先日の続きです。
先生が真剣な表情で私に言いました。
「二人の供養をしてあげなさい。」
力強く、迷いのない口調でした。
しかし、父を含め私たちは檀家ではありません。
まして父の兄姉である二人の供養となれば、
それ相応の理由が必要になります。
さらに、父には内緒で母と私だけで供養を行うわけですから、
ご住職のご理解をいただかなければなりません。
母にご住職のことを聞くと、「少し厳しい方だよ」とのことでした。
状況の難しさもあり、再び先生に相談すると、
「大丈夫だよ。何とかなるから、早くしなさい。」
とだけ言われました。
その言葉を信じ、母と二人で事前相談のため、お寺へ向かいました。
そこは、とある宗派の総本山ですので巨大な建物が沢山ありました。
待合室で待っていると、ご住職が忙しそうに来られました。
それでも、とても丁寧に挨拶をしてくださり、
いくつか質問を受けました。
・なぜ、その二人を供養したいのか。
・檀家になっていただけるのか。
・本家には知らせてあるのか。
どれも、こちらが懸念していた内容ばかりでした。
そこで私は、事前に考えていた思いを正直にお伝えしました。
「今までもお墓参りはしていましたが、身近な人が亡くなった経験がなく、
正直、どこか形式的だったように思います。
しかし、墓碑を見て、父の兄姉が幼くして亡くなっていたことを知りました。
父に確認しても知らなかったと言われ、かわいそうだという思いでした。
せめて、ご先祖様とともに、お二人を心から供養してあげたいと
思ったのです。
ただ、本家に伝えると勝手なことをするなと咎められる可能性もあるため
できれば知られたくありません。
また、今回は父にも内緒で供養を行うため、
檀家のお話については今すぐお返事をすることができません。
それでも、真心を込めて供養をさせていただきたいのです。」
すると、ご住職は私たちの話を静かに聞いてくださり、
驚くほどすんなり了承してくださいました。
先生の言葉どおりでした。
その後は供養に必要な費用や当日の流れを教えていただき
その場で日程も決まりました。
そして当日。
お布施は、少しだけ私たちの気持ちを添えてお渡ししました。
(どうか、この件は内密にお願いします。)
そんな思いも込めていました。
※後日談になりますが、ご住職はその後も誰にもこのことを話すことなく
静かに見守ってくださっていました。
供養は無事に終わり、とても清々しい気持ちになりました。
そして心のどこかで、
(この病気も良くなってくれたらいいな。)
そんなことを願っていたのを覚えています。
翌朝、お礼と報告をするため、いつものように先生のもとへ向かいました。
普段なら待合室には何組かの方がいるのですが、その日は誰もいません。
まるで私たちを待っていてくださったかのようでした。
先生と一緒に御神前へ報告すると、先生はしばらく無言のまま、
「うん、うん。」
とうなずいていました。
しばらくして私の方を向き、
「私ちゃん、良かったね。
完全に病気の根源がなくなったから、
明日から日に日に調子が良くなるよ。
本当に良かったね。」
そう言って、先生は涙を浮かべていました。
正直、その時の私は、まだ半信半疑でした。
本当にそんなことがあるのだろうか、と。
しかし、その次の瞬間――
私は、今でも忘れることのできない光景を目にすることになります。
その光景とは……
次に続きます。