宮崎で小説を書いていると、都会の話が書けないと思われがち

宮崎で小説を書いていると、都会の話が書けないと思われがち

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小説
 宮崎県に住んでいます。仕事はオンラインなので、住んでいる場所を気にしたことはあまりないのですが、たまに言われます。

「都会の話とか、書けます?」

 書けます。書けますが、正直に事情も書いておきます。

■1. 電車の描写、そんな変わらない

 宮崎の電車は、基本的に空いていると見せかけて特定の時間だけありえないくらいぎゅうぎゅうです。下手すると乗れません(1敗)。
 だいたい朝と夕方はやばいです。

 ちなみに宮崎の日豊本線は、一時間に一本ということが普通にあります。乗り遅れると、次の展開まで一時間かかる。物語の緊張感としては優秀です。

■2. 冬の描写に、毎回自信がない

 宮崎の冬は、寒くありません(平野部の話です)。

 雪は、数年に一度ちらつく程度です。積もると県内のニュースになります。子どもが外に出てきて、テレビの取材が来ます。

 だから「吐く息が白い」「マフラーに顎をうずめる」といった描写を書くとき、心のどこかで「本当にそういうものだろうか」と疑っています。東北や北陸を舞台にしたご依頼のときは、資料を三倍読みます。

 逆に、夏の描写には絶対の自信があります。アスファルトの匂い、蝉の音量、日陰のありがたさ。このあたりは実地で毎年鍛えられています。

■3. 「都会」の解像度が、たぶん少しずれている

 私にとって都会は、宮崎市です。

 宮崎市に行くことを、県内では「市内に出る」と言います。デパートがあり、アーケードがあり、人がいます。

 なので油断すると、都会の描写に「そこそこ静か」というニュアンスが混じります。ここは意識して直しています。

■4. 打ち合わせで「訛ってますね」と言われる

 言われます。事実です。

 宮崎弁は、語尾が独特です。「〜っちゃが」「〜せんとよ」あたりが代表格ですが、文章に書き起こすと九州のどこか判別しづらいらしく、たまに熊本の人だと思われます。

 なお、原稿は標準語で書けます。方言で書いてほしいというご依頼にも対応しますが、宮崎弁以外の方言は、監修をお願いすることがあります。九州のなかでも、県が違えば全然違うので。
 ちなみに、かの某元県知事の名ゼリフ「どんげかせんといかん」は宮崎のひとは使いません。あれは鹿児島寄りの方言です。正しくは「どげんかせんといかん」です。覚えておきましょう。テストに出ます。

■5. 台風の描写だけは、他県の書き手に負けない

 宮崎は台風の通り道です。

「風で家が鳴る」というのが、比喩ではなく実際の現象であることを知っています。雨戸を打つ音の種類、停電したときの冷蔵庫の静けさ、翌朝の異様な晴れ方。

 台風の場面が必要なご依頼のときは、少し張り切ります。

■6. 取材に行こうとすると、まず飛行機の話になる

 東京まで、飛行機で1時間半。悪くありません。

 問題は、空港に行くまでではなく、着いてからです。「じゃあ現地を見てきます」の一言が、他県在住の書き手より少し重い。

 なので基本は資料と地図と映像で組み立てます。ストリートビューで実際に道を歩き、その街の個人ブログを読み、市の広報誌のバックナンバーを漁る。これでたいていのものは書けます。

 前に東京の下町を舞台にした短編を書いたとき、ご依頼者から「あの商店街、行ったことあるんですか」と言われました。ありません。とにかく調べてイマジナリー下町を召喚させています。

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■結論:場所は、あまり関係ない

 書けるものは書けますし、書けないものは、どこに住んでいても書けません。

 必要なのは、調べる根気と、知らないことを知らないと認める姿勢だと思っています。知ったかぶりで書いた描写は、必ずどこかで嘘くさくなる。

 そのうえで、宮崎に住んでいることは、たぶん少し得をしています。夏がやたら長い場所で、時間の進みが遅い場所で、東京の話を書く。その距離が、文章に妙な落ち着きを与えてくれることがあります。


 あと、鳥のタタキはおいしいです。ご依頼の有無にかかわらず、これは書いておきたい。
 それでは、西月あまねをどうぞよろしくお願いします。


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