土曜日の昼下がり。
馴染みの喫茶店にはコーヒーの香りとゆったりした音楽が流れていた。
窓際の丸テーブルではふみたち4人がランチのあともそのまま話し込んでいる。
テーブルにはケーキとカフェラテ。
話題は気づけば“最近買ってよかったもの”になっていた。
「なんかさ、保育の人って便利グッズめっちゃ知ってない?」
ふみがゆきをみて言った。
明るくて話しやすいふみは“これ便利だった!”の話になるとすぐテンションが上がるタイプだった。
向かいのなつも微笑む。
第一子妊娠中のなつは最近“赤ちゃん用品”だけじゃなく、“生活ラクになるもの”を見るとすぐ保存してしまう。
「それ思います。なんか知らない道具いっぱいある」
すると、あさひがスマホを取り出した。
保育プランナーのあさひは“ラクになる工夫”を探すのが好きだった。
家でも便利グッズを調べ始めると止まらない。
「例えばこれ」
画面に映ったのは“移動式ティッシュケース”。
ショルダー付きでバッグやワゴンにつけられるタイプだった。
「保育園にはよく置いてありますね。これ地味に便利なんだよね」
なつがすぐ反応する。
「え、これベビーカーにつけられそう!」
「つけられますよ。外遊びの時も重宝してます」
あさひもうなずく。
「壁にかけられるから“ティッシュどこ!?”減るだけでかなりラク」
ふみが壁にかかっているティッシュを想像して、
「書類の下とかに埋もれる事も減りそう。私探し物、“探す”多いもん」
その流れであさひは次の画像を見せる。
「あとこれ、“ハコボード”」
「なにそれ?」
ふみが画面をじっと見つめる。
画面には取手付きの浅めのトレイが映し出されていた。
「これも探し物に便利ですよ」
「仕切りとかもあるから、ペンとかハサミとか付箋とか入れて、持ち運べるから」
ふみが感心する。
「え、普通に欲しい」
その横でゆきがバッグをごそごそし始めた。
やわらかい雰囲気のゆきは“持ち物がきれいに整理されてる人”という感じだった。
「そうだ、私これ持ってます」
テーブルに置かれたのは“こまごまファイル”。
透明ポケットが細かく分かれている。
「シール、付箋、絆創膏、予備カード……細かいの全部これに入れてます」
なつが目を丸くする。
「めっちゃ整理されてる!
絶対“あれどこ?”減るやつ」
ゆきもうなずく。
「探す時間って、地味に疲れるので」
その言葉にあさひがすぐ反応する。
「わかる。“探す疲れ”ってあるんだよね」
そう言いながら、自分のバッグから別のファイルを取り出した。
「私はこれ」
“多機能ファイル”。
ポケット、バインダー、ペン差しまで付いている。
「母子手帳、おたより、病院の紙、仕事のメモ、全部これ」
ふみはあさひが出した方に関心を寄せた。
「そっちもいろいろ入れられるね」
ゆきがファイルをじっと見る。
「え、それいいなぁ……」
「ほしくなるでしょ?」
あさひが少し嬉しそうに笑う。
「こういうの、“全部まとまる”だけで気持ちラクになる」
その流れで、あさひがまたスマホを見せる。
「あと、“ウカンムリクリップ”」
本を開いたまま固定するクリップ。
ふみが反応する。
「え、それレシピ本で使いたい!」
「保育の本とかも固定できるんじゃない?」
なつがゆきに向けて言うとスマホで早速検索していた。
「これ楽譜を開いて置けるからピアノ弾く時、最高」
窓から差し込む昼の光がテーブルの上のファイルを照らしていた。
店員さんが近くを通過する際、小さく笑う。
「今日もまた盛り上がってますね」
4人は顔を見合わせて吹き出した。
でも、本当に楽しかったのは――
“ちょっとラクになる工夫”を共有している時間そのものだった。