葉が
背中を押す

交わる旋律 今 響け
競い合うほど熱くなる

悔しさだって力にして
もっと高く手を伸ばそう

交わる旋律 空を越え
君の音と 私の音が

ひとつのステージで重なれば
最高の景色になる

最初は遠く見えた
あの背中

追いつきたいと思った
あの音

でも今は――

隣で鳴らしてみたい

交わる旋律 今 響け
五つの鼓動 さらに重なれ

競い合ったその先には
一人じゃ見えない景色がある

交わる旋律 空へ飛べ
君の音も 私の音も

同じステージで鳴り響けば
世界はもっと輝く

交わる旋律――!

「もっと!」

「響け!」

「もっと!」

「届け!」

違う音が
ひとつになる

また会おう

同じ空の下で――

ジャーン!



『夏祭り☆YUKATA PHONK!!』

みんなー!
夏祭り行くよー!

もう走らないでよー!

待ってくださーい!

……あ。

焼きとうもろこし、あるかな?

ドン!

夕焼け染まる帰り道
浴衣の裾が揺れている

提灯並ぶ坂道を
五人で駆け上がろう

金魚すくいに かき氷
りんご飴まで目移り中

「今日は何を食べようか?」
「全部!」
「え!全部なの!?」

チリン チリン
風鈴鳴って

ドン ドン ドン
太鼓が呼んでる

夜空の向こう
光が弾ける

始まるよ
今夜の夏祭り!

夏祭り☆YUKATA PHONK!!
踊れ 騒げ 夜が明けるまで

ドンドン太鼓に
808 Bass!

浴衣ひらり
心もひらり

夏祭り☆YUKATA PHONK!!
笑って 跳ねて 空を見上げよう

君と 私と みんなで
最高の夏にしよう!

Hey! Hey!

Summer Night!!

焼きそば発見!

まだ食べるの?

かき氷発見!

さっき食べたでしょ。

たこ焼き発見!

……もう驚かない。

でも……美味しそうです。

ゆいまで!?

祭りの夜は止まらない
笑い声まで音楽だ

転んだって笑えばいい
失敗だって思い出さ!

違う色の毎日が
今日だけひとつになる

手を伸ばせば届きそうな
星が夜空に咲いている

夏祭り☆YUKATA PHONK!!
踊れ 騒げ 夜を彩れ

三味線鳴って
ギターが吠える

太鼓響け
心を叩け

夏祭り☆YUKATA PHONK!!
笑って 跳ねて 今を抱きしめよう

五つの声が重なれば
最高の夏になる!

Hey! Hey!

Summer Night!!

花火が夜空に咲いた

大きな音のあと
静かになる空
「……綺麗。」
「うん。」
「今年の夏、忘れなさそう。」
「忘れないよ。」
「じゃあ来年も来よう!」

五人で見上げた
あの夏の空

夏祭り☆YUKATA PHONK!!
踊れ 騒げ 夜が明けるまで

ドンドン太鼓に
808 Bass!

浴衣ひらり
未来もひらり

夏祭り☆YUKATA PHONK!!
笑って 跳ねて 空を突き抜けろ

君と 私と みんなで
最高の夏にしよう!

もっと!

もっと!

もっと騒げーー!!

夏祭りーー!!

遠くで祭囃子
鈴の音が響く
……あっ!
今度は何!?

「焼きとうもろこし、もう一本食べたい!」

「まだ食べるのーーー!?」

ドン……ドン……



『夏フェスへの切符』

放課後のチャイムが
いつもより近く聞こえた

「……行こう。」

掲示板に貼られた
一枚の募集要項

見慣れた文字なのに
胸が騒ぎ出した

知らないステージ
知らない景色

だけど五人なら
見てみたいんだ

昨日より少し
遠くまで行こう

何度弾いても
合わない音

何度歌っても
届かない声

悔しくて
笑ってしまって

それでもまた
楽器を手に取った

夏フェスへの切符を
この手で掴みに行こう

まだ見えない未来でも
五つの音なら照らせる

転んでも 迷っても
立ち止まらないで

昨日より大きな音で
夢の向こうへ走れ!

Oh Oh Oh!

We can go!

撮って 消して
また撮り直して

笑って 失敗して
また最初から

「今のちょっとズレた!」

「もう一回!」

「次は絶対大丈夫!」

いつの間にか
不安よりも

楽しい気持ちが
大きくなっていた

もしも届かなかったら
どうするんだろう

答えなんて
まだ分からない

だけど今ここで
鳴らしている音は

誰にも消せない
私たちの証

夏フェスへの切符を
五人の音で掴みに行こう

悔しさも涙さえも
全部メロディに変えて

怖くても 震えても
前を向いて行こう

今日の私たちより
明日の私たちへ!

Oh Oh Oh!

We can go!

夢を追いかけることが
正しいかなんて

今はまだ
分からないけど

音楽が好きだから
ここにいる

君と笑えるから
ここにいる

だから――

もう一度
音を鳴らそう

One! Two! Three! Four!

夏フェスへの切符を
この手で掴みに行こう!

まだ見えない未来でも
五つの音なら越えてゆける

転んでも 迷っても
仲間がいるから

昨日より大きな音で
夢の向こうへ走れ!

夏フェスへの切符を
五人で掴みに行こう!

Hikariの声も
Yuiの声も

全部重ねて
ひとつのメロディへ!

もっと遠くへ!

もっと高く!

この音で――

未来へ!!

放課後の空に
ギターの音が響く

五人の足音が
同じ方向へ進んでいく

まだ知らない
大きなステージへ

「行こう!」

Yeah――!



『永遠のライバル』

帰り道の空
少しだけ早い夕暮れ

今日もまた
音が遠くなっていく

夏の夜に見上げた
花火の光

笑い声に包まれた
あの日の帰り道

何度も迷って
何度も笑って

五つの音が
ひとつになった

知らなかった景色を
君たちが見せてくれた

最初はただ
負けたくなかった

追いつきたくて
夢中で走った

だけど気づいたんだ

君がいるから
もっと遠くへ行ける

永遠のライバル
同じ空を見上げて

違うメロディ奏でながら
同じ未来を追いかける

勝ち負けだけじゃない
この胸に残ったもの

競い合ったその日々が
私たちを強くする

小さな声で歌ってた
あの日の君が

今は笑顔で
隣にいる

初めて鳴らした音
初めて重ねた声

ひとりじゃ描けなかった
五人だけの未来

時にはぶつかって
言葉をなくして

それでもまた
音を鳴らした

悔し涙も
嬉しい涙も

全部この歌に
変えていこう

離れていても
きっと聞こえる

君の音が
私を呼んでいる

永遠のライバル
同じ夢を追いかけて

違う道を歩きながら
同じ空へ手を伸ばす

昨日より遠くへ
今日より高い場所へ

競い合える君がいる
だからもっと強くなる

ライブが終わった
静かなステージ

誰も「勝った」なんて
言わなかった

ただ笑って

「またやろう。」

その一言だけで
全部わかった

「次は、もっと上手くなる。」

「……こっちも負けないから。」

「それでいい。」

「じゃあ次も、お弁当一緒に食べよう!」

「そこは変わらないのね。」

「……楽しそうです。」

永遠のライバル
同じ空を見上げて

違うメロディ奏でながら
同じ未来を追いかける

出会えた奇跡を
この胸に抱きしめて

競い合ったその日々を
これからも歌っていこう

永遠のライバル
いつかもっと遠くへ

君の音が聞こえる場所
私もきっと走っていく

さよならじゃない
終わりでもない

また次のステージで
笑顔で会おう

夕暮れの空に
五つの影が伸びていく

それぞれの道へ
歩き出しても

同じ空の下
音はつながっている

また
次のステージで――

「また、会おう。」



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