最近、SNS上で非常によく見かける「これさえ覚えればデザイナーとして即戦力」的なハック技やあしらい集、心理学用語、基本的マーケティング用語集など、お金をかけなくてもある程度デザイナーとしてやれそうな小技集。
制作業務30年超えの私の意見としては、「単価の安い案件はそれで充分では?」ですが、逆にそれらの手法の「なぜ?」をきちんと理解できてないと頭打ちになる気がします。というか、素材を組み合わせるのもスキルが必要なので実はすぐはできません。イラレなどの操作に振り回されている経験の浅いデザイナーに対し、何度頭を抱えたことか・・・。自分の感覚では対価をいただけるという域には3年は必要です。
また、私は「デザインはローカルに依存する」という格言を持っています。結局、デザインはクライアントの思考とユーザーへの伝達手段の永遠の掛け算なので、ハックを覚えたところでアウトプットが顧客の望むものと一致しない限りは、全く使い物にはなりません。配色の印象は日本と海外では全く違いますし、クライアントの今に至る歴史や文化も違います。形の意味、直線と曲線の違い、線の太さで与える印象の違い、選んだイラストや写真のディテールの詰め方など、グラフィックの洗練度は目の肥えた人なら瞬時に判別します。審美眼とセンスを裏付ける知識など作業者が「すべての物事には意味がある」という部分に理解がないといつまで経ってもアウトプットの質向上にはなりません。
ただ、「急ぎ案件」という発注側の事情によるものためにクオリティを棚上げするために「ストックしておく」のは日銭を稼ぐための割り切りとしては有効です。
グラフィックデザインの世界は階層化の実態があります。広報用は「巨匠クラス」が、ディテールを詰めに詰めたもの、広告用は好感度や流行感、販促用は訴求範囲が主にインストアなので消費者の購買を後押しする表現。世の中に出回っているハック技は概ね「販売促進用」です。この階層の仕事が「駆け出しデザイナー」の登竜門でスピード優先のことが多いので。逆に、広報や広告でこのテの技術を悪用したら次回の仕事はないと思います。
そういうハックを覚える前にクライアントからのお題に対し、消費者心理を身体に入れるために訴求サービスをまずは自分でも使ってみて「どうすれば伝わるか」という言語化・可視化の思考の往復と心理学視点での技術選択、何よりも審美眼を鍛える方がいいと思います。最後は目利き力、それには「いいもの」にたくさん触れる、見る、真似する勢いでとにかくつくる。線1本のディテールの詰め方で本当に印象が変わります。一見簡単そうでもいざ制作すると難しいグラフィックはたくさんありますし、「デザインの種目が違う」と考えに至ります。
本当「ドン・キホーテ」のPOPはいきなりは作れないですよ・・・。