今日は、なんだかいつもと違う。
いつもならにこっと笑ってくれるお友だちが、
そわそわして、こそこそして、
ナモちゃんのほうを見てもすぐに目をそらす。
声をかけても返事はあいまいで、
時間だけがすべるように過ぎていった。
気づけば、ナモちゃんはぽつんとひとり。
胸の中が、きゅうっと冷たくなる。
そのとき――
「…あの~、ナモちゃん」
うしろから、おずおずと声がした。
ふり向くと、お友だちが
もぞもぞしながら、両手で大事そうに包みを抱えている。
その包みには、
色とりどりのリボンが
これでもかってくらいたくさん結ばれていて、
まるで宝物みたいにきらきらしていた。
「これね…みんなで作った、ナモちゃんへのプレゼントなの」
ナモちゃんは目をまんまるにして、
「これ…ナモのために?みんなが…?」
そう返すのがやっとだった。
そっと包みを開くと――
中から出てきたのは、
頭の先からつま先まで包みこむ、
とっても不思議な真っ赤な“全身のかぶりもの”。
ナモちゃんは思わず息をのんだ。
見たこともないのに、
なぜか“ナモちゃんのためのもの”だってすぐにわかる。
そのとき、うしろから
わ~っとみんなが集まってきて、
「ハッピーバーステー! ナモちゃん!」
ナモちゃんは照れながら、
でもこらえきれないみたいに
ぱあっと満面の笑顔になった。
「みんな…ありがとう!」
そして、真っ赤なかぶりものをそっと身に着けた瞬間――
胸の奥がぽかぽかして、
体がふわっと軽くなった。
みるみるうちに、
ナモちゃんの体が少し浮き上がる。
「わあっ…!」
みんなが目をまんまるにする。
ナモちゃんはそのまま、
みんなの頭の上をくるくる、くるくる。
そして勢いのまま、空へびゅーーーん!
「気に入ってくれてよかったね!」
みんなは手を取り合ってうなずきあう。
そのぽかぽかした気持ちが伝わったのか、
今度はみんなの体もふわり、ふわり。
ひとり、またひとりと空へ浮かび上がり、
ナモちゃんのまわりに集まって
ぷかぷか、ぷかぷか。
空の上で輪になって笑いあう声が、
青い空いっぱいに広がっていった。
~あとがき~
中学生のころ、私はよく一人で物語を作っていました。
その中でも「ナモちゃんのかぶりもの」は、なぜかずっと心に残っていた作品です。
原稿はもう手元にないのに、
“みんながこっそり準備してくれたプレゼント”と
“ナモちゃんが空へ飛んでいくシーン”だけは、
ずっと鮮やかに覚えていました。
大人になった今、あの頃の気持ちを思い出しながら、
できるだけ世界観を壊さないように、
そっと息を吹きかえすような気持ちで書き直しました。
中学生の私が感じていた不安や喜び、
そして「誰かに大切にされること」のあたたかさ。
それらが少しでも、この物語の中に残っていたら嬉しいです。
読んでくれたあなたの心にも、
ふわっと軽くなる瞬間が訪れますように。