会社はなくなった。でも、またこんな仕事がしたい

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コラム

新宿には今でもよく行きます。

歌舞伎町へ行くと、自分が手掛けた看板があります。

「I LOVE 歌舞伎町」の巨大看板です。

今でもそれを見ると、ときどき思います。

「よく自分が、こんな仕事をやったな」

会社を畳んで、今は会社員になった僕が、昔の自分の仕事を見上げています。

なんだか不思議な感じです。

当時は、社長だった

「I LOVE 歌舞伎町」は、僕にとって代表的な仕事の一つです。

大きな看板です。

歌舞伎町という場所で、たくさんの人の目に触れる。

賞もいただきました。

会社を経営していた頃は、こういう仕事をどうやって実現するかを考えていました。

面白い看板をつくりたい。

人が思わず見てしまうものをつくりたい。

そんなことを考えて、実際に形にしていた。

今になって看板を見ると、

「俺、これをやったんだよな」

というより、

「よく自分が、こんな仕事をやったな」

という感覚のほうが近いです。

少し他人事みたいですよね。

でも、本当にそんな感じなんです。

会社はなくなった

その看板をつくった会社は、もうありません。

約50年続いた会社を畳み、僕は社長ではなくなりました。

今は会社員です。

以前の記事にも書きましたが、最後の仕事は目黒にある会社の社名看板でした。

あの頃は、会社を無事に畳めるのか、個人破産を避けられるのか、家はどうなるのか。

そんなことばかり考えていました。

最後の仕事に感慨を持つ余裕さえありませんでした。

それから時間が経って、今は新宿で昔の自分の仕事を見ることがあります。

看板は、まだそこにある。

その前を、会社員になった僕が歩いている。

人生って、変わるものですね。

でも、最近はもう一つ思う

「I LOVE 歌舞伎町」を見ると、昔のことを思い出します。

でも、懐かしいだけではありません。

最近は、もう一つ思うことがあります。

「また、こういう仕事を手掛けたいな」

会社を畳んだ直後には、そんなことを考える余裕はありませんでした。

まず会社を終わらせること。

次に働くこと。

生活すること。

それだけで精いっぱいでした。

でも今は、少し違います。

昔と同じ会社をもう一度つくりたい、ということではありません。

社員を何人も抱えて、建物を何棟も持って、また大きな会社を経営したいということでもない。

ただ、

面白い看板を考えて、世の中に残るような仕事を、もう一度やってみたい。

そんな気持ちはあります。

「もう一度」は、昔と同じじゃなくていい

会社を畳んだとき、いろいろなものを失いました。

社長という立場もなくなりました。

それまでと同じやり方では、もう仕事はできません。

でも、新宿へ行けば、自分が昔手掛けた看板がある。

それを見ると、

「よく自分が、こんな仕事をやったな」

と思う。

そして今は、

「また、こんな仕事がしたいな」

とも思う。

会社を畳んだあと、すぐにそんな気持ちになれたわけではありません。

今でも僕は再建の途中です。

給料日を待っていますし、週末には深夜のコンビニでも働いています。

だから「見事に復活しました」なんて話ではありません。

まだ全然、途中です。

それでも、もう一度やってみたいと思えるものが、自分の中に残っていた。

今の僕にとっては、それで十分です。

次に新宿であの看板を見上げるときも、たぶん思うでしょう。

「よく自分が、こんな仕事をやったな」

そして、

「また、やりたいな」

と。
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