【サンプル】冬の邂逅【ファンタジー】

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小説
760文字ぐらい

 冬は日が暮れるのが早く、日が明けるのが遅い。朝方などは、窓から差し込むあかりがなく時間を確認して驚くことも増えた。これから少しづつ日の時間が長くなっていくことだろう。
  耳の奥がきん、と痛む。吐き出す息は白い。さく、さく、と踏みしめると足跡が刻まれる。夜の森は季節関係なく人の気配はない。しかし、冬が加わると音が消える。虫の声も、動物の息遣いも遠くなるのだ。その感覚が好きであった。
  聞こえるのは自分の息遣いのみ。孤独という言葉がまさに合うのだろう。
  だが、世間には周りに人の声がしようが、孤独を感じる者もいる。 
 後者の孤独は苦しいものだろう。同じ生態の生物の輪から外されているような、自己がなんであるかすら不明瞭になっていく。泥の中にずぶずぶと沈んでいくかのようなそんな感覚。
 「―――?」
  空気が揺らいだ。風は吹いていない。いつもの道を外れて歩みを進める。好奇心は猫を殺すとは言うが、一度気になると止まらないものだ。 葉を落とした木を抜け、足を止めた。
  そこには黒い何かが落ちていた。
 よく目を凝らすと、それは黒い鎧だった。脚だけでも、自分の背丈ほどありそうだった。雪以外の感触がして足元を見ればマントを踏んでいた。
  そして、ぞわりと悪寒が走る。寒さではない。黒い鎧に雪が積もっていないのだ。ここはずっと雪が降っているにも関わらず。
 『騒ぐな』
  金属が擦れるような音がする。それが声だと理解するには時間を要した。黒い鎧がゆっくりと動き出す。立ち上がってしまえば、首が痛くなるほど見上げなければ顔が見れない。
 『随分と肝が座った餓鬼だ』
  愉快そうに騎士が言う。人間の言葉を話しているのだろうか。無理矢理、言葉を流し込まれているようだ。よくよく観察すれば、鎧に雪が触れた瞬間に吸い込まれていた。
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