「先生、母の年金だけで入れる施設って、あるんでしょうか」
現場でケアマネとして23年、多くのご家族をサポートしてきましたが、これは本当に月に何度も聞かれる質問です。
聞いてくる方は、たいてい申し訳なさそうな顔をしています。お金の話だから、聞きにくい。親のお金の話だから、なおさら聞きにくい。
でも、施設選びで一番大事なのは、実はお金の話なんです。
■ ある娘さんの話(※プライバシー保護のため、複数の事例を再構成しています)
70代のお母様を、50代の娘さんが在宅で介護していました。限界が来て、有料老人ホームを探し始め、月17万円の施設に決めかけていました。
「母の年金が月12万なので、足りない分の5万は私が出します」
計算としては、成り立っているように見えます。でも、見学に同行した私は、施設の方にひとつだけ質問しました。「この17万円のほかに、毎月かかるものを全部教えてください」
おむつ代、医療費、理美容代、日用品費……。合計すると、月にプラス3〜4万円。娘さんの実際の負担は、5万円ではなく9万円。年間にすると100万円を超えます。それが何年続くか、誰にも分かりません。
「聞いてよかった……決めてから知ったら、引き返せなかった」
この「あとから足し算」が、施設選びで一番多い失敗です。高い施設を選んだことが失敗なのではありません。総額を知らずに決めてしまうことが、失敗なんです。
■ 「年金だけで入れる施設」は、あるのか
正直に答えます。「あります。ただし、選び方を間違えなければ」です。
・特別養護老人ホーム(特養)…収入に応じて負担が変わる仕組みがあり、年金だけで入所している方も実際にたくさんいます。ただし原則「要介護3以上」で、地域によっては待機もあります。
・有料老人ホーム…本当にピンキリ。同じ「月額15万円」でも、介護保険の自己負担が中に入っている施設と入っていない施設があり、パンフレットの数字だけで比べるとほぼ確実に読み間違えます。
・サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)…「家賃」+「サービス費」+「介護保険の自己負担」と、3つに分けて考える必要があります。
「特養なら安い」とよく言われますが、半分だけ正解、ということです。
■ 今日からできる3つの準備
① 親の収入を「正確に」把握する。年金額は年金振込通知書か通帳で確認できます。「だいたい12〜13万くらい」のまま探し始めると、あとで選択肢が崩れます。
② 「負担限度額認定」という言葉だけ、覚えて帰ってください。収入や資産の条件を満たすと、特養などの食費・部屋代の負担が軽くなる制度です。この制度を知らずに「うちは無理だ」と諦めていたご家族を、私は何人も見てきました。
③ 見学では、この一言を。「この金額のほかに、毎月かかるものを、全部教えてください」。ちゃんとした施設ほど、この質問に正確に答えてくれます。
■ おわりに
お金の話を最初にできた家族ほど、施設選びはうまくいきます。それは23年間、現場で見てきた、はっきりした傾向です。お金の話は、冷たい話ではありません。親の暮らしを最後まで守るための、いちばん現実的な愛情の形だと、私は思っています。
「うちの場合はどうなんだろう」と思った方へ。私はこのココナラで、施設選び・介護保険・親の介護のお金の相談を、テキストでお受けしています。担当のケアマネさんには少し聞きにくい「お金のリアルな話」こそ、第三者の出番だと思っています。ご相談は、私のプロフィール(出品一覧)にある「親の介護・施設選び、現役ケアマネが答えます」の相談サービスからどうぞ。