自分を楽しませる工夫

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コラム
「好き避け」という言葉を初めて聞いたのはいつだったでしょうか。
文字通り、相手のことが好きだからこそ、なんとなく避けてしまう行動です。

好きだからこそ仲良くなりたいのに、話しかけられても無視したり、素っ気なくしたり、本心とは裏腹に冷たい態度を取ってしまう。

そこまでではないにせよ、私も軽度の「好き避け」気質があるな、と思っています。
好きだからこそ、遠巻きに見ていたい、というのでしょうか。
ちなみに性別問わず発動します。

最初にこの言葉を聞いた時に真っ先に思い出したのが、高校時代の国語の先生のことでした。

授業の度に毎回素敵なファッションで登場する当時20代半ばの先生は、制服姿の高校生の私には眩しく思えました。
3歩先ゆくオネーサン的立ち位置の先生は、当然他の生徒にも大人気で、屈託のないクラスメイト達が授業後に気軽に話しかけているのを、羨ましさ半分で遠巻きに見ているのが私には精一杯。

その先生の授業が一番好きな科目となるのに、そう時間はかかりませんでした。ファッションもさることながら、私の心を捉えたのはその先生の授業スタイルだったのです。

例えば芥川龍之介の「羅生門」について。
簡単にあらすじは以下です。

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平安京にある羅生門で雨宿りをしている下人。
災害や飢饉で荒れ果てた都のその門には、死人が放置されている。
行くあてのない下人はこれから生きていくためには盗人になるしかないと思い詰めていいる。
ふと見ると、老婆が一人の女の死体から髪を引き抜いている。
その行為に下人は憎悪を覚えるが、聞けば生きてくためにこれをカツラにするとのこと。
老婆いわく、生前この女は蛇を魚と偽り売り歩いていた。それも生きるためだ。ならば自分のこの行為も女は許してくれるだろう、と話す。
それを聞いた男は「俺もこうしないと餓死する」と老婆から着物を剥ぎ取り奪う。
すがる老婆を蹴り倒し、男は門の下へ駆け下りていく。
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「下人の行方は、誰も知らない」という一文で話は完結するのですが、なんとこの物語の続きを原稿用紙2枚分書いてくること、が宿題だったのです。

え、天下の芥川龍之介の文章に続きを追加するですと...!?

突拍子もないお題目にクラス中がどよめきました。
でもなんとも面白い宿題ですよね。
一人ひとりが想像力をフル稼働させて書く「羅生門の続編」。
その宿題を各クラス分、集めて読むのはとっても楽しそうです。
当然、正解なんてありません。
何作品か先生が読み上げた次の授業は大いに盛り上がりました。

基本的に学校の先生というのは、何クラスか受け持ち、教科書に沿って同じ内容を繰り返し教えるものだと思うのです。
ただこの先生は、毎回の授業をご自身も心の底から楽しめるように工夫しているように思えました。
他にもユニークな授業や宿題がたくさんあった気がします。

なんだか最近楽しくないな、と思う時には、今でも時々、突飛な宿題とともに人生で最初に出会った「自分を楽しませる工夫をしている人」である先生のことを思い出します。
オシャレもご自身が気分よく過ごすための方法の一つだったんだろうな、と思います。
そしてSNS全盛期の今、先生ならどんな風に活用して楽しんでいるのかな、と思ったり。

好き避け満開の思春期が遠い昔となった今は、ゆっくり一緒にお茶でもしたい気分です。
「実は先生の授業が一番好きでした」と打ち明けながら。


そんな昔話も大歓迎です。
一緒に楽しく生きるコツを共有しませんか?
もしご興味があればお気軽にお試しください。























6時間全部古典でいいのに、と思っていたほどです。











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