【前編】誰もが探している「息ができる場所」

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「いま移動中」―順風満帆な友人が何度も電話をくれた日々

人生には、思い返すと胸の奥がキュッと痛むような出会いがあります。

彼と出会ったのは、共通の趣味のオフ会でした。
ここでは仮に、彼を「よっしー」と呼ぶことにします。

オフ会の仲間とは、年齢も立場も超えてフラットに付き合える関係で、
大勢で集まってはよく飲みに行っていました。
その中で、よっしーはみんなから可愛がられてる弟的な存在でした。
よっしーは会社経営をしていて、かっこよくて、夫婦仲も良く、傍から見れば何ひとつ困っていることなんてなさそうな、恵まれた人生を送っているようでした。

けれど、私はどこかで感じていたんです。
―彼はいつも、何かに追われるように急ぎ足で生きている気がするな、と。

私が休日だったり、就活中で家にいた時期に、なぜだか分からないけれど
よっしーからよく電話がかかってきました。
「いま移動中なんです」
そう言って、本当に他愛もない話をするんです。
「これから営業なんですけど30分後にまたかけます。」と、1日に何度も電話が鳴ることもありました。

あまりにも頻繁に電話がくるので、「もしかして私に気があるのかも…」なんてソワソワしたこともあったのですが、完全に私の思い過ごしでした(笑)。
彼にとって私は、仕事や家庭の利害関係がなくて、素の自分でいられる近所のお姉さん的な存在だったのかもしれません。

普段は電話、時々オフ会で顔を合わせるという不思議な関係は
3年ほど続いたのですが、
そんな日常にも少しずつ変化が訪れます。

私がマッチングアプリを始めて、現在の夫と出会い、再婚に向けて生活の基盤を整えていくにつれて、あんなに頻繁だったよっしーからの電話は少しずつ減っていきました。
そして、私が入籍報告をしてからは、当たり前かもですが、よっしーからの連絡はすっかり途絶えてしまったんです。

お互いに生活があるし、それぞれの道を歩んでいるんだから、元気だったらそれでいい―そう思って月日は流れていきました。
(続く)
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